ダバダバダ、ダバダバダ、ダバダバダ、ダ~バ~ダ、ダバダバダ、ダバダバダ、ダ~バダ、ダバダバダ、ダバダバダ~♪このスキャットとメロディこそ我が人生のリズム
(評価 80点)
有名過ぎる本作とそのテーマ曲。この「男と女」ほどクラシックという古めかしい言葉が似つかわしくない作品はない。クラシックどころか、半世紀以上の時を超えても、その映像は尚も、まるで昨日の風景を切り取ったかのように新鮮だからだ。
人や風景、人間の生活がどれほど変わっても、決して変わることなどない、人の営みにただよう感覚のようなものがこの映画では手に取るように克明にすくい取られている。
そして、この映像のインパクトがまぎれもなくアメリカの若い作家たちを触発し爆発的なニュー・シネマのムーブメントを生み、アメリカ映画そのものの成熟をももたらした。
大好きなコッポラの「雨の中の女」にも、そのシネマ・ヴェリテ的な手法に、この映画からの影響が顕著に見てとれる、実際、コッポラ自身もそれは認めている。
冒頭の浜辺で車を乗り回すジャン(ジャン・ルイ・トランティニヤン)と子供。ジャンとスクリプト・ガールのアンヌ(アヌーク・エーメ)が子供を送り届けた施設で出会い、お互いの境遇を話すうちあいが芽生え、愛し合う。ただそれだけのシンプルきわまりないストーリー。しかし、そこに描かれた万感のエモーションはむせ返るほどに豊かだ。
絶え間ないボサノバのリズム。朝焼けのレーシング・トラックのアスファルトの眩しさ。
人けのない海辺。犬を連れて歩く老人。去っていくその人と一匹の足取りが似ている。ジャコメッティの言葉。
ラリーの人いきれ。ジグザグに走る疾走感。水辺の鳥たち。桟橋をひた走る車。
本作のタイトルは「男と女」。必ずといっていいほど語られるのは本作が愛の物語だということだが、最初に見た時からそうは感じなかった。「男と女」の愛のストーリーというだけでは、この映画にあふれているエモーションは語り尽くせない。
この映画は間違いなく、ただ日常を生きる、その喜びとなにげない全てのものへの美しさを謳っている。
だからこそ、もしもまだご覧になっていない方がいたら是非とも見ていただきたいのです