負け犬的映画偏愛録

崖っぷちの負け犬が、負け犬的な目線で偏愛する映画のことを好き放題のたまう映画録。

負け犬の1930年代のマッドマックスに驚愕する件「駅馬車」

今更言うまでもないスタンンダードなウェスタンの名作中の名作のエンタメ度数の凄さに驚く。超絶傑作!

(評価 84点)

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プロット、構成、キャラクター、アクション、そして驚愕のスタントとカタルシス。エンタメ映画に求められるすべてのファクターの足並みが見事に揃った逸品。

 「駅馬車」と聞くと、誰もが知っているウェスタンの名作中の名作だけど、意外とその作品そのものを全編、見たという人は少ないのではなかろうか。実は、この負け犬もそうだった。なんせ1939年の作品ということで、著作権もパブリック・ドメインとなり、ワンコインDVDとしては、わんさか市場に出回っている本作だが、ワンコインの宿命か、昔、ちょっと見た時、そのあまりの画質の悪さに辟易して、早々にリタイアしてしまった経験がある。

 しかし、デジタル時代の恩恵で、YOUTUBEにアップされていたクライテリオンによるレストア版の美しい映像で、ようやく拝見がかなったという次第。そして、改めてその面白さにすっかり心酔してしまったのだ。

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 ストーリーはいたって単純、アパッチたちがいる地帯を横断することになった乗合馬車で顔を合わせた人々の人間模様と、たまたま合流することになったリンゴ・キッド(ジョン・ウェイン)と馬車の客の一人の娼婦ダラス(クレア・トレヴァー)との交流、そしてクライマックスのアパッチ襲撃、さらにエピローグのリンゴ・キッドの対決と、爽快なラストにいたるまで、とにかくシンプルでありながら、エンタメ要素が実にバランス良くコンビネーションされた巧みな構成に舌を巻いたのだった。

 とにかく、何と言ってもクライマックスのアパッチ襲撃。その昔、「ロードショー」誌に、ジョン・フォードの崇拝者として知られる、あのサヨナラおじさんの淀川長治氏が本作「駅馬車」のクライマックスのアクションこそ、すべての映画におけるアクション・シーンの元祖であり、金字塔だと書いていた記事を読んで以来、その名が長らく脳裏に刻まれていたそのアクション・シークェンス。

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 改めて見て、その見事さ、精緻さには驚愕した。製作年が何と1939年!しかし、それでいて、そのカットのスピーディな編集に、命がけのスタント。更には手をゆるめることなく、次々とアクションをひたすら貪欲にたたみ込んでいくパワフルな演出は、もはや、あの、タンクローリーに世紀末な暴走族たちがどこまでも追いすがる「マッドマック2」のクライマックスを彷彿とさせるといっても過言ではない。

 製作当時から半世紀、いや一世紀近く経とうとする現在でも、フレーム単位の編集で、テンポや迫力がマジックのように現出する映画の基礎構造は何も変わってはいないのだ、と改めて思い知った次第。

 勿論、名匠ジョン・フォードの鮮やかな手並みも際立っている。導入部からグランド・ホテル形式で、乗合馬車で顔を合わす人物たちを矢継ぎ早にテンポ良く描写。それが、ちゃんと服役に処されるはずのリンゴ・キッドと娼婦ダラスを逃がしてやる粋なはからいの、エンディングの伏線になる、というお約束の構成のこの安心感。

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 これ一作でレジェンドの名を不動にしたデュークことジョン・ウェインの雄姿をはじめ見所いっぱいの本作が何度見ても楽しめる、その根底には、この確固たる安心感の成せる業かもしれない。

 とにかく、いつ見ても絶対に楽しめる定番のエンタメがあるというのは、何かと有難いもの、しかし、それが1939年の映画というのには、驚異以外の何物でもないわけですよね~