負け犬的映画偏愛録

崖っぷちの負け犬が、負け犬的な目線で偏愛する映画のことを好き放題のたまう映画録。

負け犬はパロディでよみがえる「007私を愛したスパイ」

人間ドン底でも自分を笑い飛ばせば何とかなるのかも

(評価 76点)

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今さらながらの勝手に007シリーズ。こないだ「007二度死ぬ」を数十年ぶりに見たらそのオモチャ箱を引っくり返したような世界観に慧眼するところがあったので、昔見て、一番ましだったおぼろげな記憶がある「007私を愛したスパイ」を久しぶりに見た。

 のっけからのディスコ調にアレンジしたテーマ音楽に乗ってのスリリングなスキーチェイス。そして、そのまま崖からダイブする伝説的なスタントシーン。あっと息をのむや、ジャストのタイミングでバサッと開くパラシュートがユニオンジャックの国旗というギャグにニンマリさせられ、そのままシリーズ屈指の名曲カーリー・サイモンが歌うあの「NOBODY DOES IT BETTER」のタイトルバックへと・・う~ん素晴らしい。

その後もエキゾチック気分満載のゴージャスなエジプトロケあり、水陸両用のロータスエスプリでの水中戦あり、最後にはお約束の超巨大セットの大爆破ときたら最後の最後はちゃんとお色気ギャグで締めて、気付いたらエンディングで再びの「NOBODY DOES IT BETTER」に浸ってしまい、結局、何のことはない面白いじゃないか007ってことになったのでした。

最近の予定調和なアクション映画に飽き飽きして、すっかり足が遠のいていた007シリーズ。実のところ当時も、初代ボンドのショーン・コネリーの離脱とその後の不振、ボンドとしてはイメージが薄味過ぎたロジャー・ムーアの存在感もあってシリーズも興行面で下降線をたどり、その行く末が危ぶまれていた。

普通のプロデューサーならそろそろ店を畳むところをこのアルーバート・ブロッコリの神経たるやただものではない。破産して製作権すら奪われそうになりながらも前作の2倍の製作費を投入する大バクチに打って出る。

その新たな革袋に使ったのが、10作目のメモリアルに乗じた様々なパロディだったのだ。

臆面もなく流れるあのアラビアのロレンスのテーマから、何といっても悪役でコメディリリーフ的な役割も抜群のJAWSのキャラクター。そして全編に漂う007のキャラ自体小バカにしたようなセルフパロディー感満載の雰囲気。そもそもソフト過ぎたロジャー・ムーアのユーモア感覚との絶妙なマッチが、まぎれもなく映画のテンポになっているのは確か。何だか開き直った末にバカ笑いしたような明るさが、本作の良さなのかもなどと改めて思ってしまったのでした。

それに加えてこのブロッコリ、DVDの特典のメイキングでも言及されていたけど、エジプトロケでスタッフ一同、満足な食事にありつけずにヒイヒイ言っていた矢先、近隣諸国から大枚はたいて、パスタ他の食材をどっさり買い付けロケ現場に駆け付けたという。

さらには、とんでもない大鍋で茹でたパスタを料理して自らスタッフに振る舞うシーンも出てくるほど、心づくしに長けた人だったよう、勿論、本編でもそんな心づくしは忘れない。大盤振る舞いといっていいほど、要所要所でゴージャスなボンドガールがわんさか出てくるのだ。

極めつけはボンドの相手役のバーバラ・バック(UPしたピンクのビキニの画像は「ロードショー」誌のピンナップにそのまま使われていた)。それに本作の悪役の海運王ストロンバーグの秘書役のキャロライン・マンロー(特にマンロー嬢のむせかえるような色気のスゴいこと)。

とにかくこの二人、当時の「ロードショー」や「スクリーン」には毎月のようにグラビアが載っていて、いたいけな青少年には目の毒なことこの上なかった。本編でも、登場してくる衣装のどれもがバーバラ・バックのそのこぼれそうなバストをこれでもかと強調するサービスぶり(安直といえばそれまでだけど)

何にせよ、定番の幕の内弁当を心地よく平らげたかのようにお腹いっぱい楽しませてくれた本作。やっぱりこの作品のロジャー・ムーアのように人間、いついかなる時でもユーモアだけは忘れたくないよね、何せ笑う門には福来るだし