負け犬的映画偏愛録

崖っぷちの負け犬が、負け犬的な目線で偏愛する映画のことを好き放題のたまう映画録。

負け犬にはネットオークションで値がつくか「ホステル2」

ゴアがマイルドになっても一応、面白さは健在

(評価 65点)

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今も王国ハンガリーの面影が随所に残る、中央ヨーロッパの共和制国家スロバキア。実はその国には知られていない一面がある。そのとある州の小さな田舎町の一画に、共通する嗜好を持つ世界の富裕層をクライアントとする秘密のクラブが存在する。その顧客たちは全員が、人間を拷問し死に至らしめることを至極の喜びとするトーチャー・マニアたちで、拷問にかけられたものの危うくクラブから脱出した一人の旅行者によって、そのクラブの存在が発覚。スロバキア当局の発表によればそのクラブの犠牲になった人々は、世界中から観光目的でその町を訪れた旅行者を含むのべ二万人にものべるという。

 この事件が報道され世界を震撼させたのは記憶に新しい。こんなおいしいネタを映画界が見逃すはずもなく、その事件を題材にして作られたのが映画「ホステル」だった、というのは真っ赤なウソ、都市伝説的なそうしたフェイクをあくまでもフィクションとしての面白さを前面に押し出し、エンタメとして成立させていたのが本作だった。そのアピールは成功し、映画は大ヒット。となれば当然、続編が作られるというわけで、今回はガラリとキャラクターのジェンダーを変えて来た、その戦略は如何に。

 前回がいかにもバックパッカー的な野郎ども3人組だったのに対し本作の主人公はベス、ホイットニー、ローナの3人の女の子。本作、一目瞭然なのは、ゴアを売りにした第一作と比べ、更に観客層を拡大すべく、何かにつけマイルドになっていること。たとえば前回が男3人組ということもあって、前半はまるでおっぱい祭りみたいなエロの過剰サービスがあったりしたが、本作にはヌーディティは、導入部の美術のお勉強のシーン以外は全く出てこない。また目玉のゴアなシーンにしても数か所程度に過ぎない。その戦略は明らか。前作でスロバキアという欧州のマイナーな国に興味をもった女性の観客層を狡猾にとりこもうというわけだ。その手の露骨な安っぽい手段は大抵、失敗に終わるのだが、本作、実は見事にそれが成功している。その点、素直に驚かされました。

 冷静なベス、イケイケなホイットニー、奥手のローナ、それぞれ性格付けが成された3人組がワナにはまっていくプロセスをコンパクトに語る、その手法は前作同様巧い。

 さらに、本作で特筆すべきは、前作が都市伝説的な逸話をそのまま映画にしたようなフェイク性があったのに対し、今回はそのベクトルをさらにフィクションの方向に振って、問題となる拷問クラブの組織に焦点を当てていること。まんまとワナにはまったベスたち3人がホステルにチェックインした後、前作にも出て来たカウンターの受付の男がいかにも業務的な素振りで3人のパスポートの写真をネット上に送信する。すると世界中に散らばっているクラブのクライアントたちによる獲物の争奪戦のネットオークションが始まる。

 そして、競り落としたアメリカ人の客が、本作のもう一つのキャラクターとなり、殺す側と殺される側の双方のベクトルを交互にカットバックしつつ描きながらクライマックスへと進んで行く。こうして前作と物語の構造はすっかり同じでありながら、切り口を変えてくるところは実に感心させられた。

 尚且つ、このアメリカ人、二人組にも性格付けがちゃんとされていて、一人は殺したくてウズウズしていて、一人は既にして怖気づいている、ところが、クライマックスに至ってちゃんとそのキャラクターが逆転してくる。つまるところこの映画、二作を通じて一見、趣味の悪い拷問だけが売り物の映画に見せといて、拷問クラブというネタを使って、カッチリとストーリーを語るという上手さがやたらと光っているんですよね。ただのバカかと思ったら、意外にも良く出来た子だったというか。

 そして、最大のお楽しみ、前作で最も関心させられた落とし前は本作でもキッチリとつけてくれる。これも上手く切り口を変えて、オオ・・そうきたかと感心させられた次第。

それにしても、本作、前作にもあったブラックユーモア的な味付けをさらに濃くしているのだが、これも前作同様のキャラクターの町のガキんちょどもが生首をサッカーボール替わりに蹴って喝采をあげて終わるエンディングを見るにつけ、これを面白がって見ている自分がちょっとした罪悪感を抱いたこともまた事実。それも製作サイドの戦略かもしれませんが・・