負け犬的映画偏愛録

崖っぷちの負け犬が、負け犬的な目線で偏愛する映画のことを好き放題のたまう映画録。

負け犬の極悪非道!全員死刑一家の残虐無比な所業に70年代スピリッツの爆発を見た件「マーダーライドショー2」

控えめな生命力を持つロブ・ゾンビが放ったサプライズヒットの続編は、前作のセブンティーズ志向に更にベクトルを振り切って爆発させたような快作だった!

(評価 72点)

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極悪非道、残虐無比。この家族の所業の前には、ピカレスクなどという生易しい言葉は霞むしかない。しかし、全員死刑!その言葉のみがふさわしいその家族から発散されたのは70年代のどこかアグレッシブなパワーだった!

 キンキーで悪趣味きわまりない見世物小屋。そうとしか形容のしようがない前作「マーダーライドショー」。だが、700万ドルという低予算で作られた監督ロブ・ゾンビのデビュー作ともなった第一作が、誰もが驚く大ヒットを飛ばし、作るべくして作られた本作。

 低俗きわまりない監督ロブ・ゾンビのこと、てっきり徘徊しつつ、リメイク同然のものを作るのかと思いきや、俗悪テイストはそっくりそのままに、作品のベクトルをすっかり変えてきた。そのベクトルこそ、70年代のスクリーンに散っていったアウトローたちの悪党映画。

 本作は、そんなセブンティーズアクションを全く歯に衣着せぬストレイトな俗悪描写でロブ・ゾンビ流に表現し、小気味よいアッパーカットを食らわせてくれるB級快作といっていい。

  前作でも散々、描かれた悪逆の限りを尽くし、おぞましき死体の山となったファイアフライ一家の屋敷。開巻いきなりその家を、集結したパトカーが取り囲み、急襲する。いきなりの襲撃に、応戦しつつ、ベイビーとオーティスの兄弟二人は脱出に成功するが、ビッグ・ママのマザー・ファイアライはあえなく逮捕される。

 かくして、ボニーとクライドさながら逃避行のオン・ザ・ロードとなった二人は、前作でも強烈なキャラクター性を放っていたキャプテン・スポールディング(シド・ヘイグ)と合流すべくハイウェイをひた走る。しかし、一家に兄弟を殺された保安官のワイデル(ウィリアム・フォーサイス)が、仇敵のファイアフライ一家を殲滅せんとつけ狙う。

 一作目が「悪魔のいけにえ」などに代表される完全なジャンク・ホラーにカテゴライズされる作品だったのに対し、二作目の本作のカテゴライズは、ボニーとクライドに代表されるような悪党たちの逃避行を描く完全なアクション物といっていい。だが、ボニーとクライドや、ブッチ・キャシディサンダンス・キッドたちのような悪党たちが、リリシズムやノスタルジーといったフィルターを通して、ヒーローめいた感慨を抱かせていたのに対し、本作における悪党のファイアフライ兄弟はロブ・ゾンビ流にあくまでも悪逆非道。そこにはリリシズムといった甘っちょろいフィルタリングは欠片もない。

 とにかく、釘付け状態にされるのが、兄弟二人が、立ち寄ったモーテルで、二組の夫婦が泊まる部屋に押し入って、悪逆の限りを尽くすくだり。

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 オーティスが銃で脅す夫婦に対し、その夫の目の前で、妻に服を脱がせ、凌辱するかのように、冷たい銃のバレルを体に這わせる。剝き出しの熟した裸身を舐めまわすキャメラの妙なエロさもロブ・ゾンビのスタイルそのもの。ここでの、羞恥プレイのあまりのストレイトな描写に思わず目を背けたくなるのも束の間、オーティスが夫二人を外に連れ出し、一転、反抗する夫二人と乱闘になるが、最後は二人とも惨殺。

 残されたベイビーと二人の妻がいるモーテルの部屋に、殺した夫から剝ぎ取った顔の生皮をマスク替わりに被ったオーティスが戻って来るレザーフェイスばりの悪趣味きわまりない展開の後、何とか妻の一人の方は、モーテルの部屋から逃げ延びたと思わせた矢先。このシークェンスにロブ・ゾンビがもたらす結末のあまりの無慈悲な残虐さには、誰もが口をポカンと開けて呆然とするはず。現に、この負け犬も、最後に助かったと思いきや、あっけなく下される鉄槌には開いた口が塞がらなかった。まさに全員死刑。悪党たちはあくまでも非道、というロブ・ゾンビ流の妙な執念めいた凄味すらここには感じた。

 プッシーから発散される臭い立つ臭気のような凄味を発散するのは、このベイビーとオーティスだけではない。ファイアフライ一家の親玉ともいうべきビッグ・ママ、マザー・ファイアフライも然り。保安官のワイデルに、兄弟の居所を尋問されたマザー・ファイアフライがここで繰り広げる、まるで臓物を絞り出すような悪態は実に見もの。

 前作では、このマザー・ファイアフライを70年代スピリッツのシンボルともいうべきカレン・ブラックが演じていたが、今回はレスリー・イースターブルックが前作のカレン・ブラックのハイ・テンション演技に勝るとも劣らぬ猥雑さと下品さ、それにダーティきわまりないバイタリティを披露してくれる。

 そして、やがて、二人はモーテルでキャプテン・スポールディングと合流。三人は、キャプテン・スポールディングの知るところの売春宿へと向かう。この三人とスポールディングのダチのヒモとのドラッグ・パーティのシーンは、まさにイージ・ライダーでのドラッグ・パーティのシーンへのオマージュに他ならない。かくしてロブ・ゾンビ流のセブンティーズへの思いの丈は、クライマックスに至って爆発する。

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 宿敵ワイデルとの対決を終え、血まみれとなった三人はオープンカーに乗って逃亡するが、その前に居並ぶのはショットガンを構えた警官隊。ここで、プラーベートフィルム風のフッテージを交え、銃を乱射しながら警官隊に突撃するさまは、まさに「ワイルド・バンチ」であり「バニシング・ポイント」であり「ダーティメリークレイジーラリー」そのもの。

 前半部分の吐き気を催すほどの兄弟たちの悪逆ぶりと、クライマックスのヒーロー風のリリシズム溢れる描写とのあまりのギャップに驚く人もいるかもしれない。でも、これこそがロブ・ゾンビ流の映画愛だと思いたい。

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 かくして熱烈なセブンティーズへの回帰で幕を閉じる本作だが、本作をカテゴライズするとすれば、はっきり言ってホラーではまったくない。この豹変ぶりは、まるでホラー・サスペンスのような凄味があった一作目から、二作目でいきなりヒャッホーな活劇になった「マッド・マックス」にも似ている。

 しかし、両社で共通するのは、二作目でクリエイターが本来、表現したかったスピリッツを爆発させたという点。

 規格に則った製品のような映画なんかより、やはり創り手が乗りに乗って作ったような映画を見る方が楽しいのは誰も同じ。ゾンビはゾンビでも徘徊するだけが能じやない。本作のように、映画愛を爆発させてくれるゾンビも実に楽しいものなのです~