負け犬の[閲覧注意の写真有り!]凶暴で凶悪な赤ずきんちゃんがお祖母ちゃんの所に行ったら殺人鬼が待っていた件「フリーウェイ」
グリム童話の赤ずきんをそのまま下敷きに、凶暴で凶悪な赤ずきんちゃんがサイコパスとガチンコ対決するぶっ飛び爽快青春バイオレンス!
(評価 74点)
本当は怖いグリム童話そのままに、キーファー・サザーランドのサイコパスが赤ずきんと対決!凶悪キャラクター大集合のネジが外れた爽快作。
「ネジが外れたぶっ飛び映画を見たい人、この指止まれ!」と言われて、目の色変えて集まるのは、この負け犬だけではないはずだ。本作は、閲覧注意!とでも形容した方がいいような、そんなマニアックなB級映画フリークが目の色変えて飛びつくエキセントリックな作品。
面白いのは、本作、あのグリム童話の赤ずきんをそのまま下敷きにしていること。だからといって一筋縄では決していかない。その赤ずきんが、筋金入りの完全なズベ公の女の子というオフビートな設定からして面白い。
札付きのティーン・エイジャー、ヴァネッサ(リース・ウィザースプーン)は文字もロクに読めないアバズレで、今日も職業訓練学校でお勉強。そもそもヴァネッサがそうなったのもその家庭環境のせい。ママのラモーナ(アマンダ・プラマー)は売春婦で今日も路上で商売の真っ最中。ところが、おとり捜査にひっかかり、これもまたヤク中で人間のクズのようなヴァネッサの義父とともに検挙され、ヴァネッサはひとりぼっちになってしまう。
とにかく、この開巻のヴァネッサの母親のラモーナと義父の、リアリティたっぷりのクズぶりに驚かされ身の毛がよだつ。この映画が並々ならぬぶっ飛び映画なのが、このキャラクターの描き方からアンテナでビンビンに感じられるのが本作のスゴイところ。青春コメディー映画の御用達で、バカでキュートな女の子というキャラが定番だったリース・ウィザースプーンが、ここではそのキャラに加えて、直情的でおそろしく凶暴で凶悪な性格の、とんでも系の女の子を演じ、強烈なインパクトを与えてくれる。
かくして、一人ぼっちとなったヴァネッサは、唯一の身寄りのお祖母ちゃんの元にオン・ザ・ロードの旅で向かうことに。しかし、その頃、巷では、ハイウェイで拾った売春婦ばかりを狙うハイウェイキラーが世間を震撼させていた。こうくれば、筋立てはそのまま赤ずきん。
そして、ヴァネッサが走らせていたオンボロ車がエンコ。そこで拾ってくれたのが紳士的なボブ(キーファー・サザーランド)なのだった。しかし、そのボブこそがハイウェイキラーでという展開は、お約束通りの展開だが、ここからオフビートな本作は、どんどんネジが外れてその本領を発揮する。
車の中で、ボブがいきなり豹変し、自分こそがハイウェイキラーだと名乗りを上げ、カミソリを振りかざしたまでは良かったが、そこは我らがズベ公の代表のような赤ずきんのヴァネッサ、旅立つ直前に恋人から譲り受けたピストルで逆にボブを脅し上げる。それどころか、逆上したヴァネッサは、これでもくらえと躊躇もせずに、鉛玉をボブの顔面から、体から至る所に何発もぶち込みまくる。
血まみれのまま、ダイナーで平然とオーダーを注文するヴァネッサは、そのまま御用。瀕死状態のボブと共に、逮捕される。
本作の肝の一つがここで一命をとりとめたボブの歪んだ顔の特殊メイクなのだ。一応、画像はUPしたけど、これはまさに閲覧注意もの。時間と共に傷が癒え、顔面の変形ぶりも変化するのだが、更にその顔がいっそう不気味になっていくのがスゴイところ。
一方のヴァネッサといえば、ここから本格的にダーティでワイルドな野良猫ロックになっていく。矯正施設に送り込まれたヴァネッサは、そのまま大人しくなるはずもなく、直情型の性格のままに、いたるところで派手なキャットファイトを繰り広げ、独房にブチ込まれる。そこで、支給された歯ブラシをライターで溶かし、削り上げてハンドメイドの刃物を作り上げる根性からして筋金入りのズベ公たるゆえん。
しかし、証拠不十分で逮捕を免れたボブが、ヴァネッサをそのまま野放しにするわけがない。ということで、道草は食ったけど、施設のリクレーションの最中に脱走を果たし、コールガール稼業で日銭を稼ぎながら一路、お祖母ちゃんの家を目指すヴァネッサとボブの運命の対決の時が迫る!
こんな凄まじいオフビートな快作の、脚本と監督をモノにしたのは、マシュー・ブライト。これほどぶっ飛んだもの作っちゃったら、業界には長くはいられないだろうな、という危惧の通りにほぼ無名な監督さん。しかし、エグゼクティブプロデューサーはあのオリバー・ストーン。しかし、フィルム・ノワールに凶暴で野卑そのもののテイストを持ち込んだ、シュールなネオノワールの傑作「Uターン」を自ら監督したストーンなら、本作を製作総指揮したのも頷ける。
キャスト陣も実にいい。ボブとヴァネッサの二人を追う刑事にB級映画御用達のダン・ヘダヤ。そして意外な顔も。ボブの正体を知らずに付き添う妻に何とあの懐かしきブルック・シールズ。昔、絶世の美少女としてデビューしたブルック・シールズが、年増にはなったけど、その分、グッと色っぽさが増してここでは不運な妻を演じている。そして、最後にはちゃんと脳みそブチ巻けてくたばってくれる。
結末はグリム童話の通りのビターなハッピーエンド。そして、エンディング・カットは血しぶきを浴びたヴァネッサの弾けるような笑顔のクローズアップなのだ。マーベル帝国とディズニー・ブランドのクソつまらない映画ばかりが幅を利かすクソつまらない世の中に、ドカンと風穴を穿つような、実に気持ちのいい作品といえようか。
その風穴から覗く、抜けるような青空の爽快感に浸りたい方は、こんな作品は、どうでしょう?ビートとスパイスが効きすぎてクセになるかもしれませんよ~