負け犬的映画偏愛録

崖っぷちの負け犬が、負け犬的な目線で偏愛する映画のことを好き放題のたまう映画録。

負け犬の地獄のドレスリハーサル「ヘルボーイ」

いくら好きなデル・トロにヘルボーイとはいえ、一本丸ごとドレスリハーサルというのは、ちとツライ。やはり本番が見たかった。

(評価 60点)

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デル・トロも天才と呼んではばからないマイク・ミニョーラが描くヘルボーイ。実は自分も早い時期からヘルボーイのアートに魅了され、全て揃えるほどだった。それをデル・トロ自身が手掛け映画にする、となれば、当然、期待に胸を膨らませて見に行ったものでした。

 マイク・ミニョーラヘルボーイ。これは何故か日本でも早い時期から翻訳版が出版されていた。たまたま本屋で見つけ、試しに買ってみたら、超絶的なまでにスタイリッシュなそのマイク・ミニョーラのアートにたちまち魅了された。

 マイク・ミニョーラのアートの魅力とは、とにかく、すべてのムダがそぎ落とされ、ハイコントラストのその影の落ち方のレイアウトまでが計算しつくされたシンプルさにある。この研ぎ澄まされたスタイリッシュなシンプルさには、間違いなく中毒的なカリスマ性があって、一度見たら最後、病みつきになってしまう魅力があるのだ。その証拠に、マイク・ミニョーラ自身がアートまで手掛けたヘルボーイはたまらず全巻、買ってしまったほど(ただし、全巻といってもたったの5冊しかない。最近、はもっぱらストーリーのみに専念し、残念なことにアートは他人に任せるようになってしまった)。それは、まるでその一冊、一冊がまるでアートブック。今でも家宝のように、そのページをめくりながら感嘆しつつ、舐めるようにして眺めている。

 そして、ギレルモ・デル・トロもまた、ミニョーラ中毒者の一人。デル・トロはヘルボーイシリーズの中の一冊「Conquer of the worm」に序文も寄せている。その序文の中でデル・トロは、自身のハリウッドデビュー作となる「ミミック」の撮影現場でヘルボーイを読みふけっていたと明かしている。それからしばらくして、ヘルボーイの映画化が決まった時には、自分が今まで作ってきた映画は全てヘルボーイを作るためのドレスリハーサルだったとまで豪語した。

 そうまで言われれば、こちらの期待度も120%にまで跳ね上がる。かくして、本国でも大ヒットした本作を期待満々で見に行ったのだが・・。

 ヘルボーイの誕生を描く「Seed of Destruction」を基にする本作。ナチのオカルチックな実験の際にたまたま生まれることになったヘルボーイベイビーが画面に出てきた時に、嫌な予感が走る。そして、特殊メイク丸出しのヘルボーイが登場した途端、一気に気分が萎えた。

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 それからも次々出てくる着ぐるみ全開のクリーチャーたち。はっきり言って、それはもうヘルボーイでも何でもなかった。それは、もうデル・トロのクリーチャーショーでしかなかった。

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 映画のストーリーもまたコミックの「Seed of Destruction」にほぼ忠実に沿って進む。しかし、そもそも原作のヘルボーイは、確かにアートは超絶的に素晴らしい。だが、ストーリー自体は、はっきり言って特に目立って面白いものでも何でもない。あくまでも素晴らしいのは、静止したミニョーラによるカットが絶妙にレイアウトされたそのビジュアルにある。

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 だから、ただクリーチャーを登場させ、CGで動かし、そのストーリーをまともに語るだけでは、たとえデル・トロとはいえど、何かのプラスアルファを加え、新たな世界観を作らない限り面白いものなどになり得ない。

 かくして、完璧なまでに落胆したまま帰路に着き、本作はそのまま封印していた。だが、一応、本作は及第点レベルにヒット。後年、「ヘルボーイ2」がデル・トロによって再び作られる。この時は、劇場は当然スルーする。しかし、一応、見ておこうかな・・と軽い気持ちでレンタルで何も期待もせずに見たのだった。ところが・・。

 これがトンデモナイ大傑作で、その時、ようやく気付いたのだ。結局、この第一作そのものが「ヘルボーイ2」を作るためのドレスリハーサルでしかなかったことを!

 その曰くの「ヘルボーイ2」については、またの機会に・・

 しかし、丸ごと一作ドレスリハーサルに付き合わされるのはツライものですね~