負け犬的映画偏愛録

崖っぷちの負け犬が、負け犬的な目線で偏愛する映画のことを好き放題のたまう映画録。

負け犬のアナログのタコ親父の大逆襲「ダイハード4.0」

宙を飛ぶ車がヘリを撃墜し、ジェット機の翼に飛び乗っても振り落とされねえ!デジタル・エイジも重力もオレには関係ねえ!あるのはアナログな根性のみ!

(評価 79点)

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みっちりとデジタルで作りこまれた画面狭しと、汗臭いアナログオヤジが飛び回る!負け犬の中高年男子への応援歌!

 前作「ダイハード3」から12年の歳月を経て製作された本作。その作品のプラットフォームは、ソフトウェアのバージョンを文字ったタイトルが示す通り、ズバリ、デジタルVS中高年オヤジ。

 21世紀に突入し、あれよあれよと見違えるほどに進歩したハリウッドのCG技術。そんな時代をバックボーンに、全編にCGが導入された本作だが、だからといって、そんじょそこらのCGまみれの映画とは一味違う、エンドクレジットでもその数に圧倒される、大挙動員されたスゴ腕のスタントマンの命がけのスタントと、荒唐無稽などものともしないケレン味たっぷりの見せ場が繰り出されるアナログちっくなエンターティメントになっている。

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 主役のジョン・マクレーンは言わずと知れたブルース・ウィリス。立派な中高年男子を体現すべく、のっけから娘のデートを監視しては煙たがられている。そんなマクレーンが命じられたのは、ハッカー小僧のマシュー(ジャスティン・ロング)の護送、とくれば、後のストーリーなどあってないようなもの。

 ラスボスは、全米のインフラを掌握しては、身代金代わりに巨額を要求する天才的なハッカーで、そのデジタルのプラットフォームに、お約束通り、投げ込まれた化石のようなマクレーンが、四面楚歌、四方八方の大活躍をする、ただそれだけ、誰でも描けるストーリーといえばそれまで。

 しかし、本作は、開き直ったように、その幼稚なフォームに湯水のような製作費と、実物大のスケールモデル、更には手抜き無しのCGをみっちりと作りこむことで、デジタル・エイジだからこそ映える、アナログなマクレーン像の魅力を引き出すことに成功したと言える。

 とにかく見せ場には事欠かない。最初の圧巻は、インフラを掌握した今回の悪玉トーマスの指示で封鎖されたトンネルでの逆走チェイスから、トンネルの出口で待ち構えるヘリを、爆走させた車で、撃墜するシーン。車でヘリを撃墜?普通なら有り得ないが、常識破壊を堂々とやってのけるこのケレン味に、本作の並々ならぬガッツが垣間見えて嬉しくなる。

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 本シリーズのお約束のエレベータ・シャフトも、ちゃんと出て来る。今回は、シャフトに引っ掛かり落下しかけた4WDにしがみついての悪漢のオネーチャン、マギーQとのくんずほぐれつの攻防戦だ。オネーチャンを奈落に突き落とし、溜飲を下げた矢先、全てのラインから送り込まれたガスで施設が吹き飛ばされる。しかし、マクレーンは死なない、死ぬはずなんかありはしない。なんたってダイハードなのだから。

 お約束の筋書きもどこまでも徹底していてある意味気持ちいい。どこまでも食いついてくるマクレーンの最大の弱点、娘のルーシーを人質に取って逃げるトーマスを、マクレーンは奪取した巨大トラックで追う。

 そのトラックと、トーマスによるフェイクの通信によって誘導されたF39戦闘機とのガチンコ対決の本編最大の見せ場は、荒唐無稽の極致といっていい。しかし、荒唐無稽もここまでやれば、バカを通り越して拍手喝采するしかない熱気が漂っているのもまた確か。実際に実物大の戦闘機のフルスケールモデルのみならず、戦闘機によって粉々に破壊されていくハイウェイまで実際に作ったというから、やっぱりハリウッドのエンタメにかけるバカぶりには感服するしかない。

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 マクレーンが大破したトラックから戦闘機の翼に飛び降り、觔斗雲(きんとんうん)に乗る孫悟空の如く、振り回された挙句、破片と化したハイウェイに落下する。それでも当然、マクレーンは死なない、だって決して死なないタコ親父、ダイハードその人なのだから。

 マクレーンこそは、どれだけ世間に打たれ、しわくちゃになっても、元通りに戻る汗臭いオヤジ臭ただよう形状記憶シャツ、中高年男子の希望の星なのだ!