負け犬的映画偏愛録

崖っぷちの負け犬が、負け犬的な目線で偏愛する映画のことを好き放題のたまう映画録。

負け犬のジャパンはフジヤマ「007は二度死ぬ」

ニギニギしいおせち料理の味もたまには楽しめる

(評価 68点)

 

f:id:dogbarking:20201230040737j:plain

今更ながらの「007は二度死ぬ」を無性に見たくなった。勿論、子供の頃に見ているが。それというのも最近、サミュエル・フラーの「東京暗黒街・竹の家」を見たからだ。初めて見る、この映画に出てくる総天然色のニホンにブチのめされ、クール・ジャパンめいた映画をやたら見たくなったのだ。

 期待は裏切られなかった。開巻いきなりボンドが死ぬと、海に投じられた死体入りのカスケットからタキシードを着たボンドが現れるケレン味たっぷりのオープニング。そのまま香港近辺の海中の潜水艦から射出?されたボンドがダイビングスーツ一丁で泳いで日本の沿岸に辿り着く無茶苦茶アバウトなシーンを経て、いよいよアサヒビールのネオン輝くニッポンのシークェンスになるや、もうハリー・ポッターも真っ青のファンタスティックワールド以外の何物でもない。

 裏通りが、何故かどこかの相撲部屋と通じていて、稽古中の力士の一人からチケットを貰い、そのままスタスタと歩けば、そこは満員御礼の国技館なのだ。

 そしてお約束通り現れるジャパンのボンドガールとしけこんで、潜入した先が大里化学という大企業。これまたお約束通り機密書類をまんまと奪って逃走し、ボンドガールの後を追ううち対峙するのが、あの丹波哲郎ことタイガー田中。(タイガーの堂々たる流暢な英語にもビックリ。さすが霊界の主)

 ここまでで既にその豪華絢爛な天然色ぶりに誰もが目を回しはしないか。

 ここから更にまだまだあのジャイロコプターのリトルネリーの空中戦あり、仇敵ブロフェルドの阿蘇の火口の秘密基地での忍者軍団との大スペクタクルあり、これを目出度いおせち料理と言わずして何という。

 かつてこの手の映画に国辱映画だと本気で憤慨していた人もいたけども、今は、アオシマ教材のあのサンダーバードのプラモデルの匂いがするこのテイストを素直に楽しめる。

 借りたDVDにはメイキングのボーナスコンテンツもあった。なにより驚いたのは、火口の秘密基地のその巨大なスケール。それをプロヂューサーのアルバート・ブロッコリが、セットデザイナーのケン・アダムズのほんの思いつき程度のデザイン画の提案に気前よく金を出してのける、その太っ腹ぶりだ。

 いつもスーパーでもやしやハクサイばかりを買って晩飯代の倹約にうつつを抜かす、矮小な負け犬との人間のスケールの差にはその身がさらに縮こまるような思いであった。