負け犬的映画偏愛録

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負け犬の二代目は可哀そう「女王陛下の007」

興行的にはイマイチでも作品のクォリティはピカ一級の残念作

(評価 70点)

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二代目の悲哀の象徴のような本作、それでも二代目監督の張り切りぶりが楽しい佳作には違いない。

 親の七光りとはいうけれど、とかく偉大な初代の後を引き継ぐ二代目の部は悪い。本作は、そんな二代目の悲運を象徴するようなペシミスティックな側面はあるけれど、エンタメ映画としては実にバランスのとれた良作と言っていい。

 前作「007は二度死ぬ」で、日本を舞台にド派手に暴れまわった末に、ボンドことショーン・コネリーにさっさと見切りをつけられ、すったもんだの末に、ジョージ・レーゼンビーが二代目を襲名した本作。前作でマックスまで沸騰したやんちゃな路線を反省したのか、本作は打って変わって正統派?路線に立ち返った作品でもある。

 しかし、それまで助監督に甘んじ、本作で見事、看板監督をはることになったピーター・ハントのまるで水を得たようなパワーみなぎる演出で、それまでの一種、のっぺりとしたテンポとは一線を画す活力にも満ちた作品となっている。

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 冒頭のスピーディなボンドの登場シーンからして、何かが違うと感じさせてくれはする。スポーツ・カーに乗って疾走し、浜辺で美女を見つけ、海に向かって身投げでもするかのように走るその美女をしっかり抱きかかえたところで悪漢どもに襲われパンチを食らわすまでの映像は、まるで、ちょっとしたMTVでも見ているようで、それまでのシリーズとは毛色が違うと感じさせてくれるには十分。

 ところが、ここで、今回のボンドことジョージ・レーゼンビーが美女に名前を聞かれ、ボンドと答えるお馴染みの掛け合いでジョージ・レーゼンビーが声を発した瞬間、その不釣り合いに素っ頓狂な高い声のトーンに、やっぱりコネリーと違う、と落胆するファンも多かったに違いない。

 それでも、最初の残念なインパクトが段々と薄れてくるところも、逆説的にいえば本作の見どころなのも、ちょっと面白いところではある。

 かくして、冒頭のその浜辺で出会った美女こそ、本作のボンド・ガール、トレーシー(ダイアナ・リグ)。本作がシリーズ中で、もっとも異色なのは、世界一のプレイボーイ、ジェームズ・ボンドがこのトレーシーと本気で恋に落ち、結婚までするところ。キャラクターイメージをシリーズ通じて踏襲するのがマーチャンダイジングの基本戦略だとしたら、このカスタマイズは、ある意味、革新的だったと言ってもいい。

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 今回、宿敵ブロフェルドに扮するテリー・サバラスヴィランとしては申し分なく。今回の秘密基地となるスイス山頂の細菌研究所のビジュアルも見ごたえ十分。ボンドの素性がバレて、脱出をはかるくだりでのスキー・チェイスのシーンのダイナミックなこと。更には、クライマックスのヘリでこのアジトに急襲をかけるシーンのロケーションも実にエキサイテキング。アクションの歯切れだけでなく、重量感も兼ね備えたピーター・ハントの演出力は並の物ではない。しかし、ここでも苦い経験をするのが二代目の常。

 結局、評判の悪いジョージ・レーゼンビーにまんまと足を引っ張られる形で、ピーター・ハントもこの一作のみで消え去ることに。

 今でも、確固たるマーチャンダイジングの基盤を誇り続ける007だけど、ボンド役の襲名には、かくも厳しい掟があるのですよね~