負け犬的映画偏愛録

崖っぷちの負け犬が、負け犬的な目線で偏愛する映画のことを好き放題のたまう映画録。そして、木枯し紋次郎を完全コミック化(笑)した「劇画!木枯し紋次郎」を日々、配信中!色々な動物が繰り広げる動物コミックもあわせてお楽しみください

負け犬さんの人生は無限ループの原動力はとてつもなく悲しい罪の声だったという件「トライアングル」

これはメビウスの輪というレールをジェットコースターでライディングする感覚なのか。無限ループとスラッシャー、その2ジャンルがシームレスに融合する驚きが味わえる思いもよらない傑作

(評価 82点)

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有難きはネットの時代。ネットでその存在をたまたま知って、見てみたら傑作だったというのが少なからずあるもので、本作がまさにそれ。

 主人公のジェス(メリッサ・ジョージ)には幼い子供がいる。どうやらシングルマザーらしい。息子にちょっとイラつく、どこにでもあるありふれた日常が切り取られた後、ジェスはヨットハーバーへと向かう。どうやら育児疲れの息抜きか、友人とクルージングに出かけるらしい。しかし、どこか浮かない顔のジェスを乗せ、ヨットはそのまま外洋へ。友人ともなじめずブルーな気分でいるが、いつしかブルーな海にも癒され始めた時、急激に天候が悪化、嵐となってヨットはどこともしれない海洋を漂流しだし、バカンスが悪夢へと変わり始めた頃、一行の目の前に助け舟とばかりに豪華客船が現れ胸をなでおろすのだった。

 ジャンル不問、出演者たちは誰も知らない俳優ばかり、監督も勿論知らない、普通なら見向きもしない作品のはずだった。ところが本作はここから予想もしない本領を発揮する。

 ひとまず安心とばかりに客船に乗り込んだ一行だったが、船内には誰もいない。しかし、パーティホールには豪華な料理が山積みになっている奇妙さ。その時、突如響きわたる銃声。それと共に現れた覆面姿の人物に次々と撃たれ鮮血を噴き出す仲間たち。うろたえ必死になって逃げるジェス。しかし、パニックに陥りながらも、ジェスは斧を手にけなげに逆襲。からくもマスクマンを撃退し海へと落下する姿を見下ろすジェス。だが、遠くで誰かが助けを求める声に気付き、ふと見ると次の瞬間、ジェスが見たのは、信じられないものだった。何と漂着するヨットにしがみつき助けを求める自分と仲間の姿だったのだ。

 かくしてヨットから客船に舞台がシフトしたタイミングでスラッシャーホラーの俗物ジャンルとなっていた本作がこの瞬間からループものへと鮮やかに切り替わる。

ジェスは咄嗟に身を隠すが、仲間と一緒に自分も乗り込んでくる、物陰に身を潜め、おそるおそる自分の姿を見つめるうちに、いつのまにか覆面を被って、仲間を襲っていた。自分が自分を追う、自分が自分に追われ殺される恐怖。しかし、自分に逆襲された挙句、今度は自分が海へと突き落とされ・・・。

 そんなループの果て海へと突き落とされたジェスは、いつしか浜辺に漂着していた。何とか歩き出し、今度は息子が待っているはずの自分の家に向かって走り出すのだが、ジェスが家についた時、見たものは、あまりにも悲しいもう一人の自分の姿だった。

 この瞬間、映画を見ている人間は、このループ、永久運動の動力源が悲しき罪の意識、罪悪感だったことを思い知る・

 再び、斧を手にしたジェスは、もう一人の自分に自らの手で引導をわたし、今度こそ息子をしっかりと抱きしめ、車に息子を乗せて二人でヨットハーバーへと向かうのだが・・。映画はその後に起るもう一つの悲劇を描いた後、このループが永遠に続くことを、飛び立つ一羽のカモメの哀しい鳴き声とともに暗示して終わる。

 人間の業に終わりはない。人間のカルマは永遠に続く。ループというシチェーションと人間の業を巧みに結びつけた発想には驚かされる。所詮、人間という生き物は、自分の尾を喰らうために円環を成すウロボロスの蛇でしかないのだろうか。

 そもそもこのループを成したジェスの罪悪感がどんな所業によるものだったのかは、本作をご覧になって確かめて頂きたいのです。

 こんなシャープな作品を作ったのは、クリストファー・スミスという監督。控え目なB級ホラーメーカーとしてのキャリアから突然変異のようにこんな傑作を生み出してしまった。

 こんな思わぬ出会いがあるから、映画探検はやめられない止まらない。TSUTAYA風に言えば本作まごうことなき発掘良品です。

 捻じれたメビウスの環の表面を是非ともおそるおそる歩いてみたいという方には必見のお薦め作です。