負け犬的映画偏愛録

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負け犬の奥さんが選んだスクリプト「トータル・リコール」

コブラ」のパクリネタにして記憶覚醒SFアクションの元祖、そして今やカルトといってもいい快作のスクリプトは、またしてもバーホーベンの奥さんのチョイスだった!

(評価 78点)

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1990年、シュワちゃん人気絶頂期、満員の難波の映画館で見た記憶は、ジェリー・ゴールドスミスのあのダダンダンダンというテーマ曲と共に未だに鮮明。人間の記憶にもエピソード記憶などいろいろな種類があるが、その記憶は何に分類されるのだろう?いずれにしても監督のバーホーベンは小難しいことなどすっ飛ばして、あのフィリップ・K・ディックの「追憶売ります」を、いつものキッチュでグロな残酷趣味満載のバイオレンスSFに仕立ててしまった。

 ディックの「追憶売ります」は勿論、読んでいる。この短編小説は、寺沢武一氏の「コブラ」の冒頭第一話のパクリネタとしてもつとに有名だ(どっちが先かという議論もあるようだが、「追憶売ります」の方が先に決まっている)。

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 建築業に従事するクェイド(シュワルツェネッガー)がいつも夢想しているのは火星での生活。しかし、好きな記憶をインプラントしてくれるというリコール社の広告を出勤途中に見たクェイドは、火星でエージェントとして活躍するという記憶をインプラントしてもらいにリコール社に出向くのだが。

記憶のインプラントというネタは映画でも今では当たり前だが、本作はまさにそのハシリといってもいい作品。しかし、本作はそのルーツにして、ディックの頭脳明晰なアイデアを下敷きにそれを逆手に取っているところが見所。

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 有名過ぎる本作のその後の展開はいわずもがなでしょう。先日、TSUTAYAの棚に本作を見かけ、また無性に見たくなりレンタルしたらこれがもう意外なことに絶品だったとい次第。

 原作は短編小説らしくシニカルなオチで終わるが、本作はそれを完全にハリウッド流のアクションフォーマットに強引に仕立て、リコール社でのインプラントのオペレーションを皮切りに、パワフルな追っかけに突入していく。加えて本作は、特殊効果のロブ・ボーティンのまさに独壇場。クリーチャー・フリークのボーティンが嬉々として作ったクリーチャーや人間のダミーがわんさか出て来る。

 このダミーが、何ともグロテスクで今見ても良く出来ていて楽しい。シュワちゃんの顔自体、作り物のダミーみたいな顔だから、目玉や舌が膨れあがって飛び出したダミーのカットに切り換わってもまったく違和感ないのが面白い。

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 一番、有名なのが、クェイドが太めのオバさんのダミーを装着して火星のターミナルに降り立ち、それを脱着するところ。まるで巨大な虫がメカニカルに脱皮するようにシュワちゃんの顔が現れるイメージは誰の記憶にもこびりついているのではないでしょうか。

 かくして、本作、セットやプロップのプロダクションデ・ザインのルックスもはっきり言ってチープな、いわばハリウッド流の大味なアクション大作なのだが、隠し味にそうした不確かな記憶という隠し味をしつらえてあるから感情移入しつつ実に面白く見られるところもある。

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 そしてよく見ると「ロボコップ」を凌駕するバーホーベンの嗜好もぎっしり詰め込まれている。それが顕著なのは火星に舞台が移ってから。火星には人類の植民政策の犠牲になった奇形のミュータントたちがレジスタンスとして活動していてという設定を始め、火星のバーに乱入してきた追手との銃撃戦では小人の女性がマシンガンを乱射するフリーク・ショーまで繰り広げてくれる。

 そして、本作にはまたしてもバーホーベンの奥さんが深く関わっている。ダン・オバノンとロナルド・シュセットによるスクリプトを読んだバーホーベンの奥さんが、興奮して「あんた!この脚本、絶対に映画にしなよ!」と叫んだらしい。まったく恐妻家もここに極まるというお話しだ。

 今見ると、そのテイストは「ロボコップ」同様、どこか異様そのもの。でも、その異様さがあるからこそ誰の記憶にも残るカルトっぽい作品になれたような気がする。

 記憶をめぐって、ジャブを出しつつもエンディングは至ってまとも。しかし、スクリプトにはもう一捻りあったはずだ。そんなことを想像してしまうエンディングでもある。

 しかし、ちょっと待て・・、実は自分はそのエンディングを実際に見て、勝手に今のエンディングに脳内ですげ替えているのではなかろうか・・なんちゃって。

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 ちなみに本作で一番記憶にこびりつくのは、若きシャロン・ストーンのエロいレオタードのお色気たっぷりな肢体。この記憶だけは別オーダーでインプラントしてもらいたいよな~