負け犬的映画偏愛録

崖っぷちの負け犬が、負け犬的な目線で偏愛する映画のことを好き放題のたまう映画録。

負け犬はボギーになれたか「ボギー俺も男だ」

いったい、この人を天才だと認めない人なぞこの地球上にいるのだろうか

(評価 78点)

 

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多作が天才の証とすれば、間違いなくこの人はそのトップに君臨するだろう。一体、何作あるのか?マニアにしか正確な数は即答できないはずだ。

そのアレンを初めて目撃したのが、実はこの作品だったのです。それはとある深夜の名もなき洋画劇場。翌日の学校も顧みず、深夜まで起きて・・ということはまだ家に録画機能搭載のビデオデッキすらなかった時代、まだ相当若気の至りだった時期のはずだ。

 そもそも何故、これを見たくなったのかすら覚えていない。そうして成し遂げたウッディ・アレンとの初遭遇。矢継ぎ早に繰り出されるウィットに満ちたセリフの数々にたちまち魅了され、やがてクライマックス、ウッディ演ずる映画コラムニストの現実の出来事と、崇拝するボギーのカサブランカのリックのフィクションの出来事が絶妙にシンクロするにつけ、そのインテリジェンスなクレバーさに驚嘆した挙句エンディングで心の中で拍手喝采を送っていた。

 こうしてウッディは自分の脳みそに刻印の如くクッキリと刻み込まれるにいたったのだ。

 冒頭、映画館でカサブランカが映し出されているスクリーンを口を半開きにして、ボギー(リック)のセリフをリフレインするアレン(ウッディ)のアップにニンマリさせられる。アレンが妻に逃げられたさえない映画評論家であることが明かされ、寂しさに耐え切れず、連れ合いを求める涙ぐましい努力が始まるが、大親友のディックの妻リンダ(ダイアン・キートン)がそれを見かね、何やかやと世話を焼くうち恋が芽生え・・まるでカサブランカの劇中のアンサンブルさながらの三角関係となっていく。

とまあ、何処をとってもチャーミングな本作。しかし、これも例に漏れずレンタルビデオでも見かけることはなく、近年、ようやくDVDがリリースされ再会が叶い、以来、マイフィバリットコレクションに加わった本作を繰返し見れる悦楽の恩恵に授かっている。

ところが、この作品を見るにあたって、自分には奇妙な習性があって・・。この作品を見ると、必ずその後で、元ネタのカサブランカを見たくなり、カサブランカを見ると、またこのパロディ版を見たくなり・・。という訳で永久ループのような振幅を繰り返してしまうのです。これは自分だけの習性か、などと思っていたら、こないだIMDBの本作のユーザーレビューを見ていたら、これを見ると、たまらずやってしまうと書かれたレビューを発見し、海の向こうでも同じことをしている人がいることが分かって、何故か妙に胸をなでおろした次第。

ハーバート・ロスの演出の妙味もあっていつものアレンのアクの強さも程よく中和された口当たりの良い本作、いかがでしょう?

悶々とした永久ループの衝動にかられることうけあいです