負け犬的映画偏愛録

崖っぷちの負け犬が、負け犬的な目線で偏愛する映画のことを好き放題のたまう映画録。

負け犬の空飛ぶカメは夢を見ない「ガメラ大怪獣空中決戦」

見たいものを過不足なく見せてくれる良作怪獣映画のお手本はカメもジェット噴射ですっ飛ぶ面白さだった

(評価 76点)

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激烈礼賛!良作怪獣映画

 本作公開当時のキネマ旬報紙上に載った映画評が、どれもこれも熱狂的な礼賛ぶりだったのは今でも覚えている。曰く、その面白さを称して「インディ・ジョーンズを超えた!」との評まで飛び出す激賛ぶりだった。而して、本作は怪獣映画史上初めてリベラルとして名高かったキネマ旬報ベストテンにもランクインした。

 ところが、それだけのネームヴァリューの本作をそれ以来、何故か見ることもなく。公開から二十数年もの時を経てようやく見たという次第。レジェンダリーのモンスターヴァースによって新たに蘇ったゴジラというキャラクター、そして、怪獣がすっかり巨大なフランチャイズと化し隅々まで浸透したこの令和の時代。そうして、ようやく対面かなった映画は、なるほど、評価に会い違わぬ面白さだった。

 

怪獣映画の理想のサンプリング

 本作成功のカギは、一種のマーケティングにおけるサンプリングと言ってもいいほどの綿密な構成にあるような気がする。それほどまでに本作は受け手が怪獣映画に求めるファクターをランニングタイムの95分の尺の中に、パズルのピースのように過不足なくすっぽりとはめ込んでいる。やはり、その第一の功績は伊藤和典の綿密な脚本にある。

 まず特筆すべきは、ガメラそのものではなく、仇敵にあたるギャオスを最初に出すことで、ガメラ自体のヴイランとしてのヒール的な凶悪な側面も保ちつつ、人類にとって災厄となっている天敵ギャオスを駆逐するヒーロー的な役割をも自然と担う作劇構成。この構成は、そのまま数十年後に華々しく蘇ったギャレス・エドワーズ版の「ゴジラGODZILLA」にそのまま受け継がれている。また、浅黄(藤谷文子)という女子高生が、手にした勾玉によってガメラと心を通わすという、一見、お子様映画になりがちな設定が、最後の激闘の果ての決着のカタルシスに上手く活用されているところも見所。

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 そして、誰もが称賛するビジュアルもまた見事。制約された予算を逆手にとって、実景の中にスーツアクターを据えることで、それまでの怪獣映画にはなかった新鮮なルックスを生み出している他、日本のお家芸とでもいうべき、そのミニチュア・ワークの精密さには舌を巻く。

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空飛ぶカメのカタルシス

 インディを超えたのかというのは、ともかく、総じて、本作は冒頭からテンポが実に良いことは確か。それに自衛隊全面協力による、陸自、海自、空自総動員の実機がふんだんに見ることが出来て、そのリアリティが作品に厚みを与えているのは、後の「トランスフォーマー」にも少なからず影響を与えたのではないでしょうか。

 いずれにせよお墨付きに偽りなし、とにかくのろまなはずのカメがジェット噴射で空高く飛び上がるカタルシスが堪能できる作品には間違いないですよね~