負け犬さんのそりゃ自分の娘がAVに出てるの見たら親だってビックリするよ「ハードコアの夜」
「オーマイガー!ザッツマイドーター!」娘がAVに出てるのを見せつけられたら泣く親は勿論いるだろうけど、それをきっかけに自分までAV業界に入ろうなんて親がいるのか?(評価 50点)
負け犬は経験ないけど、これだけ巷にAVが溢れてて、引きも切らずにこんなにも女の子たちがわんさか出てたら、ある日、自分の娘がAVに出演しているのを親がひょっこり見ちゃったなんてケースは世の中に結構、あるような気がするのです。でも、そうなったらまあ、まさか赤飯焚いてお祝いする親なんていないと思うけど、やっぱりこの映画のジョージ・C・スコットみたいに慟哭するのかな・・・。
あの「タクシー・ドライバー」の俊英ポール・シュレイダーの監督第二作。本作、公開時の雑誌の「スクリーン」なんかではモロに洋物のポルノ映画のスナップ写真と並べて紹介されていた。それもあって何だかいかがわしい映画だなという印象を持ちつつも、確かレンタル時代でもソフト化もされずに本作のことは忘れていたら、ある日、TSUTAYAの棚に見つけ、即借りしてみたのが数年前、またふと思い出して再見したのです。
初見の時よりはマシだったけど、やっぱり何かといただけない作品でしたね。ポルノ業界のアンダーグラウンドな淫靡でダークな雰囲気の暗さもあいまって、イヤ~な気分になる映画といえようか(このダウナーな感じはあのジョエル・シュマッカーの「8mm」を見た時の気分に似ている)。何よりも不思議なのが、あの硬派の名優ジョージ・C・スコットが何故、この映画に出演したのかということ。ジョージ・C・スコットのフィルモグラフィを少しでも知る人なら(「パットン大戦車軍団」では見事、主演男優賞を受賞したのに受賞辞退したほどの気骨漢)、この映画見たら誰でも不思議に思うんじゃないでしょうか。
堅実に事業を営む敬虔なクリスチャンのジェイク(ジョージ・C・スコット)のティーンエイジャーの娘がコンベンションに出かけたまま行方不明となる。当てにならない警察を見限り、雇った探偵マスト(ピーター・ボイル)に誘われて向かった先は、薄汚いポルノ映画館。数か月探しあぐねたジェイクの愛娘は何とそのスクリーンの中にいた。かくして娘を捜索し、ハードコアポルノ業界から救出するためのジェイクの危険な苦闘が始まる。
と書けば、ポール・シュレイダーということもあって秀作のような気が誰もがするかもしれないけど、負け犬的には、まあ~何とも薄っぺらな底が浅い作品というか。まず、最初に娘を目撃するポルノムービーの薄汚さにドン引きする。そこで3Pでズッコンバッコンしてる娘を見てジェイクが泣き出す、その泣き方のワザとらしさにもドン引き(これがアカデミー賞俳優かよ)。
元々が、本当にアンダーグラウンドで暗い雰囲気だから、せめて探偵役のマストがジェイクの心強い相棒になって、とかっていう要素があるかな・・と思ったら、このマストも調査そっちのけで女の子連れ込んで淫らなことしてる、とんでもない探偵で・・どこまでもダウナーな気分になって・・そしてきわめつけは、このジェイク、娘を探すために何とポルノ映画のプロデューサーになりすまして、何かカツラ被って変装して、さもそれらしく男優のオーディションなんかしちゃって、ドン引きを通り越してアホちゃうかと思いました(笑)。
最後にはリアル殺人のスナッフ映画にまで発展してそこで娘を見つけるわけだけど、オヤジが泣き崩れたら娘があっさり家に帰る、であっけなく終わっちゃたから口をあんぐりしてエンディングでは呆然としてました。
何かポール・シュレイダーは自分の好きなジョン・フォードの西部劇の「捜索者」を多分に意識していたようで、しかし、娘には娘なりの事情もあったはず、それをまるで書き割りの人物みたいにおざなりに描いているから実に不愉快なだけの作品になってしまった。しかしまあTシャツにジーパン、グループサウンズみたいなカツラ被ったジョージ・C・スコットの姿は笑えもしたけど、どこか悲惨だった。それこそAVに止む無く出演した女の子みたいに何かやむにやまれぬ事情でもあってこの映画に出演したのでは・・と本気で勘ぐってしまった。結局は、変てこな作品です。お好きな方はどうぞ