負け犬的映画偏愛録

崖っぷちの負け犬が、負け犬的な目線で偏愛する映画のことを好き放題のたまう映画録。

新木枯し紋次郎 第二話「年に一度の手向草」 初回放送日1977年10月12日

日活ヌーベルバーグの新たなる息吹

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<姉のお光の墓参りにおとずれた紋次郎。そこで見たのは。その墓が何者かに荒らされ、そこに埋められていた身も知らぬ娘の死体だった。かつて同じ村の住人だった梅吉は、それが村の名主の娘のおせんだという。紋次郎は、真相を追って、名主の家へと向かうが、村の誰もが、おせんの元気な姿を見たと証言し、深まる謎とともに、紋次郎が知ったのは、村にまつわる、ある秘密だった>

 

 紋次郎に不可欠なバックストーリーといえば、生後間もなく間引きされかけたところを姉のお光に救われた一件。シリーズを通じ幾度となく出て来るそのエピソードが、本編の冒頭にも出て来る。そして、その瞼の母ならぬ、瞼の姉の最愛のお光の墓が無残に荒らされ、そこから見も知らぬ娘の遺体が発見されるという、ショッキングな本編を監督、さらには脚本まで手掛けたのが誰あろう、日活ヌーベルバーグで名を馳せ、日本映画史にその名を刻む神代辰巳

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 本格ミステリ的な本作だが、神代辰巳監督ならではのほぼワンシーン、ワンカットの演出で統一された本作は、それゆえにシリーズ中でも異質な一本。そのワンシーン、ワンカットの効果で、ドラマ的というより、映画のような厚みがもたらされている。しかし、逆に、市川崑演出のようなテンポや切れ味に欠いたことは否めない。

 それでも、お光の墓をめぐってのミステリアスな顛末から、クライマックスの急斜面での大八車を使った見せ場に至るまで、おそらくフィルモグラフィとしては、初とも思われる時代劇として、実に印象的な一編に仕上げてくれている。

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 ちなみに今回の新シリーズでは、紋次郎こと中村敦夫が三本のエピソードの監督を手がけている。旧シリーズの「獣道に涙を棄てた」では、一気に二本分もの予算を使ってしまい、プロデユーサーを仰天させた中村敦夫が、新シリーズでは早撮りに徹し、リーズナブルに仕上げたという同氏だが、その出来映えには満足らしく、どれもが傑作と自負しているのが、本シリーズと紋次郎への愛着がしのばれて、微笑ましい。

 その中村敦夫が新シリーズで手掛ける最初の作品となるのは第七話にあたる「四度渡った泪橋」。当エピソードでは、ゲスト出演の三浦真弓がヌードを披露するなど、ファン・サービスにも徹した娯楽作となっている。また、脚本も自ら手掛けたそのペンネームが、白鳥浩一。この名前の由来が、玄人はだしの競輪マニアの同氏が、好きな競輪選手の名前を合体したものなのが、国会議員まで務めた千変万化の顔を持つ中村敦夫らしい。