負け犬的映画偏愛録

崖っぷちの負け犬が、負け犬的な目線で偏愛する映画のことを好き放題のたまう映画録。

負け犬の弁護士がエロい女の汗でねばつく肌とスレンダーな肢体にメロメロになってどこまでも堕ちた件「白いドレスの女」

嗚呼、キャスリーン・ターナーの小ぶりな乳房に引き締まったその肢体。男を狂わせる南部の熱気と女の汗ばむ肌。ムーディな魅力満載の若き俊英ローレンス・カスダンの傑作フィルム・ノワール

(評価 78点)

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 洋の東西を問わず、とかく男は女に弱いもの。それも性悪な悪女の手練手管にかかればひとたまりもない。悪女といえばフィルム・ノワールには欠かせない。フィルム・ノワールのキャラクターの代名詞といえばファム・ファタール。というわけで、クラシックなノワールから古今東西ファム・ファタールのベストテンには必ずランク入りするのが本作「白いドレスの女」でマティを演じたキャスリーン・ターナー

 ところが、本作を知りつつもある日、何の因果か、実はこの作品を見ていなかったことに気付き、思わず慌てふためいて見たところ、その見事さにすっかり魅了されてしまったという次第。何と言っても、本作製作当時、若き俊英として業界で鳴らしていたローレンス・カスダンの、ノワールに対する偏愛ぶりがこちらにまでビンビンに伝わってくるストレートさが、この上もなく心地よい作品なのだ。

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 だが、本作におけるキャスリーン・ターナーノワールファム・ファタールとはいえ、クラシックな美女とはちょっと違う。よく言えば個性的、悪く言えば美女とは言い難い。でも、そのツンと上を向いたお鼻とスレンダーな肢体がどこまでも現代的な、あくまでもナウい美人というべきか。キャスリーン・ターナーだけではない、このマティに翻弄される弁護士の主役のネッドに80年代の演技派男優のトップともいうべきウィリアム・ハート。そして、あくまでも脇役ながら鮮烈な魅力を発揮するのが、ネッドのサイドキック的な不良のワルガキに、当時、デビュー間もなかったミッキー・ロークと、フレッシュな顔ぶれが、エイティーズの時代に蘇ったこのクラシックなノワールに華を添えるのが最大の見どころ。

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 そして、何よりもこのマティのキャスリーン・ターナーが脱ぎまくって、ネッドのウィリアム・ハートと熱い絡みをふんだんに披露してくれるところが、エイティーズ・ノワールなテイストと言える。しかし、映画の体裁自体は、きわめてシンプル。敢えてひねることなど一切せず、オーソドックスなスタイルのまま、一人の男が悪女に陥落して、堕ちるところまで堕ちていくその顛末を簡潔に描いているところが実に良い。

 お話はいたって単純。南部のやり手の弁護士として鳴らしていたネッド。一方でプレイボーイ的な生活をエンジョイしていたこのネッドが、とある蒸し暑い夏の夜。たまたま野外コンサートに来ていた目の覚めるような純白の薄手のドレスを身にまとう女に目を止める。出会い頭にいきなり、自分は亭主持ちだとネッドに告げたその女がマティだった。

 というわけで本作の原題は「ボディ・ヒート」。このイカすタイトル通り、本作のキー・イメージとなるのが人を狂わす南部の熱暑に熱気。そこで知り合ったネッドとマティは、その熱にうなされるかのように、会うたびに汗まみれの肌で交わって逢瀬を重ねていく。そして、いよいよネッドはマティの体の虜になっていく。

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 本編でも、ふんだんに出てくる、オールヌードでの二人の交情シーン。ここでキャスリーン・ターナーが惜しげもなく晒してくれるのが引き締まったその肢体。ファム・ファタールのグラマラスなイメージとは違うスレンダーさが、80年代のノワールの悪女に実にふさわしい。

 やがて、マティがネッドに仄めかしたのが、資産家のマティの夫の殺害だった、というわけで、本作はノワールの古典中の古典の「郵便配達は二度ベルを鳴らす」にならって、不倫の果ての完全殺人という展開に。本作で監督デビューを果たしたローレンス・カスダンはこの後も定石を決して踏み外さずに、あえて典型通りに描いていくが、それでも面白さが失せないのは、やはり、シナリオライターのワークショップでは、必ず教材として引用されるほどのカスダンの脚本家としての実力のなせる業だろうか。

 そして何と言っても外せないのが007シリーズで有名なジョン・バリーの音楽の魅力。007シリーズならではのスケール感はそのままに、全編にわたって流れる、南部の熱気とけだるさ満点のムーディなジョン・バリーの音楽がノスタルジックでありながら現代風のこのノワールを否が応でも盛り上げてくれる。

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 マティの夫を爆死にみせかけ、その殺害に成功したネッドだったが、マティの不審な挙動に疑惑を抱き始め、そこでようやく自分がマティのワナにはめられていることに気付く。しかし、時はもう遅かった。最後に堕ちた果てに、ネッドが古ぼけた高校の卒業アルバムで見つけたものとは・・・!

 クラシック、ムーディ、ノワール、そしてむせ返るような女の色香。その全てが味わえると言っても過言ではないノワールの傑作、寒い冬の夜に如何でしょうか?