負け犬的映画偏愛録

崖っぷちの負け犬が、負け犬的な目線で偏愛する映画のことを好き放題のたまう映画録。そして、木枯し紋次郎を完全コミック化(笑)した「劇画!木枯し紋次郎」を日々、配信中!色々な動物が繰り広げる動物コミックもあわせてお楽しみください

負け犬の聖なる夜は「ダイ・ハード」

聖なる夜のクリスマス、むせび泣くのは負け犬ならぬ原作者

(評価 89点)

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クリスマスという異国のイベントが近付くと思い出すことがある。クリスマス・ケーキにそれを囲んでのアットホームなパーティだ・・な~んて負け犬に限ってンなわきゃない!ハロウィンとくれば「クロウ飛翔伝説」、クリスマスとくればいわずもがなで「ダイ・ハード」というわけで『死なない奴』の記念すべき一作目。

 この作品、リアルタイムで劇場で見たのはン十年も前のこと。当時はどの映画雑誌(特にキネマ旬報編集部)も10年に一本の映画(現にポスターの惹句もそうだった)とブチ上げ、全面バックアップしていた。

 ところが映画館たるや寂しい限り、しかし、その寂しさとは裏腹に、やっぱりその宣伝文句に微塵たりとも嘘も偽りもない一部のスキもないその出来栄えに己がハートを熱く火照らせて劇場を後にしたのを覚えている。帰り路、すっかり本作にシンパシーを感じてしまった自分は、良く出来過ぎたウェルメイドな映画は往々にして逆に当たらないものと、何故か自分の胸に言い聞かせていたことも。

 結果、本作の当時の興行収入は、やっと10億の大台に乗ったか乗らなかったのギリのラインにとどまったと記憶している。引き合いに出したくはないが『鬼滅の刃』が300憶でっせ!う~ん人生、ひいては社会というものは何と不条理に満ちていることか。しかし、作品そのものにブーたれる人などおそらくいないだろう。何処を取っても間違いなく面白い作品に違いない。今に至るこの映画にまつわるヒストリーがそれを証明している。

 だから、本作については、ここであれこれあげつらうよりも、少し違った話をしたい。

 実はその昔、何故か週刊の英字新聞をとっていた時期があった。どうやらほんのわずかなりとも英語に興味があるらしいダメ息子の姿を見て親がとってくれていたのだ。そして、その新聞に毎号、対訳付きで映画関連の記事が載っていた。今から思えば、通俗的な記事ではなく、結構レアな読み応えのあるものだった(勿論、原文の英語は一行たりとも読まずに対訳の方ばかりを読んでいたわけですが)。

 そして、ある号の記事に本作の原作者ロデリック・ソープのインタビュー記事が載っていた。わざわざ現地の本人の元を訪れ、詳細なインタビューを行ったものだった。

 本作が、若干の設定の変更はあったものの同氏の著作Nothing Lasts Forever(何だか意味深なタイトルだな・・)にほぼ忠実に作られていることは割と良く知られている。ソープは、そもそもこの原作の構想を発想した経緯をその記事の中でこう語っていた。

「ある日、『タワーリング・インフェルノ』を見に行ったんだ。そしたらその夜。悪夢を見てね。燃え盛る高層ビルの中を裸足で走り回る夢だった」

まさにこの作品のキー・イメージ。マクレーンがガラスの破片が散乱し、マシンガンの弾丸までが飛び交うフロアーを駆け抜ける、あのシーンのイメージのルーツが『タワーリング・インフェルノ』だったとは興味深い。しかし、その記事の中で最も印象に残っているのは、原作者ソープの嘆きとも取れる不満の弁だった。

 本作、日本では小ヒットに留まったが、本国アメリカは勿論、世界中でヒット、その上、フランチャイズ化されシリーズも5作を数えた。それなのに、原作者が手にしたお金は、安く買い叩かれた原作の買い切りの映画化権のお金だけだったという。ソープはその記事を「それ以外、1セントたりとも貰ってない」とさびしげに笑って締めくくっていた。

 日本でも某マンガ家さんが、大ベストセラーとなった著作の映画化の際、著作権保有する某出版社から映画化の契約料だけのン百万しか貰わなかったと暴露して物議を醸したことがあった。でも、それはある意味当たり前のことなのだ。その本の著作権の所有者は、出版社であることはどこを見ても明文化されている。映画化にあたって、映画の興行収入のロイヤリティが原作者に分配される契約なぞ、よっぽどのことでもない限り有り得ない。

 フィクションの創造主は言うまでもなく原作者、お話を考えた人。その人がいなければ語られる話も存在し得ない。しかし、それが契約の名の下にひとたび人の手にわたってしまえば、それから生み出される収益も別世界で享受されるだけなのだ。

 もうすぐクリスマスが近づいてくる。巨大なフランチャイズとなった「ダイ・ハード」とというブランドが生み出すお金は誰の懐に入って行くのやら・・。

 ジングルベルの唄声が、ロデリック・ソープがむせび泣く恨み節に聞こえなくもない今日この頃、それでもやっぱり聖なる夜は景気づけに「ダイ・ハード」で楽しみたい!