次回が最終回のサスペンス
<仇敵を探して旅を続ける一人の武士。土橋征之進と名乗るその武士は、父親を殺した上に許嫁をさらって逃げた小平太という男の行方を追っていた。紋次郎は、その頬の傷から、征之進に小平太だと思い込まれ、仇討ちを挑まれる。誤解が解け、旅を続ける二人は、道中、女旅の一行と出合い、案内された山小屋で一夜をともにしようとした矢先、突然の雪崩によって、山小屋に閉じ込められることに。飢えと寒さの極限状況の中、やがて意外な事実が明かされる・・>
原作は1973年3月号の「小説現代」。つまり原作発表直後のリアルタイムに早々と映像化されたホヤホヤの作品。それだけに展開もホットな秀作となった。ただし、物語は吹雪吹きすさぶ極寒のパニック・サスペンスといった趣向の作品。
仇敵を探す征之進にはおぬいという名の許嫁がいる。ただし、それは征之進が旅の道中に父親による縁談で決められた、まだ顔も知らない花嫁なのだ。
その道中で、紋次郎を仇敵と間違えたことから、二人は知り合い、三人の女たちと共に、避難した山小屋で雪崩に遭い、そこに閉じ込められることになる。ここから急転、本作は密室サスペンスの趣になるところが見所。
酌女に人妻、それに尼さんと三人三様の訳ありの女たち。征之進は三人のうちの誰かが自分の許嫁のおぬいだと睨む。そして、征之進は本来の目的の仇討ちを果すことができるのか?
そこは、それ、元々、推理作家として名高い原作者の笹沢左保だけあって、クライマックスには、ちゃんとドンデン返しが用意されている。
そのサスペンスもさることながら、世間は既にもう一つのサスペンスに騒然とし始めていた。というのも、市川崑劇場「木枯し紋次郎」は全38話、つまり本作は次週に最終回を控えた、いよいよ大詰めの作品。一世を風靡した作品の最終回の行方に世間が浮足立つのも無理はない。
フジテレビもそれをわきまえ、最終回には、ひょっとして有り得る紋次郎の死を宣伝で、ほのめかし始めていた。
そんなサスペンスも当時はあったというバックストーリーを知りつつ見れば、更に、楽しめる作品には間違いない。