負け犬的映画偏愛録

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負け犬の本当のようなとんでもないホラ話「トゥルーライズ」

夫婦の絆はスパイの絆!シュワちゃんジェームズ・キャメロンの蜜月の絶頂期に生み出された、今見ても実に楽しい無印良品

(評価 78点)

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パパはコンピューターのセールスマン!しかし、その本職は世界を股にかける名うてのエージェント!ご存知キャメロン印のエンタメとフランス映画のエッセンスが巧みにブレンドされた大人のための傑作エンターティメント。

 「ターミネーター2」で大ブレイクし、名実ともにハリウッド第一線のクリエーターとなったジェームズ・キャメロンが、意外にもシュワちゃんの企画とタッグを組んで作り上げたエンターティメント。

 その体裁からは、ちょっと想像もつかない、フランス映画のリメイクの本作。しかし、キャメロン印の胸焼けするほどの圧倒的なパワーと、フランス映画の洒落たセンスが巧みにブレンドし、そのアクの強さが程よく中和された大人のためのエンターティメントとして、今見ても、いや、今だからこそ楽しめる一品となっている。

 開巻は007そのもの。ジェームズ・ボンドよろしく海中から現れたシュワしゃんことハリーが、そのダイビングスーツを脱ぐと、その下は真っ白なタキシードというのは、もうボンドそのもの。そのままパーティ会場に紛れ込み、後の悪役となる女スパイと意気にタンゴを踊ってみせる。しかし、たちまち、圧巻どもに追われ、雪上でのチェイス・シーンとなる。昨今のエンタメのパロディともいえる、最初に見せ場を繰り出すこのイントロの後、一転してハリーが戻っていくのが、古女房の愛妻がグーグーいびきをかいて眠っている、コンピューターセールスマンとしての日常の世界なのだ。

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 とにかく全編に横溢するこのミスマッチ感が、本作の最大の魅力といえる。そしてこのミスマッチ感が、プロット展開とともにどんどん増幅していくのが実に楽しい。

 セールスマンとしての日常の顔しか知らないハリーのヘレン(ジェイミー・リー・カーティス)とは共働きの夫婦。しかし、ハリーがたまたまヘレンのオフィスに立ち寄った時、ヘレンにどうやら愛人らしき男がいることが発覚し、冷静沈着なスパイのはずのハリーが逆上。本作の真価が発揮されるのはここから。

 ハリーは自らが所属する国家保安組織オメガセクターの最新鋭の情報機器を駆使し、ヘレンの浮気調査を開始するのだ。国家規模のテクノロジーを妻の浮気の調査に私的利用するというミスマッチが最大限にカリカチュアされた、ある意味フランス映画的なコメディー感覚がもっともぶっ飛んで表現されているともいえるこのくだりが実に何とも楽しい。そして、ハリーはヘレンの相手が、自分のことを国際的なスパイだと偽るただの中古車のセールスマン、サイモン(ビル・パクストン)であることを突き止める。

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 二人の浮気現場にSWATを引き連れ急襲したハリーは、そのままヘレンをマジックミラー越しに尋問。そこではっきりと今も夫のハリーを愛していると明言するヘレンを見て、安堵するハリーが実に人間的で良いのです。この辺りなど、劇画チックなアクション一辺倒のキャメロン映画とは、違った大人の風味がある。

 しかし、後半は、一変してキャメロン節が炸裂するつるべ打ちのクライマックスとなる転調具合がまた楽しい。

 核ミサイルを武器に米国本土襲撃を企む中東のジハドたちにハリーとヘレンが捕まり、ハリーは戦闘能力を駆使して逃亡するが、囚われの愛妻ヘレンを追うハリーはヘリで妻が乗る車を追う。

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 そしてやって来る圧巻の、フロリダのセブンマイル・ブリッジでの低空を飛ぶヘリとリムジンのチェイス・シーン。目の前で繰り広げられる命がけのスタントに目を丸くしているうちに、破壊された端にリムジンが落下する寸前で、ハリーがヘレンの腕をがっちりと掴んで助ける名シーンには胸が熱くなる。

 ところが、キャメロンがこれだけで満足するはずがない。その後には、ただただ画面を、口をポカンと開けて見るしかないクライマックスが待っている。戦闘機ハリアーに乗ったハリーが捕まった娘を助けに高層ビルに向うとんでもないシーン。このシーン、今見てもCGの出来栄えに何の遜色もなく、このスラップスティックなシーンの造型のために、莫大な金を湯水のようにかけるハリウッドの太っ腹ぶりには、もう呆れるしかない。でもこの呆れっぷりが、一種の感動にまで転化するのがハリウッドのエンタメの醍醐味ともいっていい。

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 エンディングは如何にもフランス映画的な、洒落っ気で幕を閉じる本作だが、思い返せば本作は、キャメロンがデビュー作の頃からこだわり続けている夫婦の愛情物語、男女のカップルのラブ・ストーリーであることが良く分かる。だからこそワンマンな完全主義者のキャメロンもシュワちゃん発案のこの企画に大乗り気で乗ったのではなかろうか。いずれにせよ、とことんまでやるマンガ的なキャメロンのタッチとアダルト・テイストが程よくマッチし、尚且つぶっ飛んだミスマッチなギャグ感覚との落差が楽しい大人のためのエンタメであることは確かでしょう。