負け犬的映画偏愛録

崖っぷちの負け犬が、負け犬的な目線で偏愛する映画のことを好き放題のたまう映画録。そして、木枯し紋次郎を完全コミック化(笑)した「劇画!木枯し紋次郎」を日々、配信中!色々な動物が繰り広げる動物コミックもあわせてお楽しみください

負け犬スティーヴン・セガールの笑える関西弁講座「イントゥ・ザ・サン」

オリエンタルな異空間と化した東京に、セガールの日本刀と、控えめに話す関西弁が炸裂する玉石混淆のファンタスティック・アクション!

(評価 70点)

f:id:dogbarking:20211024111138j:plain

関西在住歴のあるハリウッド・スター、スティーヴン・セガールが東京の街に乗り込み、ヤクザ社会に、愛用の名刀で粛清の一撃をくらわす珍品アクションたる本作。

 マネー・メイキングなバリューがあるのかないのか不明なまま、ただひたすら沈黙シリーズを繰り出していたセガールが、脚本にまで加わって久々に本気モードめいたものを見せてくれている。それというのも本作の舞台が自身慣れ親しんだ日本だったからに違いない。

 元々、高倉健が大手ワーナー・ブラザーズと組んで70年代に放ったカルト・アクション「ザ・ヤクザ」が好きでたまらないこの負け犬が、本作に食指を動かされないわけがなく、勇んで見た結果、確かに予算から何からスモール・スケールながら、スピーディにオリエンタルなテイストを繰り出してくる小気味の良い展開が、予想外にツボにはまったのだった。

 そして、何よりも、そもそも沈黙の男のはずなのに、関西在住歴を遺憾なく発揮し、聞こえない位の小っちゃな声で控えめに、それでいながら流暢に話す関西弁が本編最大の爆笑ものの見所となっている。

 取ってつけたようなイントロは、チャック・ノリスの地獄のコマンドーカラー全開のジャングルでのコマンドーなミッション。麻薬カルテルのアジトの村を監視するエージェントのトラヴィスセガール)の勇み足から口火を切った戦闘で、仲間を死なせたセガールは、後日、何故か日本の東京で刀剣販売の店の店主をしている。

f:id:dogbarking:20211024111219j:plain

 刀剣を買いに来た客との会話から、セガールの必殺の関西弁が繰り出されることになるのだが、何とも落差の激しい、ソフトながらもやたらと早口なその関西弁が爆笑もの。

「いやあ~、あの猛者をぶちのめしたんだよね~おやっさん」と店主のセガールに話す客。「あんなの、どこそこのアホですわ!カタナ売ってるだけですよ」と流暢ながら、とにかく控えめに関西弁で返すセガールがとにかくキュート。

 そんな折、極道たちとの軋轢から、東京都知事が狙撃され殺される事件が勃発。リタイヤ同然だったセガールがその事件に駆り出され、ヤクザ社会の抗争に巻き込まれたセガールが怒りの一撃をくらわすことになるのだが、いってみれば本作は、オリエンタルな極道アクションのアラカルト。

f:id:dogbarking:20211024111300j:plain

 旧勢力のヤクザたちを駆逐し、新興ヤクザの黒田(大沢たかお)がのし上がっていくくだりは、あのマイケル・チミノの「イヤー・オブ・ザ・ドラゴン」を小っちゃくスモール・スケールに、トラヴィスことセガールが同僚の若手のFBIエージェントと組んで、事件の捜査にあたるくだりは、あのリドリー・スコットの、これまたオリエンタル・アクションの傑作「ブラック・レイン」を小っちゃくスモール・スケールに、そしてクライマックスの、黒田たちが住む屋敷に殴り込みをかけるくだりは、最初に挙げた「ザ・ヤクザ」をすっかりそのままに、といった具合に何かと小さなスモール・スケールにして詰め込んだ感が満載な作品だ。それでいて尺は95分だから、とにかくテンポが速くて飽きないことは確か。

 日本の俳優陣も結構、豪華、旧勢力を仕切る会長に寺尾聡。代貸クラスの一派を仕切る組長に伊武雅刀。そして「イヤー・オブ・ザ・ドラゴン」のジョン・ローンそのままに東南アジアのドラッグ・カルテルとのコネクションを盾に旧勢力に戦争を仕掛けていく敵役、黒田に大沢たかおと、誰もかれもが短い時間ながら魅力を発揮している。

f:id:dogbarking:20211024111338j:plain

 ミンクという毛皮みたいな名前の監督さんの、とにかくスピーディなテンポのせいもあるのか、日本を舞台にしたこの手の映画には絶対にある、トンチンカンな国辱めいたテイストが、本作に限っては不思議なことに微塵もない。イントロのコンバット、そしていきなり東京に飛んでの本編の開巻から、ラストのハードコアな、セガール大沢たかおの真剣さながらの重量感あるチャンバラまで、一気呵成に見せてくれるのが結構、心地よい。そして、随所に、セガールの何とも可愛い指切りげんまや、コロッケのゲスト出演、そしてセガールの実の娘さん藤谷文子のサプライズ出演までインサートされるから、この負け犬のみならず、この手のVシネマチックでチープな異空間映画が好みの人には結構、楽しめること請け合いの作品ではないでしょうか。

 もともとセガールが日本で在席していた道場が、大阪の十三にあったのも有名な話。十三といえば、関西人の一種ステータス・シンボルな聖地の一つとも言っていい。その毒々しくも華やかなネオンの洪水は、映像派の巨匠リドリー・スコットをも魅了し、「ブラック・レイン」において、スコットは独自のフィルターでネオンが彩る街十三を異空間に豹変させて、この負け犬をも仰天させてくれた。

 本作は大阪ではなく東京。セガールの関西弁のどこかトンチンカンなギャップも、セガールの関西弁そのものよりも、東京の地で、露骨に関西弁丸出しで喋る空気にあったのかもしれない。すっかり関西の地で、骨の髄まで関西人に染まった負け犬がいうのだから、あながちハズレではない。大阪エッセイで有名なわかぎゑふさんの見解によれば、日本で一番巨大なド田舎が大阪らしいけど、そんな生粋の田舎者の大阪人でも、東京に行けばそれなりにTPOをわきまえて案外、関西弁はセーブして標準語で話すもの・・といいつつ、かの地に行けば、知らない間に、関西弁が口をついて出ているのかもしれませんが(笑)

 そういえば、本作のおまけのメイキングのインタビュー映像でセガールは、本作の製作にあたって独自に東京をリサーチし、東京がロシアやチャイニーズはもとより世界中のマフィアたちが集まる巣窟のような街だと判明したとのこと。そして、それを現実通りにアクチュアリティたっぷりに描きたかったと自信たっぷりに語っていた・・・ンな、アホな!