負け犬的映画偏愛録

崖っぷちの負け犬が、負け犬的な目線で偏愛する映画のことを好き放題のたまう映画録。

紋次郎かく語る 「紋次郎の左足」

樹の根っこに足が挟まっちゃって、そのまま仰向けに倒れたら足がブラブラしてたんだ

 

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初回10.4%、~12回目30%。瞬く間に鰻上りに上昇した紋次郎の視聴率だ。土曜日午後10時30分という放送時間を考えればいかにそれが驚異的な数字、そしてどれほど紋次郎旋風が日本に吹き荒れていたかが分かる。

 だが、その第8話の立ち回りの撮影中、中村敦夫は崖から転落し、左足のアキレス腱断裂という重傷を負い、番組生命そのものも危ぶまれる窮地に陥った。

 中村敦夫は、その当時のことをこう振り返っている

(連日の早朝からの撮影から・・)「怪我した日は寝不足でね、真冬で筋肉も硬直している。でも、撮影はいきなり始まるわけだから、その時、樹の根っこに足が挟まっちゃって、そのまんま仰向けに倒れて、下は崖だったんだよね。「ブーン」ていうもの凄い音がして、なにか起こったのは分ったんだけど、青筋が立つほどの痛みが走って、起き上がってみたら足がブラブラしてて、こりゃダメだって」

  だが、それほどの重症ながら休養できたのは2週間。その後はギブスをはめたまま撮影を余儀なくされたという。だが、わずか2週間とはいえ、すでにして国民的の地位にあった番組側としては絶体絶命のピンチに陥った。

 そこで急遽、代役を起用しての撮影、1ケ月放送を中断し、同じ原作者、笹沢左保氏の股旅ものの「峠」シリーズに差し替えるなど大わらわの対応の末、この急場を乗り切った。

  ちなみにそれを如実に物語るのがリリース日としては復帰後となる1972年4月15日放送の第12話「木枯しの音に消えた」。この回は、紋次郎のトレードマークのあの楊枝の由来が明かされる重要なエピソードだが、意識して見れば、前半の回想部分に登場する紋次郎は、ほとんど顔が映っていない。かなり、ぎこちないシークェンスとなっている。明らかに代役なことは一目瞭然、。番組の苦労が手に取るように分かるエピソードとなった。

  UPした画像はその問題の第8話「一里塚に風を断つ」のクライマックスシーン。皮肉にもこの回紋次郎は、冒頭で愛用の長脇差を折ってしまうが、実際にもこの撮影中、手痛い傷を負うことになってしまった。

  迫真のリアリティには代償はつきものということか