負け犬的映画偏愛録

崖っぷちの負け犬が、負け犬的な目線で偏愛する映画のことを好き放題のたまう映画録。

木枯し紋次郎 第三十話「九頭竜に折鶴は散った」 初回放送日1973年2月3日

原作ありきのシリーズ中のレアな一本

 

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<かつて、盗賊に襲われ助けを乞う男に背を向けた過去を持つ紋次郎が、数年後再びその地を訪れ、今は廃屋で息絶えようとしているその男と再会する。男は紋次郎に30両の金を渡しお春という遊女の身請けを頼むが、その道中、突如として銃撃され拉致される。紋次郎が連れて行かれたのは一帯で極秘裏に採掘を続ける隠し銀山だった。そこで一味を仕切る女、お秀から自分はあの時、盗賊に襲われていた男の娘であったと責められ、お秀をお春と思い込んだ紋次郎はお秀に30両の金を渡す。しかし、本当のお春が今も遊郭にいることを、一味の手下の一人清吉から告げられ、銀を奪い川を下る計画を持ちかけられるのだが・・>

 笹沢左保の原作ありきのシリーズ中でも、オリジナルなものがいくつかあるが、本作はその中でも制作経緯そのものがレアな一本。

 本作の脚本は脚本家、服部佳子の完全オリジナル。そもそも紋次郎人気にあやかろうとフジテレビ系列の福井テレビからのオファーを発端とする完全オリジナル脚本である。そのため、本作では、股旅ものとしてはあくまでもレアな福井一帯での珍しいロケ、九頭竜川キャメラに収められることになった。

 だが、本作ではそれ以上にレアなシーンがある。本来、ロケ主体の本シリーズの撮影では、スタジオ撮影のシーンは比較的少ない、だが、本作では見せ場の一つでもある九頭竜川の激流を下り逃亡するシーンでそれが使われている。中でも、船の上の紋次郎と、銀山採掘の一味の清吉のアップには、背景にスクリーン張り映像を投射するスクリーンプロセスが用いられている。

 ただし、このシーン、非常に雑な作りで違和感ありありなのだ。よく見ると背景に投射されている映像はネガキズまで入っている明らかなショボイ映像なのだ。

 本作の監督は大映のベテラン監督でもあった、安田公義。

 中村敦夫によれば、この監督さん、コンテをキッチリと、それも綺麗に描いてくる人だったらしい。ただし、そのコンテにこだわり過ぎて、実景がコンテのイメージと違うと、途端に何時間も頭抱えて悩んじゃう人だったらしい(笑)。

 コンテ通りの雪の風景を再現するために、わざわざスタッフもキャストも総出で塩を運んで来た、なんてこともあったとか・・。こんなにキッチリしているのに、肝心なところでは妙に雑なのが何だかおかしい。