負け犬的映画偏愛録

崖っぷちの負け犬が、負け犬的な目線で偏愛する映画のことを好き放題のたまう映画録。

負け犬さんの緑と赤の板ガムは爆発しちゃって超危険でやっぱり「スパイ大作戦」だよネの件「ミッションインポッシブル」

赤と緑のガムをくっつけたらドッカ~ン!のカタルシスこそスパイ大作戦だ!ミッションインポッシブルとスターウォーズの因縁の関係をひもとく

(評価 84点)

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猛スピードで突っ走る列車もろともトンネルに突っ込むヘリコプター。イーサン・ハント(トム・クルーズ)がエイヤ!とばかりにそのヘリに飛び移り、そこであのラロ・シフリンスパイ大作戦のテーマ曲が・・!ジャンジャンジャンジャン~♪すかさず殺られた仲間のエミリオ・エステベスの敵討ちにとばかりに取り出したのが緑と赤のガム!ハントが仇敵ジム(ジョン・ヴォイト)に向かって叫ぶ「レッドライト!グリーンライト!」そして二つのガムをヘリのシールドにぺったんこ!ドッカーン!この瞬間、年甲斐もなく見るたびに大喝采を上げてしまうのはこの負け犬だけなのでしょうか?

 あくまでも「ミッションインポッシブル」ではないんです。「スパイ大作戦」なんだヨ~2~以降も見たけど2~以降はテーマ曲だけを借りたトム様主演のただのアクション映画じゃねえか、という文句言いの人たちには、やっぱりこの第一作目じゃないでしょうか。

 この一作目のテイストに最大の貢献を果たしたのはやっぱり大好きな監督でもあるブライアン・デ・パルマだと断言できる!しかし、実はその大成功の陰にはあの「スターウォーズ」との因縁があったのです・・

 1977年、苦心惨憺の末、「スターウォーズ」を完成させたルーカスは、まず親しい仲間だけを集めて自宅でラフ・プリントの試写を行う。ところが、友人たちは全員が完全なドン引き状態、水を打ったように静まり返った。当たり前だ。当時は「狼たちの午後」や「タクシードライバー」といった社会性とメッセージ性を持った映画が歓迎されていた。大学の映画科を出てフイルムメーカーを目指すものが作る映画も自ずとそうしたカラーのものだった。それなのに、いきなり目の前に突き出されたお子様向けの映画を見て、噴飯ものだとあからさまに言うものもいた。

 中でも「スターウォーズ」のことを最もバカにしたのが若きブライアン・デ・パルマだった。おそらくデ・パルマには当時、ライバルに先んじて既に劇場映画を何本もモノにしていたプライドもあったのでしょう。

 ところが、ご存知の通り、「スターウォーズ」は映画史を塗り替えるほどの大ヒット。そしてブライアン・デ・パルマはそれ以降、その映画人生を通じてずっと「スターウォーズ」コンプレックスに悩まされることになる。自分には「スターウォーズ」に肉薄し、越えるほどヒットする映画が撮れるのか?デ・パルマはその苦悶に終生、悩まされる。

以降のキャリアはご存知の通り、興行的には良くてトントンの映画しか生み出せず完全なスランプに、その時、デ・パルマに舞い込んだ企画が1960年代に一世を風靡したTVシリーズ「アンタッチャブル」だった。完全にそのTVシリーズと世代も被るデ・パルマはその映画で見事に大ヒットを飛ばし、第一線に返り咲く。

当時、自らプロダクションを立ち上げたばかりのトム・クルーズがそれを見逃すわけはなかった。トム・クルーズがその時、映画化を熱望していた企画こそ、自らも子供時代にかじりつくようにして熱狂したこれもやはり60年代の人気TVシリーズ「スパイ大作戦」だった。

TVシリーズのテイストをそのまま長編映画に生かせる実力、それでいて技巧派、映像派としての自分のテイストも失わないデ・パルマの才能にトム・クルーズは賭けた。

オープニングからハントの芝居で幕を開ける本作には心憎いほどのオリジナルのTVシリーズへのオマージュとテイストが溢れている。さらにあまりにも有名なCIA本部でディスクを盗み出すあの宙づりショー。「アンタッチャブル」でも予算を倹約するためクライマックスを駅での銃撃戦に咄嗟に変えてみせたそうした機転が本作でも最大限に生かせている。

かくして、ブロックバスター的な興行面での成功が皆無に等しく「スターウォーズ」コンプレックスに苦しんだデ・パルマも本作で立て続けの大ヒットをとばし、留飲を下げることができた。

そんなデ・パルマが最近、すっかりリタイアのスタンスに収まっているのは何だかさびしい。デ・パルマファンとしては、あの超危険な赤と緑のガムガム爆発大作戦ならぬカムバック大作戦となってほしいのを日々、切に願っているのです。