負け犬的映画偏愛録

崖っぷちの負け犬が、負け犬的な目線で偏愛する映画のことを好き放題のたまう映画録。

負け犬とエロい熟女の殺戮劇場「丑三つの村」

草むらに捨てられたエロ本の猥褻な写真にたぎらせた野卑でゲスな欲望が、猟銃から放たれた銃弾とともに全方位に暴発する、世にも危険なエログロ・バイオレンスの問題作。(評価 68点)

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にっぽんの熟女イメージのシンボル、五月みどりがエロ度全開に見せまくる。実録エログロ・ドラマのカルト作。

 まだAVすらなかった時代、いたいけな青少年の股間をたぎらせたものといえば、本屋の片隅にひっそりと置かれたエロ本と、これまた映画雑誌の片隅に小さく載ったエロい映画の広告だった。なんせいたいけな青少年だ、本屋で堂々とエロ本を立ち読みするなど言語道断、とくればあとは映画雑誌のちっぽけな広告をかじりつくように見るしかない。

 というわけで、当時、洋モノのパツキンのオネーちゃんたちや、総天然色のピンク色の肌をしたオネーチャンたちが乱舞する『日活ロマンポルノ』の女優たちが束になってもかなわないほどの圧倒的なフェロモンを振りまいていたのが「かまきり夫人」こと五月みどりだった。嗚呼、熟女の代表選手のような”五月みどり”を心ゆくまで堪能してみたい。くだんの「かまきり夫人」をはじめとする控え目だが、エロ度抜群のみどりネーサン主演の映画群の写真を記憶に焼き付かせ早や幾年月、ようやくこの年になって、その思いのたけを存分に成就することができたのが、あの「八つ墓村」のモデルにもなった実際の事件を描く猟奇実録モノたる本作だった。

 『津山三十人殺し』として知られる本作のモデルとなった事件が起きたのは、日本が急速に戦時国家に傾倒していた頃の1938年。岡山県のとある山間の集落で、入営不適切として兵隊に徴用されなかった一人の青年が、同村落の村人30人を、猟銃や日本刀で片っ端から殺害した日本の犯罪史上にも刻印のように刻まれる凄惨な事件だった。

 実録物といえば、決して抜きには語れない超傑作に、カポーティのノン・フィクションを映画化した「冷血」があった。「冷血」では、原作の構成の時系列を大胆に改変し、見事にその衝撃度を高めることに成功していたが、本作では、犯行前夜ともいうべき村落での青年の日常生活から、犯人の青年が犯行を準備し、殺戮を決行し、実際の事件通りに自害して果てるまでをほぼ時系列に、なぞるようにして描いている。尚、本作は1983年に松竹より一旦リリースされたが、そのエロ度とグロ度がえげつなさ過ぎるとして、半ば、発禁同然に封印された禁断の作品だ。

 主演を演ずるのが、後年、実生活でも自殺した古尾谷雅人とあって、いよいよその禍々しさも増す本作。実在の犯人の名前も、都井睦夫から犬丸継男という役名に改変された古尾谷雅人が、日活ロマンポルノ出身の田中登監督のもと繰り広げたエロとグロのドキュドラマとは如何なるものだったのか。

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 そんな本作は、村民たちの万歳三唱と共に、華々しく出生する赤木(ビートきよし)を悩まし気に見つめる継男(古尾谷雅人)の姿から幕を開ける。祖母のはんと暮らし、村一番の秀才として村民たちから将来を嘱望されている継男だが、その最たる願望は、自分も出征し、お国のために兵隊としての使命を全うすることだった。

 この事件に欠かすことができないファクターとして、日本の孤立した村落で古くから行われて来た”夜這い”という風習がある。夫が出征し、その妻たちが寂しさをもてあます村では、若い男に体を開く土壌が容易にあった。継男も、村で夜這いが行なわれているのを知りつつ、悶々としながら深夜まで勉強に励む毎日だった。

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 女優陣が惜しげもなく悩ましい肢体をさらす本作の先陣を切るのが、えり子役の池波志乃。えり子が夜這いする村人の一人と交わっているのを見た継男は、それを見たさにえり子の家を覗こうとした矢先、一人で寝ていたえり子に見咎められる。たわわなおっぱいも露わに、えり子に手淫された継男が、筆おろしされたのが、継男の家に借金しに、度々、訪れていたミオコ(五月みどり)だった。

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 借金を届けに行った継男が見たのは、寝かしつける子供に乳を与え、乳首から垂れる白濁した乳を拭いもせずに現れたミオコだった。騎乗位で果てるミオコと共に、ここで継男は初めて男になる。

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 それからは、入れ替わり立ち代わり、どの女も継男に気安く体を開き、まんざらでもない生活が続いていた。しかし、そうした状況が一変する事態が起きる。揚々として受けにいった徴兵検査の日、継男は肺結核と診断され、徴兵を却下されてしまう。その日以来、村人たちは手の平を返したように、あからさまに顔までそむけ継男を避けるようになり、継男と情交を交わしていた女たちまでが継男を拒絶するようになる。このくだりは、昨今のコロナ過の、差別まがいのバッシングすら想起させて痛ましい。

 更に唯一、継男を拒絶しなかった幼馴染のやすよ(田中美佐子)から嫁に行くと告げられ、他人との糸がすっかり絶たれた継男の憎悪の矛先は村人へと向かい始める。

 これを境に人が変わったようになった継男は、銃砲店で大量の銃を買い求め、山の中で試し打ちしては日々を過ごすようになる。ドキュドラマっぽく、ここからのディティールも本作は実際の事件に忠実に描いている。

 祖母を不憫に思った継男は、祖母の毒殺を図るが失敗、警察に一旦は、銃器を没収される。しかし、いよいよ孤立を深めた継男は、再び猟銃を買い求め、やすよに自分だけの戦場に赴くとの手紙をしたため遂に、村人たちへの復讐を決行する。

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 詰襟のガクランに、軍用ゲートルを脚に巻き、80年代の日本映画独特のテクノっぽいサウンドとともに装備する継男を捉えるシーンの後、およそ10数分にわたって繰り広げられるクライマックスの殺戮シーンは、むごたらしく、凄惨そのもの。

 総じて本作は、日活出身らしい田中登監督ならではのエロ・シーンや殺戮シーンを覗けば、いたって実直そのもの、ある意味、教育映画的な懇切丁寧な作りとでもいえようか。しかし、ラストの殺戮を終えた継男とやすよの涙の別れのシーンなど、陰惨きわまりないテーマに相反し、まるで青春映画のようなテイストがあるなど、少しネジがはずれたところもあり、80年代に気を吐いていたプロデューサーの奧山和由が、女優陣のエロを看板に掲げつつ実録路線で当てようとしたその的を外してしまった作品でもある。

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 何はともあれ、その女優陣、やはりお目当ての五月みどりがピカ一でした。小ぶりな乳房に純白の肌。そんな熟女のフェロモン全開の五月みどりが、童貞の継男を誘い、騎乗位になって悶え、継男の指までねっとり咥えて舐めるその姿。そして継男と指を絡め合って遂にイキ果てるその姿。積年の思いを果すに十分なその姿、しっかりとこの目に焼き付かせて溜飲を下げたのでした。いやあ~良かった