負け犬的映画偏愛録

崖っぷちの負け犬が、負け犬的な目線で偏愛する映画のことを好き放題のたまう映画録。

負け犬も泣いた地獄少年と半魚人のデュエット「ヘルボーイ2/ゴールデン・アーミー」

着ぐるみのクリーチャーがバリー・マニロウのポップスをデュエットで歌う!デル・トロのセンスに心から涙した

(評価 80点) 

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1作目がダメダメなのに、2作目が超傑作という、映画セオリーの常識を覆すようなスタンドプレイをやってのけることはきわめて至難の技。その技を何と本作はやってのけた。

 1作目が超凡作で、まるで期待もしなかった本作。結構、イケるというレビューをたまたま見かけ、退屈しのぎ程度のつもりで見始めた。

 イントロで、オカルトの権威ブルッテンホルム教授(ジョン・ハート)が、子供?のヘルボーイに語りだす、遠い昔、あるところに王様が・・・。この童話タッチがちょっと意外で少し身を乗り出した。やがてその童話の中の王子と王女の片割れの王子のヌアダ(ルーク・ゴス)が、現代の地下鉄に現れ、童話と現代がリンクし、本編が始まる。

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 イントロのタッチにオヤっと思いながらも、まだまだ半信半疑だった負け犬が、思わず身を乗り出したのが、現代の通りのすぐ裏側にクリーチャーたちが住む異世界があって、というくだり。

 その世界観があらわになると、すっかりデル・トロの意図が呑み込めて、完全に没入していた。そう、デル・トロがヘルボーイというキャラクターに手を染めたのもまさにこれがやりたかったからなのだ。一作目はただのドレス・リハーサルに過ぎなかったことが初めて分かった次第

 コミックをなぞっていただけの1作目とは打って変わって、ここにはデル・トロ独自の世界観が盛り込まれ、大きく羽を広げている。更には、明らかにあの有名なデル・トロ自身のノートから生み出されたと思われるイマジネーション豊かなクリーチャーたちも溢れている。

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 そして、今や「シェイプ・オブ・ウォーター」でその存在を確固たるものにしたような、デル・トロのトレードマークといってもいい半魚人のエイブが王女のヌアラにすっかり心を奪われ、それを気遣ったヘルボーイと一緒にラジカセの音楽に合わせデュエットを歌い始めた時、体内にちょっとした電流が走った。

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 その曲こそ何とあのバリー・マニロウのポップスの名曲「Can‘t smile without You」!

 いったい、着ぐるみのクリーチャーが「Can‘t smile without You」をデュエットで歌う、なんてシーンをどういう感性で思いつくのだ!感激のあまり、最後には一緒にデュエットで歌っていた!

 ここから、冒頭のおとぎ話のテイストが見事に生きてくる。ヌアダが放った呪いの槍の切っ先が、ヘルボーイの胸に刺さる。その呪いを解くには、ゴールデン・アーミーたちが眠る古代都市の死の天使に会わねばならない。

 しかし、その頃、ヘルボーイの最愛のリズのお腹には、新たな命が宿っていた。リズそれに相棒のエイブ、新たな仲間、ヨハンたちはヘルボーイの命を救うため、そして、ゴールデン・アーミーを復活させこの世を滅ぼさんとするヌアダの野望を砕くため、神話の地、アイルランドへと飛ぶ。

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 以降の展開は言うに及ばずでしょう。クライマックスには復活したゴールデン・アーミーの軍団とヘルボーイの一大バトルがちゃんと用意されている。

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 一件落着し、リズの洒落たセリフのエンディングの後に再び「Can‘t smile without You」が流れ出した時は、さすがデル・トロと喝采をあげていた。

 ここにはデル・トロが本当に描きたかった、フリークス、異形のものたちの哀しみやペーソスが確かに感じられる。デル・トロと、原作者にして盟友のミニョーラが二人で描き上げた脚本を得て、ヘルボーイは新たな世界観を獲得したとも言える・

 もっともデル・トロ・テイストが濃厚な本作だが。ただひとつ残念なのが、おそらくそれ故に大ヒットには至らなかったこと。そのせいでデル・トロが心血を注いでいたこのクリーチャーたちのフリークスの饗宴3部作の最終章「ヘルボーイ3」の企画が消滅したこと。

 おそらくデル・トロには、この「ヘルボーイ2」で描いたクリーチャーたちの世界観を最高潮にまで高めたアイデアがあったはず。そして、そのアイデアを最終章にブチ込むはずだったのに違いないのだ。

 今やそれが見れなくなったのがとにかく残念無念。いつかNETFLIXが資金を出して作ってくれないもんでしょうかね~