負け犬的映画偏愛録

崖っぷちの負け犬が、負け犬的な目線で偏愛する映画のことを好き放題のたまう映画録。

負け犬の親子で落ちるロンドン橋「キャット・アンド・マウス」

70年代TVムービーの隠れた傑作!お宝映画発掘隊が発掘した良作には新たな発見も、それはカーク・ダグラスマイケル・ダグラスの意外な接点だった

(評価 68点)

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ビバ!セブンティーズTVムービー

 「キャット・アンド・マウス」?何それ?そんな映画あったっけ?それもそのはず本作は、本国米国でしかオンエアされていない貴重なTVムービー。そして、70年代に山のように量産されたTVムービーのハイクォリティをそのまま証明するかのような傑作TVムービーだ。

 主演はカーク・ダグラス。あのマイケル・ダグラスのお父さんといった方が、分かりやすいか。本作は、そのカーク・ダグラスが社会のシステムから見放されたドン底の落伍者ジョージに扮し、完全に社会から排斥された疎外感から一線を踏み越えていく一人の男を演じたサスペンスの隠れた傑作なのだ。

 

悲しきジョーカー

 元、高校教師のジョージ(カーク・ダグラス)は、学校では生徒たちからマウスィ(ネズ公)とニックネーム呼ばわりされ言い返すこともしなかった卑屈な小心者の男。妻のローラ(ジーン・セバーグ)とも離縁され、今はカナダにいて、新しく見つけた恋人との結婚を間近に控えたローラと、今も愛着捨てがたいローラの連れ子の息子に執着し続けている。

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 ある日、持ち家と私財全てを売り払ったジョージは、カナダにいるローラの元へと旅立つ。しかし、ジョージを拒絶するローラに対し、ストーカーまがいの行為を繰り返すうち、ジョージはいよいよ一線を越えてしまい・・。

 社会の落伍者に完全に成り下がった一人の男が一線を踏み越え、社会に復讐する。今で言えばジョーカーといったところだが、あちらは所詮、コミックブックのキャラクターでしかなかったのに対し、こちらのジョージの現実的な造型には、言いようのないリアリティがある。そのジョージがただ妻のもとへと向かっていくという、単純な構造の中で、異様なテンションが高まっていくカーク・ダグラスの絶妙なキャラクター造型の妙が秀逸だ。

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 加えて、舞台となるカナダでのオールロケーションによる効果、更にはやはりあのカナダ産ホラーとしても有名な「暗闇にベルが鳴る」にも使われたカナダの都市伝説を、クライマックスに巧みに取り入れて、真っ暗闇での、ジョージとローラとの、ヒッチコック顔負けの、決死のかくれんぼのサスペンス演出にも感嘆することしきり。ひとえに70年代TVムービーのクォリティの高さを改めて思い知らされた次第。

 

フォーリングダウンとの共通項

 落ちこぼれた一人の中年男が、元妻の元へとトボトボと向かう。そして、その道中で、一線を踏み越えた男が社会の脅威になっていく。このプロット、どこかで聞いたことがないでしょうか?

 そう、本作カーク・ダグラスの息子マイケル・ダグラスの代表作と言ってもいい、ハイパーテンション・ムービーの傑作「フォーリングダウン」。本作を見ていて、気付いたのがその事。そして、みているうちに、それはまさに確信に変わった。

 ロンドン橋、フォーリングダウン~♪ 劇中でロバート・デュバル扮する刑事のブレンダガストが口ずさむ唱が印象的なくだんの「フォーリングダウン」。何よりもキャラクターのルックスがそっくりそのまま。どこから見ても実直なサラリーマン、そして顔には、いかにもダサい黒ブチメガネ。それどころか、後半にいたっては、そのメガネにヒビが入り、そのメガネをそのままかけて行動しているところまで、本作におけるジョージは「フォーリングダウン」でマイケル・ダグラスが演じたディフェンスにそっくりなのだ。

 おそらくマイケル・ダグラスは「フォーリングダウン」でのディフェンスの役作りに、父親の本作のジョージのキャラクターをそっくりコピーしたに違いない。

 親子ゆえ、顔も形も設定も何から何までそっくりで、そのままそっくりコピーしたかのようなキャラクター。なにか親子の因縁すらも感じさせてくれるTVムービーの良作でした~

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上は本作のジョージに扮したカーク・ダグラス。下が「フォーリングダウン」の息子のマイケル・ダグラス。あまりにも良く似ていませんか?

 

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