負け犬的映画偏愛録

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負け犬もこれには憤慨「ヘレディタリー/継承」

何が怖いって、作ってる本人が何作ってるか分かってないことが一番怖い!

(評価 30点)

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映画遍歴を続けていると、作っている監督本人が、自分が何を作っているかすら分かっていないような作品に出くわすことがある。その傾向は、やっぱりホラーのジャンルに特に多い。この「ヘレディタリー/継承」はまさにそんな作品。

 山間に暮らす、グラハム一家。ミニチュアハウスのジオラマ作家のアニー・グラハムの母エレンの死から本作は幕を開ける。

 ミニチュアから実景にシームレスに転換するシンボリックなオープニングが良くて、最初は見入った。アニーの母エレンは秘密主義者で、親子の仲も良かったとはいえず、アニーには、一種、そのことがトラウマのような引け目にもなっている。

序盤は、血縁の肉親を失う喪失感から派生する不安、それから生み出される静かな恐怖めいたものがなかなか良く表現出来ていて、これは、と思ったものだった。

 特に、娘のチャーリー。この女の子の存在感、生理的な不気味さが抜群。自閉症的で、ハトの首をハサミで切断しポケットに忍ばせる、そしてパーティで出されたケーキをクチャクチャ食べるといった何でもない仕草に至るまで、チャーリーにまつわるジャブに近い病的なホラー描写も冴えている。期待を抱かせてくれるには十分なクォリティーでもあったと言っていい。

 このチャーリーが兄ピーターに連れられて行ったパーティが悲劇の発端となる。チャーリーがそこで食べたケーキでアナフィラキシーを発症する。ピーターは驚愕し、痙攣するチャーリーを車に乗せ、病院に向って車を飛ばす。そこで起こるトンデモない事が本作のキーなのだ。

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 確かにそこまでは引き込まれて見た。そして世間の評価にも違わない、ひょっとして傑作ホラーなのかも、とまでも思った。ところが本作は、そこから、まあしょーもない凡百ホラーに変容していく。

 昨今のホラーに定着した一つのパターンがある。それは思わせぶりなこけおどしだ。とにかく思わせぶりな描写を小出しに見せて、掴むだけ掴んでおいて、最後に投げ出す。

 この「ヘレディタリー/継承」はその見本のような代物。

 とにかく内容が空っぽなのだ。だからこけおどしの描写でゴマかすしかない。

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 寝ている人間にびっしりアリがたかっていたら皆、驚くよね、女が突然走り出して追いかけて来たら怖いよね、人間が突然、燃えだしたら怖いよね、女が天井に張り付いていたら怖いよね、そして、それが高じて収拾がつかなくなったら、最後は、とりあえずカルトってことにしておこうで、無理やり意味不明な理由付けをして終わる。

 アホの見本市みたいなものだ。

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 監督自身も何を作っているか分からない。そこで、とりあえずでお茶を濁す。アニー役の女優の地の顔が怖いから、それでみんなゴマかせるだろう(確かにこの顔コワいんだけどさ、本当に)。冒頭のミニチュア・ハウスにしたって、何かのシンボルだと誰もが、当然思う。しかし、結局、何もない。これ一つとっても何も考えていないのは歴然としている。

 この作品の監督・脚本は、これがデビュー作らしいアリ・アスターという人。

 この人はこれが受けたとあって、次にもまったく同じネタのカルトで「ミッドサマー」なる作品を作っている。ハトのフン害も迷惑だけど、憤慨もののホラー映画も実に迷惑。

 と、ここまで言いつつも、結局、このこけおどしが病みつきになってまた見ちゃうところが負け犬のヘタレなとこなのですよね~