負け犬的映画偏愛録

崖っぷちの負け犬が、負け犬的な目線で偏愛する映画のことを好き放題のたまう映画録。

負け犬のレイプはされてないけどブロンソンの真似して自警主義っぽく悪党の退治をしてみた件「ブレイブワン」

最愛の人がチンピラに殺された!怒りのパニッシャーと化したのは、チャールズ・ブロンソンならぬ、ジョディ・フォスターだった!

(評価 48点)

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 自分の最愛の人が虫けらのようなチンピラたちに暴行された挙句、殺された。心に傷を負った主人公がふとしたことから手にした拳銃。そして、たまたま遭遇したチンピラをその拳銃で撃ってしまう。胸騒ぎも収まらず、主人公は次々とチンピラを手にかけ、いつしか主人公は自警主義のヒーローと祭り上げられていき・・・というのが本作のプロット。でも、こんなプロットってもう何十年も前にありましたよね?

 そう、それこそ、紛れもなく、あのチャールズ・ブロンソンの名実ともに代表作として真っ先にあげられる「狼よさらば」そのもの。そして、本作は、その「狼よさらば」のリメイクとも何とも謳わずに、さもオリジナルの映画の如く、何から何まで、物真似しただけの、一種の詐欺映画と言える。ただ一つだけ違うのは主人公が女性、それもあのジョディ・フォスターだけだという、いわば「狼よさらば」のクローン映画。

 人気DJのエリカ(ジョディ・フォスター)は恋人のデイビッドと公園を散策中、メキシカンとおぼしきチンビラたちにからまれ殴る蹴るの暴行を受ける。そしてエリカは、瀕死状態で搬送された病院で、デイビッドが死亡したことを知らされる。ようやくエリカの傷も癒え、仕事にも復帰した頃、エリカは自衛目的で銃を入手し、それを持ち歩いていた矢先、たまたまコンビニ強盗と出くわし、そのチンピラを射殺。次いで乗り合わせていた地下鉄内で一人のチンピラに絡まれ、再び撃ってしまう。最初は自分の所業におののいていたエリカも、胸にくすぶっていた怒りの炎にもかられ、次第にチンピラ狩りにのめりこむようになる。

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 世の中には、不思議なことに、少し部分的に似通っているというだけで矢のように盗作だと騒がれる映画と、何処から見ても、そのものなのに、さして、その手の罵倒に晒されない映画がある。本作は、ある意味、その後者の映画にあたる。結局、言ってしまえば、幸運なことにあのブロンソンの「狼よさらば」の盗作の誹りをたまたま受けていないだけの、何から何までまったく同じクローン映画に過ぎない。

 違うと言えば、ただ主人公が女性というだけ。特に前半部の、地下鉄内でのチンピラの射殺シーンなど、公開当時センセーションを呼んだ「狼よさらば」の地下鉄のシーンとまるで瓜二つ。その後の展開も然り。主人公がいつしかメディアから、正義のパニッシャーのように呼ばれ始め、そうした矢先、事件を担当する刑事も、主人公をチンピラ抹殺人の犯人と築き始め、いつしか二人は接触することになる。

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 「狼よさらば」では、主人公のポール・カージーが言うまでもなくブロンソン。そしてカージー接触する警部フランクに渋いヴインセント・ガーディニアが扮していたが、本作では、そのフランクにあたる刑事のマーサーに黒人俳優のテレンス・ハワードが扮している。元ネタの「狼よさらば」では、世論やメディアへの配慮からパニッシャーブロンソンは、無罪放免となって野に放たれるという70年代ならではのエッジーなベクトルになっていた。だが、本作での主人公エリカの場合は、あくまでも刑事のマーサーの個人的な正義感の成せる業というマイルドな配慮がいかにも2000年代の映画というところか。

 マイルド化という点で言えば、トリガーとなる暴行事件の描写がその典型。「狼よさらば」では、その暴行レイプのシーンが、70年代という無法地帯のみに許される、正視することすらいたたまれなくなうような、鬼の所業のような凄まじい描き方だったが、本作では、暴行シーンとはいえ、あくまでマイルド。その上、ヒロインであるはずのエリカは、ただ痛めつけられるだけでレイプもされない(ちょっと見た目がおっかないジョディ・フォスターだから?)

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 かくしてただマイルド化されただけの本作で、結局、際立つのは、ビジランテ(自警主義)という言葉を、その一本で世に高らかに放った「狼よさらば」の、今尚、デンジャラスな魅力だけだった、というのが情けないところ。

 何よりも「狼よさらば」のエンディングでの、チャールズ・ブロンソンの有名で意味深なあのポーズ。あのパフォーマンスで、映画そのものが今に至っても普遍的な魅力を放ち続けているわけだけど、2000年代に焼き直しでそれをやるなら、何か新しいものを盛り込む工夫でもしてもらわないと、見ている側はただ単につまらないだけなんですよね~。あの「タクシー・ドライバー」の少女の売春婦を演じていたジョディ・フォスターが長じてパニッシャーに成長しましたってだけではね~

 それにしてもどちらの映画も、撃ってくださいとでも言わんばかりにチンピラが、実に都合よくフラフラと次々に現れるのが面白いところ。夜店の射的の標的のように、たやすく倒せるこんなチンピラなら、この負け犬も拳銃片手にバンバン撃ち殺して遊んでみたいものです(笑)