負け犬的映画偏愛録

崖っぷちの負け犬が負け犬的な目線で偏愛する映画のことを好き放題のたまう崖っぷちの映画録。また、たまに<映画をエンジョイ英語もエンジョイ>と題して、映画の実際のスクリプトを原文と翻訳でご紹介。英語学習気分もちょっぴりどうぞ!

負け犬のアホらしき赤と青のサスペンス!「ジャガーノート」

赤と青、どっちを切れば助かるか!生死を分かつ運命は、爆発物処理のプロフェッショナル、ファロンに託された!良質のサスペンスのはずが、実はズッコケすれすれのボーダー・ランナーだった!(評価 59点) 

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70年代に隆盛を極めたパニック・サスペンス。豪華客船に仕掛けられたのは、とんでもない爆弾だった!

 70年代の洋上のパニック・サスペンスものの佳作としてその名を長らく知りつつも未見だった本作。それを今回、ようやく見て、あらぬところでヒヤヒヤしたという次第。

 開巻、港から船出するのは豪華客船ブリタニック。見送る人々の歓声に応えるかのように、ブリタニックが、勇壮な姿で、航路へと旅立っていく。70年代独特の深みのあるキャメラ、それにブリタニックをフル・スケールで捉える空撮ロケも素晴らしいオープニング。

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 出演陣も、主役の爆発物処理のプロのファロンに、米英の映画演劇界で幅広く活躍した名優リチャード・ハリス。それに爆弾魔を追うスコットランドヤードの警部に、あのレクター博士で有名な、若き日のアンソニー・ホプキンス、さらには、ブリタニックの船長に、「ドクトル・ジバゴ」のオマー・シャリフと実に豪華。

 それに、冒頭から目見張り、本編を通じて驚かされるのが、とにかく洋上のシーンは、キャビンや、ダンスホール、機関室に、エンジンルームにいたるまで、全てが実景のロケーションであること。

 あの「タイタニック」が巨大スケールにもかかわらず、CG丸出しで、至るところで興醒めさせられたのとはまるで違い、フル・スケールのロケーションで洋上を航行するブリタニックの雄姿が、勇壮そのもので、これは隠れた逸品に違いないと冒頭で思わず身を乗り出したのは確か。

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 ところが、序盤早々、犯人が、船主の船会社の重役のニコラス(イアン・ホルム)に、ブリタニックに爆弾を仕掛けたと電話してくるところから、一転、その期待の雲行きが怪しくなってくる。

 犯人が仕掛けたのは旧式の薬品型のアマトール爆弾で、船内に七つ仕掛けたというその爆弾は小ぶりなプラスチック爆弾とは大違いな、ドラム缶のような容器に入った巨大な代物。おそらくここでまず誰もが思うはず。一体、こんなバカでかい危険物、それも一個どころか七つにもおよぶドラム缶大の危険物をどうやって船内に持ち込んで、誰にも気づかれずに設置できたのか?客船のセキュリティーって無きに等しいものなの?と。しかし、あくまでも発端なので、ここではさしたる説明などあるはずもなく、映画は進む。いずれにせよ、この疑問は後半になって明かされるはず。負け犬も自分にそういい聞かせ、釈然としないまま、その後の展開を見守ることにした。

 とはいえ、展開そのものは、ステレオタイプなパニックものの定石通り。手に負えないと踏んだスコットランドヤードが依頼したのが、軍事用の爆発物処理専門のファロン中佐(リチャード・ハリス)。ファロンは爆発物処理の部隊をすぐさま結成。空からブリタニックへの降下を試みる。

 ロケーションの効果も絶大な、この見応えのある降下のシーンの後、ファロンは、自らを“ジャガーノート”と名乗る爆弾魔が仕掛けた爆発物と初めて対峙する。

 ところが、ファロンが組みすることになるこの爆弾、まずは側面のフタを開けて見れば、まるでピタゴラスイッチのような複雑な構造で、さまざまな構造上のトラップが仕掛けてある。かくして、ファロンは、自らの軍事知識を生かし、複雑なメカに挑んでいく、と聞けば、どんどん面白さもヒート・アップしていきそうなところだが、そうはいかないのが本作のもどかしいところ。

 結局、その爆弾の構造上の特徴から、過去に軍用地雷の製造に携わっていた容疑者が絞られ、数千にのぼる乗客、乗員を人質に取ったその犯人が身代金の受け渡しに現れる。しかし、その人物はただの受け子同然の無関係な人物だった。

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 そして、いよいよ犯人が明らかとなり、最後のクライマックスとなる。スコットランドヤードに身柄をかくほされた犯人と通信でやり取りしながら、爆弾の心臓部にじりじりと近付いていくファロン。やがてファロンは赤と青の二本のワイヤーに到達する。ここでファロンは、犯人にどっちを切ればいい?と心理戦を仕掛けて来る。そして、青のワイヤーだと答えた犯人の言葉通りに、一旦は、青のワイヤーにニッパーの刃先を向けるが、瞬時に赤のワイヤーを切断する。

 犯人のブラフを見抜いたファロンの勝利という訳。しかし、唖然とするのはここから。ファロンは、残りの爆弾の解体作業にあたっている部下たちに一斉に赤のワイヤーを切れと命じる。その言葉に従い部下たちは全員、赤のワイヤーを切断し、ハッピー・エンディングとなるのだ・・・!

 だが、しかし、そもそも、工業製品でもないのに、七つもの数の爆弾を、どうして皆、同じ規格にする必要があるのか?本当にトラップを仕掛けて爆発させるつもりなら、仕掛けをシャッフルさせるなりして絶対に変えるだろ!と、負け犬はこのシーンを見て叫びたくなった。

 エンディングは、船上のデッキで、そのまま勝利に浸っているファロンを捉えた空撮だが、結局、どうやってバカデカイ爆発物を持ち込めたかの説明もクソもなしにそのまま終わる。クライマックスにもさしたる緊迫感もなく、結局、ヒヤヒヤしたのは、爆弾のサスペンスそのものではなく、ズッコケ映画に転ずるギリギリの境界線のような危ういボーダー・ラインをヨタヨタと歩く、本作のその歩きっぷりだったという少々ビターなお話しでした(苦笑)。