負け犬的映画偏愛録

崖っぷちの負け犬が、負け犬的な目線で偏愛する映画のことを好き放題のたまう映画録。また、日々のトピックや時事問題に関する雑感を、生き物たちが繰り広げる動物コミックのスタイルでご紹介!どうぞお楽しみください

負け犬のR15のリブートがハンパなくダテではなかった件「ヘルボーイ」

嬉しい誤算に歓喜!リブートはニッチに限るということを改めて実感した良作!

(評価 76点)

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R15のヒーロー・シリーズの誕生が夢に終わった残念作。しかし、負け犬的には全然、問題ない応援作!

 パチパチパチパチ!いきなりの拍手をしてしまう。だって、世の中には嬉しい誤算というものがあるもので、悪い評判しか伝え聞いていなかった作品が、良作だった喜びもまた映画フリークの嬉しい誤算の一つなのだ。実際、本作、鳴り物入りで公開されたが、興行的にも大失敗。IMDBのレビューでも酷評の嵐で、肯定的なレビューすらただの一つもなく、鑑賞開始早々のリタイアを半ば承知で見始めた。ところが、まずはその最初の感触がとてもいい。でも、出だしだけだろう、と高をくくっていたら、その感触が持続し、結局、最後まで見終えて、ゼンゼン良いよね!これとなって歓喜していた。

 良かった理由は明確。デル・トロ版のヘルボーイに感じた不満を、このリブートでは見事に払拭してくれていたから。そもそもこの負け犬は、マイク・ミニョーラ自身がアートを手掛けたヘルボーイは全巻持っている。そして、今もそれを事あるごとに見ては、その素晴らしさにため息をついているほどのヘルボーイ、いやマイク・ミニョーラのマニアといっていい。マイク・ミニョーラの絵の魅力とは、研ぎ澄まされた様式美。ハイコントラストなその描線に、全てのムダがそぎ落とされた、そのタッチ。まさに官能的ですらあるシンプルなミニョーラ独自の天才的なそのタッチは、アニメにしようが、全編CGにしようが絶対に再現は不可能。それはまさにカリスマ的なレベルといっていい。

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 だから、そんなミニョーラ・マニアとしては、デル・トロ版の「ヘルボーイ」の第一作を初めて劇場でワクワクしながら見た時の失望はあまりにも大きかった。正直言って、ただの生温い着ぐるみ劇場にしか思えなかった。しかし、確かに2作目のゴールデンアーミーは、デル・トロの世界観に振り切って、はっきり言って、映画の完成度やポテンシャルはこのリブート版などよりも遥かに高い作品にはなっていた。それでも、ヘルボーイがただのデル・トロのクリーチャー世界のマスコットに過ぎないような不満は拭えなかった。何よりもデル・トロ版のヘルボーイには、ミニョーラの絵のタッチの片鱗など微塵もなかった。

 しかし、このリブート版では、絶対に再現不可能なミニョーラのタッチの片鱗をニッチな手法で覗かせてみせてくれたから驚いたのだ。その手法こそ、R15の指定を見事に受けてしまうほどの描写の過激さだ。

 現に、本作、グロい部分は、あくまでもグロく、クリーチャーなどは、目を背けたくなるほどのグロさに徹している。この過激さは、一般向けに作られたデル・トロ版ではあえて避けていたところ。しかし、本作ではそんなことお構いなしに、グロテスクのバロメーターをR15のリミットを破らんばかりに過激なほど振りまくる。

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 イントロのアーサー王伝説を交えたブラッドクィーンの誕生シーンから、グロテスクな巨人ゴーレムとのバトル。そして切り刻まれたブラッドクィーンが、ボディパーツを縫い合わされて蘇生するグロさも極まりないシーン。さらにはこれまたグロテスクなロシアの魔女ババヤーガの登場と、グロテスクなシーンやキャラクターを挙げればきりがない。

 しかし、そこまでベクトルを振りきることで、本作は、見事にマイク・ミニョーラの研ぎ澄まされたエッジの効いたソリッド感をスクリーンに再現することに成功している。これは一つの発想の転換といっていい。

 ストーリーそのものはヒーロー物の常套で、有って無いようなもの。かつて葬り去られた血の女王ブラッドクィーン(ミラ・ジョヴォビッチ)が現代に蘇りヘルボーイがそれを阻止するという一言で終わってしまうだけのもの。しかし、本作には至る所で原作に対する心憎い目配りが効いている。

 原作の「CONQUEROR WORM」に出て来た架空のパルプヒーロー、ロブスターがここにはちゃんと出て来る。そして赤ちゃんに取り付いた悪魔を祓う馬の蹄鉄といった些細なディテールも。こういう原作に対する細かな目配りは、プロダクションデザイナーとして全面的に参画もしていたはずのデル・トロ版のヘルボーイには微塵も無かった。

 そして何よりも着ぐるみ感が全開だったデル・トロ版のロン・パールマンヘルボーイと比べ、本作のデヴィッド・ハーバーのヘルボーイに着ぐるみ感が全く無く、実にナチュラルにヘルボーイしているところ、それにルックスも至る所でミニョーラヘルボーイ全開なのが実に良い。

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 しかし、考えてみればどれもこれもあくまでも、この負け犬のようなマイク・ミニョーラのファンだけが喜ぶファクターであって、実際、見ている間中、思っていたのはここまでベクトルを振り切っちゃったら一般観客の嗜好とは、かけ離れてしまっているよな、ということ。それもそのはず、一般観客からはそっぽを向かれ、結局、興行的大失敗という目にも明らかな結果にはなってしまった。

 思えばニッチなベクトルに振り切って作品的にはツボにはまって大正解だったのに、興行面で大敗して消え去ったリブートは他にもあった。たとえばリブート版の「ジャッジ・ドレッド」。これも原作のキャラクターにベクトルを振り切って、負け犬的には無茶苦茶に好きな作品なのに一本きりの短命に終わってしまった。

 初めてといっていいはずのR15指定のヒーロー・シリーズの誕生が夢と消え、監督のニール・マーシャルの監督生命すら危ぶまれる結果となった本作。だからこそ、こうして今も原作のヘルボーイのページをめくりつつ、この負け犬だけでも本作をリピート鑑賞して応援するのだ!とはいえ、これもあくまでもニッチな独りよがりの悦楽に過ぎないのですけどね~