負け犬的映画偏愛録

崖っぷちの負け犬が、負け犬的な目線で偏愛する映画のことを好き放題のたまう映画録。

負け犬の麻薬戦争の最前線に降臨したのはあの伝説のハンターだった件「プレデター2」

ドラッグカルテルとLA市警との激戦の真っ只中に、宇宙からやって来た最強のハンターが乱入する。忘却の淵に忘れ去られた続編は、極上のSFアクションだった。

(評価 76点)

すっかりフランチャイズと化してシリーズになった作品の場合、その何本目かの作品には、さして話題にもされない憂き目にあう作品が出てくるもの。このプレデター2もそんな作品のような気がする。

プレデター2』・・ん?プレデターなら勿論、知っているけど『プレデター2』なんてあったっけ、なんて言われそうなほど本作はその知名度が低いのではないでしょうか。

現にこの負け犬もかつてTVで見たというおぼろげな記憶はあったけど、はるか忘却の淵に追いやられ、ついぞ見ないまま何十年が過ぎていた。

 ところが何の因果か、本作が突如として脳の襞の隙間から現出し、急に見たくなって見てみたら、これが予想外の快作でちょっと驚いたという次第。

 

 オープニングは緑の森林を俯瞰で捉えた空撮ショット。ここは前作に引き続きジャングルか?と思わせておいて、そのショットが滑るようにトラッキングするとLAの高層ビルがフレームイン。カットが切り換わり、いきなりあのお馴染みのシュバッ!という効果音とともにプレデターの主観ショットに銃声と怒号のボイスオーバー。次いでシーンが替わると、そこは麻薬組織のならず者のギャングたちとLA市警が激しい戦闘を繰り広げるコンバットゾーンなのだ。

 開巻から繰り広げられる激しい銃撃戦というサービス精神は続編物の常套だが、本作が薄っぺらな続編とは一線を画しているのは、ストーリーのイメージコンセプトがしっかりしているから。

 ストーリーのコアは激戦中の麻薬ギャングとLA市警、そして、それに殴り込みを仕掛ける宇宙の孤高のハンターとの三つ巴の激突だ。本作はそのソリッドなエッジの効いたパラダイムでぐんぐん押してくる。そこがいかにも90年代のSFアクションぽくて気持ちいい。

 圧倒的な火力と、ドラッグを効かせて不死身同然のハイになったギャングたちにLA市警の面々も苦戦を強いられる。だが、ペントハウスに立て籠もったギャングたちに問答無用の鉄槌を食らわせるのがあのプレデター。堕天使のごとく降臨し、半透明のあの肉体でギャングたちを皆殺しにする。このオープニングのバイオレントなイメージこそが本作の真骨頂。

 ヴイランという立ち位置はそのままに、極悪なジャンキーギャングを吹っ飛ばすヒロイズムを兼ね備えた本作のプレデターはとにかくイカす。それでも、何らかの戦闘意欲を有する生き物は敵も味方もなく抹殺するという本能に揺らぎがないところがハードボイルドなのだ。

 このプレデターに真っ向から立ち向かうのがLA市警のはみだし刑事ハリガン(ダニー・グローヴァー)。そして、このハリガンと対立する麻薬Gメンのボスのキースに扮するのがゲイリー・ビジーときたら、これはもう80年代アクションのお墨付きの面々ということになる。

 ハリガンの仲間たちも、ジェームズ・キャメロン映画の名バイプレイヤーのビル・パクストンをはじめ、皆エイティーズに活躍していた俳優たち。

 とにかく、本作、全編にわたって、息つく間もないというのがウレシイところ。

 ハリガンの仲間がプレデターに殺され、それを追うハリガンと別行動していた仲間たちが地下鉄で移動中、プレデターの襲撃に会う。そして、本作は、本編の半分にあたる、ここからエンディングにいたるまで全てがクライマックスと言っていい見せ場が連続する。

 地下鉄の襲撃で、さらに仲間を殺されたハリガンがカムフラージュしたプレデターを追う。そこからは、大都会の地の利を生かした起伏に富んだ、ハリガンとプレデターの一騎打ちが豊かに繰り広げられるのが実に楽しい。

 ハリガンと対立していた麻薬Gメンたちが実は、未確認生物UMAを追う政府公認のハンターたちで、プレデターとそのハンター、ハリガンとの三つ巴に転ずるクライマックスも見応え十分。そして、このくだりでプレデターが繰り出す兵器の数々もまた楽しい。

 だが、本作のサービス精神はそれだけにとどまらない。

 プレデターとの死闘の果て、ビルの穴からハリガンが落ちてしまったのが、プレデターたちの母船。そこで、ハリガンが目にしたのは、プレデターたちのルーツの数々。そして、ここでチラリと出て来る、今なお語り草となっているギャグも見逃せない。これがン十年後の「エイリアンVSプレデター」の布石なのだから。

 といった具合に、本作はまるで尻尾までアンコが詰まったたい焼きみたいに何処を取っても実に楽しい良作なのだが、唯一、残念なのは、前作のアーノルド・シュワルツェネッガーが、本作の、舞台を大都会に据えるシノプシスを読んで、バッド・アイデアとみなして却下してしまったこと。

 もしもシュワちゃんが続投していたら、忘れ去られる続編どころか、アクション映画史上に名を連ねる大傑作になっていたことは、まず間違いないのですけどね~