たとえ無理難題を吹っ掛けられても出来ない時は出来ないとハッキリ言える奴が出世する。出世する奴としない奴との別れ目は最初から決まっているのかもしれない。
(評価 80点)
まったくの下働きの裏方から見事「ターミネーター」をヒットさせ一躍、注目されることになったジェームズ・キャメロン。当然、そのキャメロンにはいくつものオファーが舞い込む。当時、キャメロンはランボーの続編「ランボー怒りの脱出」の脚本に没頭していた。その時、業界のとある大物プロデューサーから脚本の執筆を任される。何せ相手は業界の実力者、その威光もあってキャメロンは、そのオファーを引き受ける。
ところが、「ランボー怒りの脱出」の脚本はたちまち書きあがったものの、肝心のそのオファーの脚本がどうしても書けない。そこでキャメロンは、脚本が書けないことを正直にそのプロデューサーに申し立てた。するとそのプロデューサーはキャメロンに向かってこう言い放った。
「お前をこの業界で一生、働けなくさせてやる!」
しかし、キャメロンは屈しなかった。書けないものは書けないと言い放ち、そのオファーを決然と蹴ってみせたのだ。
キャメロンも人の子、不安に苛まれる日々を経て、それから、間もなくキャメロンのもとに20世紀フォックスから呼び出しがかかる。何か企画はないのかというのだ。
意気揚々と出かけたキャメロンは、20世紀フォックスの執務室でちょうど温めていた企画を熱弁する。その企画とは、遺伝子操作によって奴隷のように扱われていた人々が、反旗をひるがえしたリーダーの下、隔離されていたコロニーから脱走を図るというSF版「スパルタカス」というものだった。ところがキャメロンの自信満々のプレゼンにも関わらずその企画は既に類似企画があるということで敢え無く一蹴される。もうこれまでか、とキャメロンがあきらめかけた時、その重役がキャメロンにこう告げた。
「ちなみにエイリアンの続編の企画があるんだけど、どうかな?」
そこから如何にしてキャメロンの輝かしいキャリアが積み上げられていったかは蛇足でしょう。
この話にはビジネスの世界でキャリア組になるかならないかについての一つの教訓がある。たとえば自分がスタートアップに等しい成り上がりの存在にしか過ぎない時、組織の大物から下されたオーダーは絶対的に服従するでしょう。それについて無理だと言える勇気があるかないかということです。
結局、どんな世界でもそうなのでしょうが、人間的に正直でいられるか、いられないかで差がつくという話なのでしょうね。