負け犬的映画偏愛録

崖っぷちの負け犬が、負け犬的な目線で偏愛する映画のことを好き放題のたまう映画録。

負け犬おやじたちの真夏の饗宴「ダイハード3」

サイモン曰く負け犬おやじたちが駆けずり回るのを見るほど面白いものはない

(評価 80点) 

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新年早々、北風が吹きすさぶ今日この頃にぴったりな死なない奴の第三弾。何を隠そう、ダイハードシリーズ中、負け犬がもっとも気に入っているのが本作だ。ただし、全方位的な作品の完成度からいえば、勿論、第一弾なのだが。

 しかし、本作、開巻からの矢継ぎ早の展開のノン・ストップ指数でいえば、断トツではなかろうか。冒頭、何の前触れもない、いきなりの大爆破から始まって、サイモンと名乗る犯人からマクレーン要求の電話が突きつけられる。すぐさま<黒人は嫌いだ>と書かれたプラカードをクビから下げさせられた裸のマクレーンが、ブルックリンのハーレムのど真ん中に置いてきぼりにされ、それを見つけた甥っ子に言われたゼウス(サミュエル・ジャクソン)がとことこと歩いて来たところからこの映画、まるでノン・ストップ急行が走り出すかのようにプロットが展開し始める。

 このくだり、何だかあのノン・ストップ型アクションの伝説的傑作「ジャグラーニューヨーク25時」を思わせてとにかく好きなんですよね~

 通りがかったタクシーに乗り込んで何とか難を脱した二人だが、そこからはもう怒涛の展開。次々と繰り出されるサイモンからの一休さんのトンチみたいななぞなぞにいい年こいたおっさん二人が頭抱えて、あちこち駆けずりまわされて、まあ、ボロボロになってホームレスみたいになった二人がチャリをキーコキーコこぎながら走るシーンは感涙もの。さらには第二弾の爆笑シーンを彷彿とさせる、巨大な地下水道で押し寄せる大量の水の上をサーフィン代わりにトラックに乗って、スッポンと上空に吹き上げられたマクレーンをタクに乗ったゼウスが見つけるシーンのスラップスティック感覚たるや、何回見ても笑わされる。「ミッドナイトラン」もそうだけど、ピッタリ息の合ったバディものの映画って、本当に楽しいものです。

 本シリーズはとにかく原作をめぐる逸話が多いのだけど、本作も例に漏れず、最初は豪華客船が乗っ取られる話だったのが、別の映画に先を越され、全く別のオリジナル・シナリオを取り上げて脚色した。しかし、元の原案はそのまま「スピード2」になったというのは良く知られているところ。

 公開当時は1作目の監督ジョン・マクティアナンが再びメガホンを取るということで期待する声が多かった。一応、その役どころは果たしたのではないでしょうか。でも、負け犬的にマクティアナンで一番、興味があったのは、あの「プレデター」を監督する前に作った「ノーマッズ」という作品。この「ノーマッズ」を見たプロデユーサーが「プレデター」の監督に抜擢したとも言われていることから、もう見たくて仕方なかった一種幻の作品でもあったのです。

 ところが、最近、YOUTUBEでそれを見つけてしまい、早速、ワクワクしながら見たのだが・・・な・何だあ、こりゃという珍品だった。

 一応、カテゴリーはホラーになるのか・・開巻、レスリー・アン・ダウン演ずるセクシーな女医が急患で搬送されてきた考古学者のピアーズ・ブロスナンに触れたことから幻影に見舞われるようになる、その演出はさすがに良くて何がどうなるのか、と思わせはするのだが、それからはもう何が何だか分からないチンプンカンプンの極み。タイトルの”ノーマッズ”というのがあの遊牧民の放浪者なんだろうけど、作中出て来る暴走族みたいな奴らをその暴走族に見立てているみたいな、そうでないような・・とにかくラストの意味不明さには唖然とした。これは明らかに作っている本人も途中から訳が分からなくなっているあの手の映画だ。

 この「ノーマッズ」、音楽もビル・コンティと一流なのに正直ランクでいえばZ級。監督のみならず本作のオリジナル脚本も書いているジョン・マクティアナンが優秀な人材なのか、ただのあんぽんたんなのか全くもって分からなくなってしまうほどの代物でした。皆さまもどこかでお見つけの際は是非、どうぞ!