負け犬的映画偏愛録

崖っぷちの負け犬が、負け犬的な目線で偏愛する映画のことを好き放題のたまう映画録。

負け犬にならないために、ビジネスモデルにおける仕事へのこだわりについて「エイリアン3」

「エイリアン2」の大成功により早々に企画された「エイリアン3」。しかし、そのプロジェクトは当初から難航を極める。そして紆余曲折を経てようやく出来上がった作品は批判の矢面に立たされる。

(評価 70点)

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あのデヴィッド・フィンチャーの監督デビュー作として名高い本作。そして、また作品的には悪名高い本作。公開当時の「キネマ旬報」に掲載されたメイキングからその成り立ちとビジネスモデルとの関係をひもとく。

 当時、MTVの世界で活躍していたデヴィッド・フィンチャーが本作の監督に抜擢された時、主演のシガニー・ウィーバーは、この劇映画未経験者の未知の監督について正直不安を抱えていた。しかし、撮影初日、現場における綿密かつ適切なその新人監督の振る舞いに一気にその不安も解消する。企画段階から二転三転したシナリオから部分的なイメージが取り入れられた最終稿をもとに撮影は進む(初期に参加していたヴインセント・ウォードによる最もユニークな木造の宇宙船のイメージが採用されなかったのは残念)。

 かくして完成にこぎ着けた「エイリアン3」だったが、その作品はありとあらゆる酷評にさらされる。公開時に劇場で本作を鑑賞した時も、確かに作品的には失望せざるを得ないものだった。シリーズもので期待されるのは必然的にグレードアップ。となれば観客は誰もが当たり前の如く前作の「エイリアン2」よりド派手でエキサイティングなものをとなる。しかし、出来上がったものたるや・・・

 だが、鑑賞前から酷評はある程度耳にし、作品のあらましは知っていた。手ひどく失望はしたが、ある程度の想定内。ただ、しかし、その作品にはまぎれもなく光るものがあった。

 一番、感心したのがシーンのコンテニュィティ。囚人惑星の医師、ジョナサンがエイリアンに襲われるシーンの卓抜なカット構成、ニュートが検死解剖されるシーンのちょっとしたアクセント・カット。排気孔の換気扇を前に作業員が襲われるシルエットショット。MTV出身者にありがちなせっかちな映像ではなく、あくまでもきっちりとコンテを踏まえた堅実な映像感覚に好感が持てた。

 とはいえ、世間の本作に対する批判の激しさは尋常ではなかった。新人監督の独りよがりに過ぎないという手酷い批評も目についた。作品的には、その手の批判は頷かざるを得ないものではあったが、フト目に止まったのは、前出のキネマ旬報の特集号におけるフィンチャーのインタビュー記事の中のある発言だった。

 「機会があればもう一度、一からこの作品を作り直したいんだ」

 山ほどのトラブルを抱え難産の末の産物が酷評にさらされる。新人監督としては思いだしたくもない作品のはずだ。それなのにフィンチャーはそう言った。それを見た時、こいつはただ者じゃないと思った。自分の作品に対する貪欲なこだわりというものが感じられたからだ。

 かくして、その2年後にフィンチャー「セブン」で見事にブレイクする。

 とかく浮き沈みの激しい弱肉強食のハリウッドでフィンチャーが今も第一線の監督として活躍しているのは周知の通り。作品の評価はまちまちにせよ、誰もがフィンチャーの作品をして否定できないものが一つある。自分の作品に対する飽くなきこだわりだ。どの作品にもわすかでも作品のクォリティを高めるための他の監督には見られないきめの細かい貪欲な姿勢が感じられる。

 これはおそらくクリエイティブなジャンルの仕事だけに限った話ではないのでしょう。ビジネスの世界でも最後まで生き残るのはあくまでも自分の仕事に対し貪欲なこだわりを持つ者だけに違いない。