負け犬的映画偏愛録

負け犬的な目線で偏愛する映画のことを好き放題、のたまいます。また、たまに<映画をエンジョイ、英語もエンジョイ>と題して、映画の実際のスクリプトを原文と翻訳でご紹介。英語学習気分もちょっぴりどうぞ!

木枯し紋次郎 第三十一話「怨念坂を蛍が越えた」 初回放送日1973年2月10日

魔物を狩る蛍に男の意地を見た

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<村にいついた半端者の渡世人、蛍の源吉は酔いどれのお六という女から怨念坂の化け物のことを聞かされる。村の顔役の大総代の女房お冬は、お六が村に流布させている化け物のうわさ話を払拭するため、怨念坂にうわさの真偽を確かめに行く者を募るが、名乗り出たのはその蛍の源吉だった。蛍の源吉が自分と同じく姉の存在に思慕を抱いていることを知る紋次郎は、その源吉と行動をともにし、怨念坂へと向かうが、そこで紋次郎たちが見たのは、二人を待ち受ける化け物ならぬ浪人たちの姿だった>

 

 お六を演ずる東映の看板女優でもあった太地喜和子が艶っぽい魅力を見せる本作。悲惨な事故死が今でも悔やまれる女優さんだが、実生活での酒好き同様、本作でも酔いどれ女を演じている。その酔いどれのお六と対照的なのが大総代のお新造さんのお冬。この二人の女と、蛍の源吉が関わったことから、源吉はうわさの真偽を確かめるべく怨念坂へと向かうことになる。

 この源吉を演ずるのは、本シリーズ中、屈指の傑作の誉れも高い第二話「地蔵峠の雨に消える」ですでに渡世人の十太を演じている高橋長英

 この源吉と紋次郎が語らうシーンは印象深い。源吉にはかつて嫁に貰われたため生き別れとなった姉がいた。源吉にとってのその姉がいわば瞼の母のような存在となっている。間引きを救われた姉に今も思いを寄せる紋次郎が源吉と共に怨念坂へと向かう時、源吉に言う言葉

「何かを探している、誰かを待っている、そんな人間の目はあっしには良く分かる・・」とのセリフは源吉へのささやかなシンパシーだ。

 無関係だったお六とお冬が接点を持ったことから、ミステリアスな怨念坂の都市伝説が、最後の悲劇へと向かっていく。

 成り上がった女が自分の過去を清算しようとするこの結末に、あのハードボイルドの大傑作「さらば愛しき女よ」を想起するのは自分だけか。

 最後に運命的な対峙を果すことになったお冬と源吉。燃える提灯の炎に照らされ、その源吉への手向けの言葉の如く「せめて蛍の源吉と呼んでやってくれ」とお冬に言い放って背を向けて去っていく紋次郎のシビれるほどのカッコ良さが秀逸な一篇だ。

 ちなみに数々の日本映画でバイプレイヤーとして印象深い蛍の源吉役の高橋長英さんは、中村敦夫氏と同じ俳優座の出身で二年後輩。兄貴肌の敦夫氏は長英、長英と呼んで可愛がっておられたようです。