負け犬的映画偏愛録

崖っぷちの負け犬が、負け犬的な目線で偏愛する映画のことを好き放題のたまう映画録。

野良犬の口は減らず「少年と犬」

この年になって、未見の旧作、それもカルトなジャンルの傑作に出会える喜びに勝るものはない

(評価 80点)

 

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この作品を見たのはつい最近。しかし、その存在自体は40年近くも前から知っていた。当時、愛読していたスターログ誌(懐かしいなあ・・)に日本未公開のカルト作として小さな記事で紹介されていた。これが脳みその記憶の襞にとどまったのは、いかにもジュブナイル的な少年と犬(原題もそのままA Boy and His Dog)のタイトルとまるで相反した成人コードすれすれの過激な内容との触れ込みからだった。その後も当作はソフト化の陽の目を見ることもなく。存在自体もいつしか自分の記憶の淵から消えていた。

 ところが何の因果か、ある日ポッカリとこの作品のことが頭に浮かんでしまったのだ。そういえば、あんなのあったよな・・というやつだ。検索すると何とDVDが出ているではないか。それも~フォワードとかいういかにも胡散臭そうなメーカーから。価格がワンコイン同然ということもありポチって早速見てみたのです。

 しかし・・いきなりのけぞった。作品にではない、そのとんでもない画質にだ。ソースがフィルムなんてものではない。ビデオテープ。それもダビングを何十回繰り返したのかもしれない劣悪さ。よくこんなの売り物にするなあ・・と思いつつ、見始めるや、たちまち引き込まれて魅了された。

 この作品のキモは、背景になっている第三次世界大戦放射能の余波で喋れるようになった犬と少年とのロードムービーであることだ。正確にいえば、この犬はテレパシーに近いフェーズで少年と喋るのだ。

 しかし、面白いのが、この犬が、まあ叩くこと叩くこと、その減らず口を。つまりこの犬、見てくれとは大違いでやさぐれているのです。そのやさぐれた犬と少年との掛け合いの面白いこと。

 その少年役がまだマイアミ・バイスでブレークする前のまるでジャーニーズにように初々しいドン・ジョンソンなのも可笑しい。

 これを監督したのは、L・Q・ジョーンズ。サム・ペキンパー作品の脇役として活躍した俳優でもある。Youtubeか何かでこの人のインタビュー映像を見かけたことがある。背後の壁にはこの作品のポスターが貼られていた。この作品一作だけで監督としてのキャリアを終えたオンリーワンの我が子への愛着のようなものが感じられて何だかうれしかった。

 それはともかく、この映画が不朽の伝説のカルト作となったのもその衝撃的なラストからである。まだ本作をご覧になっていない方は、ここはひとまずネタバレへの目配りはグッと我慢して頂きたい。見れば誰もが唖然とするはず、しかし、それを見たあとでそのラスト以外にこの作品のドライな終末感にピッタリなラストがあり得ないこともまた納得してもらえるはず。

 英語に抵抗ない方ならYoutubeでもフルで本編がご覧になれます(今も見れるかは分かりません)。それも市販のDVDとは比べ物にならない高画質で。(見た時はこれまた逆の意味で思わずのけぞった・・)

 いずれにせよ、最近面白い作品ないよな~、でも金かけた大作じゃないんだよ、あくまでもセンスオブワンダーだ、B級スピリッツが横溢した作品なんだよ見たいのは・・という方には是非ともお勧めの一作なのです。