負け犬的映画偏愛録

崖っぷちの負け犬が、負け犬的な目線で偏愛する映画のことを好き放題のたまう映画録。

負け犬も悩むジェネレーション・ギャップ「メカニック」

70年代アクションの名作として名高い本作。しかし、それは親父衆がジェネレーション・ギャップに悩むだけの凡作だった

(評価 50点)

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後にジェイソン・ステイサムでリメイクすらも作られた本作は、予想外の凡作だった。

 かのIMDB上で、70年代を代表するブロンソンの殺し屋アクションのトップとのレビューも躍る本作は、こんな調子で始まる。

 いきなり画面の下方からヌっと顔を出すブロンソンのアップ。ブロンソン扮する殺し屋のビショップは、そのまま安ホテルの一室へと。そこでカバンから取り出したのは、天体望遠鏡並みのバカデカい望遠レンズ(一見した時は、てっきりミシンかと思いました)。早速、それをキャメラに装着し、照準を合わせたのは、向かいの、ターゲトが住むと思われるホテルの一室。部屋の内部をひとしきりキャメラに収めるとビショップことブロンソンは、殺しの計画の糸口をつかんだとばかりにニヤリと笑う。

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 翌日。ビショップは、前日、撮影していたそのターゲットが住む部屋に忍び込み、ガスレンジに細工を仕掛けるや、部屋を後にして男が帰宅するのを向かいの部屋でじっと待っている。やがて帰宅した男は、ビショップの狙い通りベッドで寝てしまい、ビショップがガスレンジに仕掛けた細工によって部屋にガスが充満。そこでビショップはおもむろにアサルトナイフを取り出し、前日、起爆剤を塗りこんだ一冊の本に向って弾丸を放つ。同時に起る大爆発でターゲットも粉々に。

 このシーンを見ている正常な頭脳を持っている観客なら誰もが思うはず。そんなに手の込んだことしなくても、最初からライフルで撃っちゃえばいいんじゃね・・?

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 長々とオープニングのイントロダクションしてしまったが、本作は、誰もが予想がつく凡庸なエンディングに至るまで、こんなトンマな空気に万事が万事満ちている。

 次にビショップに下された指令が恩師ともいうべきハリー(キーナン・ウィン)の暗殺で、それを遂行したことからハリーの息子のスティーヴ(ジャン・マイケル・ヴィンセント)に殺しの手ほどきをすることになる。

 殺しのプロがアマチュアを育成する映画は、「レオン」をはじめ、アクション映画ファンならずとも、心躍らせるものがある。本作も、中盤以降は、俄然、70年代アクションの空気感満載の快作になりはするが、如何せん、それまでが少々、かったるいのは否めない。

 ビショップのレクチャーの甲斐も合って腕をメキメキと上げたスティーヴは、オイディプス・コンプレックスよろしく父親代わりのビショップに対抗心を燃やし始め、そしてビショップがスティーヴの引き出しから見つけたのは、ビショップがターゲットにされた殺しの指令書だった。

 どうやら、スティーヴが自分を狙っているらしい。そのことにアーサーは気付きながらも、次のターゲットの暗殺に向け、共同して計画を進めて行く二人の殺し屋。

 師匠と弟子の関係にある殺し屋が絆を深めるパターンと違い、70年代のオフビート感そのままに、本作での師匠と弟子の関係は疑心暗鬼の確執を深めつつ進行していく。

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 ダイビングスーツに身を包み、船上にいる大物を狙う二人。暗殺に成功し、今度は陸路を二人して車で逃げる。追撃する敵を撃退し、二人でミッションの成功を祝いワインのグラスを交わすが・・。

 この腹の探り合いの末路は、ブロンソンの貫禄からすると、容易に予想がつく。クライマックスのマフィアの大物を狙うミッションから、カーチェイスに銃撃戦、果てはブルドーザーで相手を撃破するその雄姿は、ブロンソンならではのビジュアルで見せてくれる。ブロンソン映画に、付き合いで必ず出て来るブロンソンの愛妻のジル・アイアランドもご愛敬。

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 70年代特有のザラついた質感に、マンダムのブロンソンと、フレッシュな魅力のジャン・マイケル・ヴィンセントの共演も一応は楽しめる。しかし、殺し屋をあえてパロディ仕立にした導入部が、ようやく生きて来るのも映画の後半に差し掛かってからというのでは、さすがに70年代テイストとはいえ、スロー・スターター過ぎるのが難点か。

 どうせ、ジェネレーション・ギャップに悩むなら、中途半端ではなく、とことん悩んで、吹っ切れて欲しかったところですよね~