負け犬的映画偏愛録

崖っぷちの負け犬が、負け犬的な目線で偏愛する映画のことを好き放題のたまう映画録。そして、木枯し紋次郎を完全コミック化(笑)した「劇画!木枯し紋次郎」を日々、配信中!色々な動物が繰り広げる動物コミックもあわせてお楽しみください

負け犬もそのキャッチーなコピーセンスに脱帽!「バタリアン」

エイリアンとゾンビ大好きなダン・オバノンのオタクセンスが実に楽しい、コワ面白い痛快ホラー

(評価 74点)

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ゾンビホラーにスラップスティックな笑いのセンスとMTVならではのビート感で味付けし、そのキャッチーなタイトルで見事に化けたポップな80年代ホラーの代表作。

 懐かしのエイティーズのメタファーといえば、常にあちこちで賑やかに流れていたMTVではなかろうか。だから映画もまたそのMTV的なテイストを画面から発散しているものが多かった。

 原題が「リターン・オブ・ザ・リビングデッド」といかにも素っ気無い本作も、そのパロディ的なテイストがもたらすスピード感には、紛れもなくそんな80年代のMTV的感覚が満ち溢れている。

 そして本作、最たる功績が他でもない配給会社の東宝東和がネーミングしたそのタイトル。タイトルのキャッチー効果で本編そのもののクオリティーUPにすらつながった稀有な作品として未だに有名な作品でもある。

 お話の舞台設定は、いたってシンプルそのもの。たった一夜の出来事、舞台は、とある医療関連の事務所兼倉庫、そして隣接する葬儀社だ。ゾンビに絡むマクガフィンも分かりやすい。米軍が死んだ兵士を蘇生させるために開発した特殊なガス。そのガスが、極秘裏に部隊の医療関連会社の倉庫に保管されていたという設定から、プロットが快調に滑り出す。

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 出だしの、一夜のバイトにやって来たフレディに、年配社員が肝試しとばかりに、おどろおどろしく、あのジョージ・ロメロの「ナイトオブザリビングデッド」にまつわる顛末を語り出す、アヴァンタイトルのシークェンスがとてもいい。

 このゾクゾクさせてくれるようなイントロから本作は、パルプ感ありありの極彩色のホラーコミックのページをめくるような世界を展開させる。

 ゾンビたちも、タイトルに出てくるタールマンをはじめ、本作のイメージキャラクターともなったオバンバなど、いずれ劣らぬキャラ立ちしているのも楽しいところ。医療会社の社員が、うっかりタールマンが保存されているタンクの蓋を開けたことから、漏れ出したガスが屋外にまで流出し、折から振った雨で、葬儀社との間にある墓地の土中深くにまでそれがつたっていってという実に分かりやすい展開の後はもういわずもがな。

 でも、そのプロット展開が決してステレオタイプにならずに、ちゃんとツボを押さえた快感をもたらしてくれるところが、本作の脚本監督のダン・オバノンの才人たる所以。

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 タールマンの、ぬったりくったりしたキモコワイ動き、オバンバのグロテスクかつユーモラスな造形、パンク集団のナイスバディのゾンビオネーチャン。墓場の土中からムクムクとゾンビたちが蘇生する、マイケル・ジャクソンのスリラーを彷彿とさせるシーンなど見どころもいっぱいで、エンディングも「ナイトオブザリビングデッド」パロディなのが嬉しい。

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 苦痛にあえぐ検死台に拘束されたオバンバが、脳みそを食わせてくれと訴えるシーンでは、そもそもゾンビが人間の脳みそを食う理由が明かされる。ゾンビと人間とが初めて意思疎通した記念すべきシーンとでもいえようか。

 そして何よりも今も、誰もが口ずさむそのタイトル「バタリアン」。一応、英語の部隊を意味するバタリアンの単語が由来だが、当時の日本人でそんなこと知る人間などいるはずもなく、誰もが映画のイメージからメイクコピーした造語だと思っていたのは笑い話。公開当時、TVで放映されていたTVスポットでも、そのタイトルのインパクトは抜群だった。このタイトルに釣られ見に行ったという人はきっと多かったに違いない。現に、日本でも、誰も想定しなかったほどのスマッシュヒットを飛ばした。やっぱり映画に限らず、本でも、マーケティング戦略というものを立案する上で、そのタイトルのキャッチー効果はやっぱり侮れないということなのでしょう。 

 そういえば本作にあやかってというか、このタイトルにあやかった「オバタリアン」というマンガもあった。この負け犬もそのマンガは読んでいた。タイトルで映画がヒット作に化け、そのタイトルからヒットマンガまで出来ちゃった、ある意味、ジョークのようなマルチメディア映画として、エイティーズを懐かしむ意味でも見逃せない映画ではないでしょうかね~