負け犬的映画偏愛録

崖っぷちの負け犬が、負け犬的な目線で偏愛する映画のことを好き放題のたまう映画録。

負け犬が死んでも何度も生き返って強くなるのが実に愉快だった件「オール・ユー・ニードイズキル」

トム・クルーズは無限に再生する!?トム様無限再生のループが楽しい、ヘタレの負け犬にもエールを送ってくれるトム様映画

(評価 82点)

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ハリウッドのネタ帳 

 この映画に対する驚きは実は映画を見る前。桜坂洋という作家さんのライト・ノベルをハリウッドが何とあのトム・クルーズで映画化すると聞いた時。高名なベストセラーでもなく、それに加え、出版部数的にどれほどのフィールドか良くは知らないけれど、いささか読者の対象はニッチなはずのライト・ノベルを・・ということで、ハリウッドというのは、そこまで貪欲にネタ探しの情報網を拡げているのかと驚愕に近いほど驚いたのだった。

 思わず思い出したのが、あの70年代謀略サスペンスの傑作映画「コンドル」だった。あの映画では天下のCIAに、世界中から集めたミステリやその系統の出版物をコンピュータに入力し、それを軍事的、機密的な観点から謀略に使用し得るか検証する部署が存在するという設定だった。その部署に勤めるのがロバート・レッドフォードで、たまたま本部に送った情報が、CIAの本部で画策していた機密作戦とシンクロしたことから、レッドフォードが狙われるというのが本編。ひょっとしてハリウッドにも、そうやって世界中の出版物をマークし、ネタに使えるか解析しているようなセクションが在るのでは、と思わず思ってしまったのだ。

 

dogbarking.hatenablog.com

 

 それからどうやらとんとん拍子に映画の製作は進み、公開も近付く頃には、原作も購入(中古で・・作家さんゴメンなさい!)し読んでいた。原作には素直に感心した。ライト・ノベル的なアニメチックなメカへのマニアックな嗜好を押さえながらも、ちゃんと青年のボーイミーツガールの成長物語になっているところ。

 かくして本作が公開に至った時も驚いたのは、一様に評価が高かったこと。だって主演がトム・クルーズだし、ただのいつものトム様映画になっちゃって、まずは設定ありきの原作のストーリーの面白さが生かされてるはずはねえって勝手に思っちゃっていたのです。でもまあ、損はねえだろってことで見てみたら、やっぱり出来が良いのに驚いた。

トム様無限再生計画

 そして。肝心の本作だが、何より、まず驚いたのがトム様がちゃんと負け犬的キャラクターの士官として登場してきたこと。ビッグスターのトム様を、普通の青年として登場してきた原作キャラよりもさらに落差がある戯画化といえるほどの弱虫キャラ設定にしたことに好感がもてたのだ。しかし、何よりも感心したのは本作のキモの、弱虫キャラのトム様がいきなり戦闘に駆り出され、たちまち殺されたらすぐにリセットし、また戦闘にというややこしいループの映像化を。混乱させることなく実に巧みに処理していたこと。

 このシークェンスは、正直、原作者もここまで巧みに映像化されるなんて思っていなかったのではないでしょうか。ループの戦闘の最中、ケイジ(トム様)は女戦士リタ(エミリー・ブラント)と出合い、徐々に強くなる。この描き方も実に無理なく描かれていたと思う。総じて世評通りの快作でしたね。

 ただし、クライマックスは、やっぱりというべきかいささかトム様キャラになっちゃってましたが、それでもエンディングは若干ネタバレにはなりますが、ラブストーリーみたいなイカすラストでキッチリと決めてくれていた。

装着ギアはダンボール?

 でも、この映画、あの兵士たちが装着するギアのデザインのダサさだけは何とかならなかったのでしょうかね~だってどこから見ても段ボールにしか見えないもん

 この映画、続編のオールユーニードイズキル2も取沙汰はされているようだけど、止めた方がいいんでしょうね。一作目でトム様をセーブして設定の方を生かしたことで秀逸になり得た作品だけに、二作目となるとトム様どころかトムトム様になるのは目に見えてますからね~