セピア色で止まったままブッチとサンダンスは負け犬の心に永遠に生き続ける
(評価 80点)
この作品を初めて見たのはゴールデン洋画劇場。半端ない映画小僧の道に突き進んだのも、それがきっかけだったといっても過言ではない。何より素晴らしかったのは、やはりその映像。冒頭のタイトルバックから無声映画のフッテージを用いるそのセンス、そんな映画、今まで見たことなかった。
それまで見てきたスタンダードな西部劇なんかとはまるで違う、めくるめくようなジョージ・ロイ・ヒル監督のセンスは勿論、それに音楽がコラボする、どこをとっても後にも先にも、新たな衝撃だった。そして、何といっても映画史上に残るブッチとサンダンスのラストのストップモーション。
本作の公開年は1969年、ちょうどこの年を境に、あのニュー・シネマのムーブメントが爆発する。いわばまさに新旧のボーダーラインに位置する作品だ。
ブッチとサンダンスが、資本家が雇ったプロの賞金稼ぎたちに追われるシークェンス。賞金稼ぎたちのその顔が誰一人として画面に映ることはない。その集団がまるで亡者の群れのようにどこまでも二人を追ってくる。賞金稼ぎたちが、ブッチとサンダンスという二人のアウトローに迫る時代の波という一つのメタファーであることは、まだまだ映画を見る目が未熟な年だった自分にも手に取るように分かった。その洗練されたスタイルを見ていると、一言のセリフもなく映像だけで語るというフェーズに映画が進化を遂げていく予感すら感じさせた。
南米のボリビアに逃げ延び、辞書を引きながら、銀行強盗で何とか日銭を稼ごうとするシーンは笑えるがせつない。ダバダバダバダ~♪のスキャットと共にブッチとサンダンスの逃走シーンがカットバックで繰り返されるシーンのお洒落なこと。そのお洒落のシーンの極みは、あの永遠の名曲「雨に塗れても」をバックにこれもまた時代のメタファーたる自転車にブッチ(ポール・ニューマン)とエッタ(キャサリン・ロス)がまたがり曲乗りをしてみせるシーンだろう。本当にそのどれもこれもが、心の中に刻みついたまま、セピア色に色褪せるどころか、見たままの鮮やかな色合いで脈々と今も息づいている。
そして容赦なく時代の波はボリビアにまでやって来る。軍隊に追い詰められながらも、まだオーストラリアという新天地の夢をめぐって軽口をたたきながら、二人のアウトローはセピア色の永遠の時間の中へと轟く銃声と共に消えていく。
負け犬的映画史上屈指のラストはせつなくほろ苦い。