負け犬的映画偏愛録

崖っぷちの負け犬が、負け犬的な目線で偏愛する映画のことを好き放題のたまう映画録。

負け犬のロケットパック「007サンダーボール作戦」

空を飛び、海を潜る八面六臂の合間にちゃっかりお姉ちゃんとしけこむやんちゃぶりはご健在

(評価 68点)

 

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冒頭のしめやかな葬式。悲しみに暮れる初老の参列者の女性。ところがボンド何を思ったか、この女性にパンチをくらわし吹っ飛ばす。カツラも一緒に吹っ飛んだのは女装のスパイ。ボンドはそいつを大格闘の末倒し、装着したのがあのジェット噴射のロケットパック。追いかけて来た手下を尻目にそのままピューンと空高く舞い上がり、着地した先には愛車のアストンマーチン。またまた手下を愛車マーチンの放水噴射で蹴散らし、タイトルバックへと。

 とまあ、いつものせわしないイントロで始まる007。その負け犬的007祭りの第6弾。本作は未だに破られていないシリーズ最高興収を誇っていることでも有名。

 前作「ゴールドフィンガー」がスーパーマン的ボンドによるマンガチックな世界だったわけだけど、今回は、さらにその舞台を海の中にまで拡げつつ、人間ボンドの活躍に程よくトリミングしたバランスの良い一作という感じでした。

 とりわけ、本作の目玉の海中での戦闘シーンは、やっぱり見応え抜群。当時の技術でのこのクォリテイの水中撮影には、今見ても舌を巻く。

 というわけで、本作もいつもながら核ミサイルが出て来る(これだけはお決まりのワンパターン)。海中に没した軍用機から奪われたこのミサイルの奪還というのが今回のボンドのミッション。

 世界を股にかけ女を股で口説くボンドだけど、今回の舞台は、ほぼその向かった先のバハマに終始する。逆にそれが良かった、いつものアクションあり、サスペンスあり、お色気あり、そして最後のスペクタクル、これが全編、トロピカルなリゾート気分で味わえるとなればそれだけでエンタメ指数も高くなるというもの。

 今回のボンドガールは日本でも一躍有名になったミス・フランスのクロディーヌ・オージェ。これ一本でスターになったオージェさんは沢田研二とも共演した日本映画にも出演されてます。このオージェさんの本作最高の見どころは、ボンドと海を歩いていて足にトゲが刺さり、砂浜でボンドが何故かオージェさんの足にブチュっと口づけして歯でそのトゲを抜き取ってやるところ。その瞬間のオージェさんの、口を半開きにしてかすかに喘ぐ表情。その顔のアップのエロさたるやもう脳天直撃のようなエロさだった。本作、一番インパクトのあるシーンが実はこのシーンだったりする(あくまでも負け犬的にだが)。

 まあ他にもバハマロケの効果が最大限に発揮された現地のお祭りジャンカヌーの最中での追っかけシーン、宿敵ラルゴ邸のサメがうじゃうじゃする水中プールでのサスペンスなどなどいわずもがなで見所いっぱい。

 そして最後のお目当ての大水中戦。今回もセットデザイナーのケン・アダムズが抜群のデザイン・センスを発揮して数々のイカすガジェットをデザインしてくれている。フロッグマンたちが捕まって泳ぐ推進ビークル。おそらくエイをイメージしてデザインしたと思われる中型ビークル。その斬新さは今見てもちっとも古びていない。

 こうしたガジェットと敵味方のフロッグマンたちが入り乱れての戦闘シーンは実に楽しい。そして最後には暴走するラルゴのボートでの格闘とお定まりの大爆発、とまあワン・パターンといっちゃあそれまでだけど、この頃には既にボンドシリーズも年に一度の恒例行事、寅さん化していたわけで、昭和の時代のお祭り気分とあいまって、中々、楽しめた次第。

 ちなみに、コネリーさん。(何だか中高年者には心強いハナシだが)いよいよ本作からガジェットならぬカツラの装着を開始したということで、冒頭、増毛した七三分けでも驚かせてくれました(さすがにカツラが武器になるシーンはなかった)。

 ところで何故かこの次回作となる「007は二度死ぬ」を第一弾として高らかに始まった負け犬的007祭り。そもそもそれが始まったのも「007は二度死ぬ」のオモチャ箱感覚にベクトルを振り切った面白さに開眼してのことだった。

 何だか第6弾で既にかなりパターン化している本シリーズ。実は未だに未体験でバージン状態なピアーズ・ブロスナンやダニエル・クレイグにジリジリ近づいていくのが楽しみなような怖いような・・・

 いずれにせよ、次はいよいよあのシリーズ中、随一の困った問題作「女王陛下の007」にレッツゴー!