負け犬的映画偏愛録

崖っぷちの負け犬が、負け犬的な目線で偏愛する映画のことを好き放題のたまう映画録。そして、木枯し紋次郎を完全コミック化(笑)した「劇画!木枯し紋次郎」を日々、配信中!色々な動物が繰り広げる動物コミックもあわせてお楽しみください

負け犬がもっとヘビーなパンチを食らわせてほしかった件「キャビン・フィーバー」

「サタデーナイトフィーバー」程とはいかないにせよ、もっとフィーバー出来るパンチが欲しい!これぞ、あのホラーの旗手イーライ・ロスの中途半端なロス映画!

(評価 50点)

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あのソリッド・シチュエーションホラーの傑作「ホステル」のイーライ・ロスが150万ドルという超低予算で撮りあげ、米国内だけで2千万ドルを稼ぎあげた長編デビュー作!と聞けば誰でも身を乗り出すはず。現にこの負け犬もそうだった!

 突出した作品で驚かせてくれた監督のデビュー作。そこには、それなりのキラリと光る何かが必ずあるもので、そんな原石のようなものに出会える喜びを、この負け犬のような映画フリークというやつは、年がら年中、鵜の目鷹の目で物色して回っているような悲しい生き物なのだ。

 そんな映画フリークが、あのヘビーなスプラッター描写と、卓抜な構成力で驚かせてくれた傑作ホラー「ホステル」を放ったイーライ・ロスの監督デビュー作の存在のことを聞きつけて食指が動かされないわけがない。というわけで、例によってTSUTAYAをゾンビのように徘徊し、見つけた時はニンマリしつつ、借りて見た本作。見た後は思わず・・・・となってしまう代物だった。

 本作をズバリ一言でカテゴライズするとすれば、田舎ホラーというべきか。5人の若者がヴァケーションで向かった山中に恐怖体験が待っている。スタイルだけでいえば、吐いて捨てるほど凡百のホラー映画で見せられてきたパターンだが、本作が一味違うのは、その恐怖のアイテムが、ゴーストや殺人鬼ではなく病気であること。そして、それが本作の場合、伝染性の皮膚病なのだ。

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 なんでもイーライ・ロスが実際に皮膚病にかかった時の体験に基づくこの脚本、本編では、本作の舞台のド田舎に流れる汚染された水が感染源ということになっている。まずは、5人のパーティのうちの、アイドル的な女の子が感染する。

 スプラッター系のホラー映画。そこに皮膚病とくれば、かつてのトロマ映画並みのグロテスクな描写が続出すると慄く人もいることでしょう。確かに、この女の子を皮切りに、他のボーイズアンドガールズも感染し、そのうちの女の子の一人などスネのムダ毛を剃っているうちに皮膚もゾロリ!なんてグロい描写もあるにはあるのだが、本作の場合、過激な描写は、ある程度控えめでマイルドだからご安心。

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 しかし、本作の場合、そのマイルドさが、万事が万事、何だか裏目に出てしまう結果となっているのです。「ホステル」で観客の顔が引きつる程の、ヘビーを突き抜けマンガチックなまでに過激な残虐描写を見せつつも、きっちりとストーリーにオチをつけて、観客にカタルシスを味合わせる構成力を見せつけたイーライ・ロスが、ここでは。一応、その構成力の片鱗を覗かせつつも、結局はパンチ力に乏しい展開に終始する。

 感性性の伝染病、密室のような閉鎖空間となれば、展開はパーティのメンバーの中での確執、疑心暗鬼となってくる。感染者が続出する中、イノセンスな雰囲気だったポール(ライダー・ストロング)まで、とりつかれたようになり、一人で我先に逃げようとしていた自己チュー男は、助かったと思わせた矢先、伝染病の存在を隠蔽しようとする保安官に射殺され、といった殺伐なくだりは、おそらくロスも好きなはずのジョージ・ロメロの「ナイトオブザリビングデッド」のエンディングの借用といっていい。

 伝染病といえば、今のコロナ過の時代、どんな些細なものであれ、その対策には国ぐるみで動く。ところが本作では、最後に感染し、病院に担ぎ込まれたポールによって、致死にいたる伝染病の存在を誰もが認知しているのに、何故か地元の警察は、パーティの生き残りの若者を射殺し勝手に隠蔽しては、万事目出度しで収束してしまう。本来なら、即、保健所、次いで国家機関で封じ込みになるところ。

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 今のウィルスに敏感なご時世ということも確かにあるのだが、現実の人間や社会のパラダイムとあまりにもかけ離れた行動を見せられているようで、どうしてもこちらはドン引きのスタンスになってしまうのです。

 エピローグも何だか閉まらない。感染源の井戸から汲んできた水で作ったレモネードを、くだんの保安官たちや村人たちが旨そうに飲んで終わるという、誰もが想像がつきそうなバッドエンド。その描き方にしても不穏感は全くなくて、何だかのどかに終わるという不協和音アリアリの妙な終わり方。

 結局、ホラーはホラーでも、刺激もなければスリルもなく。折角チャンスをものにしたデビュー作、となれば下手でもいいから、一発ぐらいは見舞ってほしかった向こう見ずなパンチもない。マイルド過ぎて手応えのないホラー映画とはこういう作品のことを言うのではなかろうか。ただのノー天気なスプラッターではなく、ちょっと別種のホラーを作りたかったというのは何となく分かるのだが、期待が大きかった分、この欲求不満は何とかしてほしいところ。

 でも、本作もヒットした例にもれず、シリーズ化されたようなのでビジネスとしては成功。それが次作の傑作「ホステル」につながったのだから、文句を言う筋合いは無いのですけど。

 この半端ない物足らなさ感、喪失感・・ロス感は、何とかならないものですかね~イーライ・ロスさん!