負け犬的映画偏愛録

崖っぷちの負け犬が、負け犬的な目線で偏愛する映画のことを好き放題のたまう映画録。

負け犬の拾い物には福が来る一粒で二度おいしいサスペンス「LAST EMBRACE(最後の抱擁)」

ヒッチコック映画そのままの既視感とデ・パルマ映画そのままの既視感も合体したら実に乙なもの、バーゲンセールのようなお得感満載の日本未公開の上出来サスペンス!

(評価 70点)

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お宝映画発掘隊

 こと映画ハンティングに関しては、本当に幸福な時代になったもの。日本未公開のお宝的な拾い物が居ながらにして発掘出来るのだから。というわけで、毎度お馴染みYoutubeでハントした日本未公開映画の本作。

あの「羊たちの沈黙」で名高いジョナサン・デミが1979年に監督した本作は、職人監督としてTV、映画に多数その名を連ねてきたデミが、器用な多才ぶりを存分に発揮して、まるでヒッチコックデ・パルマの映画をそのまま見ている気分にさせてくれる、かなりお得気分満載のサスペンス映画だ。

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ヒッチコックデ・パルマの絶妙なブレンド

 本作の主演はロイ・シャイダー。70年代末といえばパニックからアクション、サスペンスまで八面六臂で活躍していた時代。本作でロイ・シャイダーが演じるのはハリーという諜報機関員。

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 冒頭、いきなり乱射事件に遭遇し、妻を失ったハリーが、その後、出会ったエリーという女性と深い関係になるうち、ユダヤの慣習にまつわる連続殺人に自分が巻き込まれていることを悟るという本作は、そのテイストからビジュアルまでヒッチコックそのまま。しかし、決して物真似に成り下がることなく、ヒッチコックファンも、更には負け犬のようなデ・パルマの大ファンまで楽しませてくれる、その巧みな作りには感心することしきり。

 これは、見ている間中、このシーンはあの「めまい」のシーン、これはデ・パルマの「愛のメモリー」のあのシーンと頭の中で次々とリフレインされるのが心地よかったりするちょっと新鮮な感覚だった。

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 その上、クライマックスはこれまたヒッチコックの「めまい」や「北北西に進路を取れ」といった作品群をそのまま見ているかのようなナイアガラの滝で、名所観光気分も味わえるオマケ付きとくれば。もう文句はない。

 足早に展開するプロットをあれよあれよと見ていくうちに、たちまち時間が過ぎていく本作。見終わって思ったのは、これが日本未公開とは何と勿体ないことよ、だった。でも、そんな作品と、Youtubeで、それもタダで鑑賞できるのだから、つくづく有難いものだと、ここはひとまず深々とネット社会の恩恵に感謝というべきなのでしょうね~