負け犬的映画偏愛録

崖っぷちの負け犬が負け犬的な目線で偏愛する映画のことを好き放題のたまう崖っぷちの映画録。また、たまに<映画をエンジョイ英語もエンジョイ>と題して、映画の実際のスクリプトを原文と翻訳でご紹介。英語学習気分もちょっぴりどうぞ!

負け犬さんの人生はノンストップ走り出したら止まらないやめられない止まらないこいつは極上のかっぱえびせんだという件「ジャグラー/ニューヨーク25時」

追う逃げる追う、そしてまた逃げる!走り続ける連鎖が永久運動のように途切れることがないこの映画の画面から迸るエネルギーの熱さに誰もがきっと火傷する

(評価 80点)

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『ノンストップ』という言葉、ノンストップ・アクション、ノンストップ・スリラー、映画で使われる常套句となったこの言葉。本作、製作当時の1980年には未だなかったはずだ。それが使われるようになったのも、そもそもこの映画に度肝を抜かれたものたちが使い始めた。この負け犬も度肝を抜かれたクチだ。それもたった一度だけ放送された「ゴールデン洋画劇場」でのことだった。

 冒頭、誰もかれもが走っているニューヨークの光景に、不思議の国に迷い込んだような感覚を覚える人がいるのではなかろうか、そう、時は1980年、バブルの華が百花繚乱し始めるその頃、ニューヨークは空前のジョギングブーム。走らなければニューヨーカーにはなれなかったのだ。ジョギングはそもそも健康のため、しかし、本作の主人公ボイド(ジェームズ・ブローリン)が走るのは、そんなヤワな理由ではない、最愛の娘が目の前でさらわれたからだ。

 トラックドライバーのボイドが娘のキャシーに誕生日のプレゼントのバレーのチケットを渡し、二人がセントラルパークにさしかかった頃、時を同じくして偶然にも不動産会社の社長の娘がピンクの上着につなぎのジーンズというまったく同じ服装で通りがかったことから、ガス(クリフ・ゴーマン)はキャシーを誘拐相手と思い込んでしまう。

 娘の叫び声に振り返ったボイドが見たのは車に押し込められる娘の姿だった。テメエの足で追っかける、テメエの手で誘拐犯を捕まえるとばかりに走り出すボイド。そして、ここからノンストップの追跡劇の火蓋が切って落とされる。

 とにかくこの映画、走ること走ること、ボイドがすかさず韋駄天の如く娘の乗った車を追いかけ、すぐさまプエルトリカンのタクシドライバーの兄ちゃんに声をかけ追跡、タクシーが事故ると、今度は街の宣教師の車に乗り込みまた追う。追いつく寸前で車が大破。ボイドはしょっぴかれて警察へ。しかし、本作が画期的なノンストップのスタイルの本領を発揮するのはここからなのだ。

 実はボイドは元刑事、退職したのも警察内部の汚職を告発したからだった。ボイドはその事を未だに偏執的に根に持つかつての同僚のバーンズ(ダン・ヘダヤ)と連行された分署で対面してしまう。そしてスキを見て署を逃げ出し、再び娘を追いかけ始めたボイドをバーンズが追いかける。ここから始まるしりとりのような追いかけっこの連鎖こそが本作たるゆえん、他のどの映画にもないユニークな唯一無二の躍動感がここから生まれる。

 街中でボイドを見つけたバーンズが抜き身のショットガンを通行人にもなりふり構わずぶっ放すシーンの凄まじさ。すんでのところでこれをかわしたボイドは、逃げるガスと接触したお姉ちゃんに会うたアダルトショップがひしめく42丁目へと向かう。本作が素晴らしいのは追っかけの連鎖だけではない、全てのカットに他では見られない活力がある、そしてキャメラを現場の只中に持ち込み、実況中継さながら望遠レンズでニューヨークを切り取ったフレームにひしめく街や人それに風俗、その全てが驚くほどヴィヴィッドに生き生きと息づいている。

 覗き部屋でボイドは暴れ、つまみ出されるが、それを見かねたお姉ちゃんから(この覗き部屋のくだりには、実際の当時のハードコアのポルノ女優のお姉ちゃんたちが何人も出演している)もらい受けたネームプレート。それが男が飼っている犬をもらい受けた動物管理局のものであることが分かる。

 次いで向かった動物管理局の女性職員のマリア(ジュリー・カーメン)の協力を得て、娘を誘拐したのがガスであることを突き止めたボイドはマリアと共にガスの元へと向かうが、またしても今度はマリアに因縁のあるマイノリティーストリートギャングたちがボイドを追いかけ始める。二重三重に沸騰点までヒートアップした追跡劇の結末やいかに・・!

 このマリアもそうだが、プエルトリカンのタクの兄ちゃん、漢気あふれる黒人の女性ドライバー、そしてポルノショップのお姉ちゃんまで、皆がボイドを助けてやるのがいい、ここには、このニューヨークには血の通った人間が溢れている。

 この映画のギラギラとしたグリッティな剥き出しの感覚は、どこか70年代のイキのいい日本映画を思わせる。とにかく冒頭からノンストップの感覚に圧倒され、エンディングまで駆け抜けてホーっと息をついて、こういうビートの映画を見たかったんだヨ、と快哉を上げたい人には是非、見てほしい傑作。ところが本作、本国アメリカですら未だにDVD化されていない一つの幻の作品。最近、YouTubeにビデオ版がUPされているのを見つけ、何十年ぶりに見たが、シャープネスなど望むべくもないボンヤリした映像にもかかわらずそのエネルギッシュな熱量にはいささかの衰えもなかった。

 みんなのDVD化の熱望がようやくかなった「ローリング・サンダー」のようにいつの日かDVD化して欲しいものなのですヨネ~