負け犬的映画偏愛録

崖っぷちの負け犬が、負け犬的な目線で偏愛する映画のことを好き放題のたまう映画録。

負け犬の過激な公園デビュー「ニューヨーク・コマンドー/セントラルパーク市街戦」

隠し玉のように面白い映画、こっそり教えます!小粒だがピリリと辛い、B級映画の超快作は、まさにあの「ランボー」の公園デビュー

(評価 76点)

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 「公園は俺のもの!」秀逸なアイデアと簡潔なプロット。低予算でも抜群に面白い、これぞB級映画フリークが偏愛するショー・ケース。

 ニューヨーク・コマンドー/セントラルパーク市街戦!思わずのけぞってしまうほど恥も外聞もないようなあからさまな邦題だけど、原題は「PARK IS MINE」、そう「公園は俺のもの!」なのだ。

 70年代にかけて、お茶の間の視聴者を当て込んで、粗製乱造されていたTVムービー。その中には突然変異のようなスピルバーグの「激突」のような、とんでもない程の超傑作もあったけど、大抵は面白さもマイルドな当り障りのない作品が殆どだった。それでも、やはり傑出した作品は出て来るもので、1985年に製作されたTVムービーの本作は、その見本のような作品。

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 開巻、いきなり鳴り響くサイレン。BGMに流れるタンジェリン・ドリームのいかにも80年代テイストの音楽が心地いい。救急車がかけつけたのは、ビルの屋上で何かを喚く男を見守る群衆で騒然としているとあるビル。男は自らの窮状をひとしきり訴えるとそのまま飛び降りる。数日後、死んだ男の友人だったミッチ(トミー・リー・ジョーンズ)が男の住んでいたアパートを訪れる。そこには男によってしたためられた一通の手紙が残されていた。手紙にはセントラルパークの一画に貯め込んだ男の遺品のことが記されていた。

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 ミッチはベトナムの帰還兵で、帰還後も定職になじめず、妻にも愛想を尽かされ、フリーター同然の男。そんなミッチが自殺した戦友から授かったのは、ベトナムの戦場のメモリアルともいうべき数々の武器、弾薬、コンバットギアだった。手紙を頼りに、公園にあるというその隠し場所を見つけたミッチ。そのまま公園を去ろうとするが、パトロール中の警官から受けた卑劣なハラスメントと元妻から冷たく突きつけられた三下り半に溜まりに溜まった怒りが爆発。かくして、ミッチは友人の形見のコンバットギアを颯爽と身に着けると、公園は俺のもの!といわんばかりにバイクに乗って公園内を疾走し始める。

 どうです?面白そうでしょう?面白そうだけじゃない、面白いんですよこの映画。一人のオッサンが軍用装備で身を固め、公園内を我が物顔に闊歩し始めたら、誰だって仰天する。ニューヨークはたちまち騒然とし、市警もコンバット舞台を送り込むが、公園内にミッチが仕掛けたブービー・トラップと、ゲリラ戦術によってあえなく撃破。やがて市が軍隊まで送り込む、市民の憩いの場のはずの公園が、さながら戦場と化す事態にエスカレートし、という本作のプロットは、B級映画好きなら涎でも垂れてきそうな王道の展開に。

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 主演のトミー・リー・ジョーンズは言うに及ばず、特ダネを嗅ぎつけて公園に侵入しミッチに囚われてしまうTVの女性リポーター、ヴァレリー役のヘレン・シェーバーや、お馴染みの黒人俳優ヤフェット・コットーなども実にいい味を出している。

 ミッチが神出鬼没のゲリラ戦を繰り広げながら公園の公衆電話で訴えるのは、ベトナム帰還兵の待遇を改善せよ、という実にシリアスな主張。これを目の当たりにしたリポーターのヴァレリー(ヘレン・シェーバー)もミッチに同情し始め、ニューヨーク市民もいつしかミッチをヒーローに祭り上げて行く、というサビまで加わればB級映画フリークがヒートアップするのも当然至極。 

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 まさにランボーの低予算の公園版。こんなイカす本作だが、本作のDVDは、日本はもちろん、本国のアメリカでも長らくリリースされていなかった。それが近年になって本国でようやくリリースされ、とりもなおさず輸入盤のそれを購入し溜飲を下げたのだった。本国でもこの映画の隠れファンはいるらしく、タイトルをもじって「DVD IS MINE!」と喜びをあらわにするレビュアーも見受けられた。

こんな、小粒でもピリリと辛くも抜群に面白い、B級映画フリークの心をくすぐる快作を、そこのあなたもいかがでしょう?