負け犬的映画偏愛録

崖っぷちの負け犬が、負け犬的な目線で偏愛する映画のことを好き放題のたまう映画録。そして、木枯し紋次郎を完全コミック化(笑)した「劇画!木枯し紋次郎」を日々、配信中!色々な動物が繰り広げる動物コミックもあわせてお楽しみください

負け犬のどんでん返しは残念賞「ハイテンション」

どこまでも殺人鬼を追い詰めろ!ミイラ取りがミイラになるまで。肉塊と血しぶき飛び散るハイパー・ユーロ・スプラッター

(評価 60点)

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殺人鬼をこの手で仕留める!ダイ・ハードのスプラター・バージョンというべき、と思いきやラストに衝撃が待っていた。どんでん返しスプラッターの異色作。

 ラストの意外な衝撃の惹句が躍る、少々、珍しいユーロ発のスプラッター映画の本作。ユーロの意地を見せてやると言わんばかりの、監督アレクサンドル・アジャの気概十分のパワーには満ちた作品だった。

 閑静な田舎で勉強に励もうと女友達アレックス(マイウェン)の実家にホーム・ステイするためやって来たマリー(セシル・ドゥ・フランス)。ところが到着した当日の夜、何者かがアレックスの家に侵入し、アレックスの両親とアレックスのまだ幼い弟を惨殺、その上、アレックスを拉致し・・とまあ、ストーリーは絵に画いたようなスラッシャーものの本作。しかし、大量生産されている、安手のスプラッターと一味違うことは、導入部から序盤にかけてのきめ細やかな描写だけで、十分に伺える。

 それに、さすがユーロというべきか、スプラッター描写もイタリアのゴア描写の血統を感じさせるに十分なほど念が入っている。侵入してくるのは、レッド・ネックの労働者風のサイコパス。このサイコパスの初登場のシーンが、何と女の生首でのフェラチオ・シーン。これに続くこと、夜も更けた頃、家宅侵入して来たこのサイコパスに、アレックスの父親がまず、タンスで首を寸断され、血しぶき吹き散らして殺される。次に、アレックスの母親が、カミソリで喉を描き切られ殺される。死体の首にパックリと開いた傷口が実にグロテスク。

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 これだけなら方向性皆無のモンスター的殺人鬼が猟奇殺人を犯すだけの凡百のスラッシャーと何も変わらない。本作が本領を発揮するのは、実はここからなのだ。侵入者の気配を察知したマリーは、まずベッドの下に逃げ込み、それから身を隠したまま、サイコパスの猟奇殺人の様子を目の当たりにしていく。そして、そのまま、縛られ耳動き出来ないアレックスが、拉致されたバンに自分も乗り込み、それと知らないサイコパスが運転するまま、マリーはアレックスもろとも、どこかに運ばれていく。途中、犯人が立ち寄ったガス・スタンドでマリーだけは逃げることに成功するが、スタンドの店員が犯人に惨殺され、置き去りにされたマリーを残し、アレックスを乗せたままバンは走り去ってしまうのだ。

 ユニークなのが、殺人者には悟られていない存在のマリーが、そのまま逃げるのではなく、果敢にも犯人を追跡し、立ち向かっていくところ。元々、ボーイッシュで男性的なマリーが、サイコパスに追いすがるくだりは、まるでエイリアン2でエイリアンと捨て身で戦うリプリーのようでもあり、また影の存在としてテロリストに立ち向かう、ダイ・ハードマクレーンのようでもあり、エキサイトさせられるには十分と言っていい。やがて犯人を追い詰めたマリーは、サイコパスと戦うことになるのだが、そこに待ち受けているのが、本作の謳い文句通りのどんでん返しだ。

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 勿論、ここでは、それは明かせないのだけど、昔のこと、出版社の人と話をしていた時、フィクションで、やってはいけない不文律というものについて話をしていたことがある。結局、落ち着いたのが、やっぱり〇オチだけはダメだよね、という事だった。

 本作のオチは厳密にいえば〇オチではないが、限りなくそれに近い。ただ、主人公のマリーがアレックスに、恋人は作らないの?と聞かれた時、露骨に不機嫌な顔をするとか、到着した初日の夜から、マリーがあられもなく自慰にふけってしまうという、オチにつながるヒントは、一応、それなりに散りばめられてはいる。

 しかし、こうしたビジュアルの見せ方にしてしまうと、結局、最後のオチに至って受け手は、今まで散々、見せられてきたのは一体、何だったの?という結果になるのも確か。この手のサイコパス映画で、ビジュアル的な処理とオチの整合性がちゃんと取れているものといえば、やっぱりあのクラシックにして金字塔といってもいい、ヒッチコックの「サイコ」になるのではなかろうか。。

 一つだけ言えるのは、もしも本作がアメリカでリメイクされるとしたら、オチの部分はバッサりカットされるだろうな、という事。マリーがサイコパスのモンスターにダイ・ハードよろしく立ち向かうヒネリだけで十分で、そっちのベクトルでカタルシスを盛り上げてくれれば良かったのに、と思うのはこの負け犬だけなのだろうか。

 かえすがえすも、アレクサンドル・アジャの演出になかなかのキレ味が感じられただけに、ちょっと残念なところ。総じて感想はといえば、途中までは良かったのに、最後の最後でアジャ~というところでしょうかね~