負け犬的映画偏愛録

崖っぷちの負け犬が、負け犬的な目線で偏愛する映画のことを好き放題のたまう映画録。

負け犬の遂に解明された都市伝説!男は肩を並べて熱くなる!「ヒート」

言わずと知れた名匠マイケル・マンの代表作!デ・ニーロVSパチーノの二大名優のガチンコ勝負に胸が熱くなること必至の傑作!

(評価 82点)

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アウトローと一匹狼の刑事。互いに一線を踏み越えた男たちがヒートアップして激突する男たちの挽歌

 マイケル・マンといえば本作。本作と言えばマイケル・マン。さらにロバート・デ・ニーロアル・パチーノ。この二大名優にとっても、そのキャリアの黄金期を体現する作品と言えば本作、ということになるのでしょう。

 モンスターバース的に言えば、ゴジラVSキングコング、時代劇でいえば、座頭市と用心棒、ともいえる、この二大名優の初共演。実際、公開当時のワクワク感は、半端なものではなく、超満員のナビオの映画館でこの3時間近い骨太のアクションを見た後、吐き出されてくる観客と一緒にロビーを歩きながらひしひしと感じていた充足感は今でも覚えている。

 しかしながら、かくも名作の本作だが、その後、ビデオやDVDで幾度となく繰り替えして見るうち、ある事に気が付くことになる。

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 デ・ニーロとパチーノが同じフレームに顔見世して映っているカットがただの1カットもない事に・・・。

製作当時の90年代半ばといえば、二人とも引きも切らずに出演作が相次いでいた時期。結局、初共演とは謳いつつ、編集した挙句の疑似共演だったのか、などと納得して、少々、本作に対する印象のポテンシャルを下げつつ、その後、漠然と悶々とした方もきっと多いのではないでしょうか?

 やっぱり、この負け犬もこの共演がフェイクだという都市伝説のジレンマに悶々と暮らしていた一人だったのです。ところが、ようやく最近になって、海外のネットなどを漁っているうちに、その共演が実共演だったことを立証するような画像などを発見。更に関連記事などからも本物の共演だったということが判明し、長年の都市伝説が、文字通り伝説だったことが判明し、ひとまず留飲を下げた次第。

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 この都市伝説の最たる疑惑の対象となったのが、本編、白眉の名シーン、ダイナーで二人が差し向かいでしみじみと語るシーンだったわけです。刑事と銀行強盗のプロフェッショナルという、ポジとネガのような立場の二人ながら、結局、お互いがアウトローとして歩んできた人生観を端的な会話で示したこのシーン。マイケル・マンが、その初期からこだわり抜いてきた、アウトローたちへの挽歌というテーマが炸裂しているシーンのはずなのだが、シーンの意味や流れからしたら当然あって然るべきなのに、やっぱりカットの切り換えしばかりで二人が決して同一フレームに収まることがない。

 だが、銀行強奪シーンの後の、言わずもがなの伝説の、10分近くにも及ぶ市街での銃撃戦は、素晴らしいとしか言いようがない。本作が、マイケル・マンが過去に撮ったTVムービー「メイド・イン・LA」のセルフ・リメイクなのは有名な話だが、現在、YOUTUBEでは、その「メイド・イン・LA」のクライマックスの銀行強盗シーンの抜粋のクリップを見ることが出来る。見た人は誰もが驚くはず、シーンの組み立てから、役者の動きに至るまで、当たり前の話だが完コピといってもいいほど似ている。

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 本作でそのTVムービーを3時間にブロウアップしてみせたマイケル・マンアウトローたちへのこだわりがここにも如実に現れているともいえるのではなかろうか。

 かくして、都市伝説の疑惑も解け、ひとまず安心した本作だが、たとえば、エンディング間近の、空港でのチェイスの果て、一騎打ちの銃撃戦の後、飛行機の逆光をバックに、パチーノがデ・ニーロを仕留め、ガッチリと二人が手を握り、パチーノが仁王立ちになる男泣きの名シーン。

 ここでもやっぱり同一フレームのカットがやっぱり無く、それどころか遠目に横たわるデ・ニーロのシルエットがやっぱり何となく別人に見えるにつけ、折角、バカ高いギャラ払いながら、共演の紛れもない証跡ともなる同一フレームをマンが、どうして1カットも撮らなかったのか、疑問が湧いてくる。

 結局、「ヒート」の都市伝説が本当に解明されたのか否か?という新たな迷宮に頭を悩ませている今日この頃なのです。どなたかこのジレンマをキレイに払拭してくれる方はいませんかね~