負け犬的映画偏愛録

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負け犬的B級映画の金字塔「要塞警察」

B級映画の帝王ジョン・カーペンターが最もその輝きを放った超傑作

(評価 85点)

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『籠城』、B級映画を偏愛する人間ならその言葉に食指をそそられない人間は。いないのではなかろうか、尚且つ、そのタイトルが漢字四文字だけの簡潔な”要塞警察”というタイトルなら尚更だ。

 この映画の存在を知ったのは、『スターログ』という雑誌のアボリアッツ国際ファンタスティック映画祭の短いレポ記事か何かだったと思う。エントリされた作品の中にこのタイトルと小さな場面写真を見つけ、タイトルのその暴力的なイメージに激しく好奇心を喚起された。

 現物を見たのはサンテレビの日中の洋画劇場。見た途端、そのあまりの面白さに狂喜した。やがて、ハロウィンでヒットをとばしたジョン・カーペンターの名は、段々と浸透し始め、本作のプロフィールが何と西部劇のクラシック「リオ・ブラボー」(当時は名前のみ知っていて未見)であることを知って、西部劇から換骨奪胎して、こんなイカす映画を作ってしまうカーペンターの才能にいっそう心酔したものだった。

 冒頭、いきなりストリートギャングの一人がなんの理由もなく無造作に少女をサイレンサー銃で撃つシーンにまず度肝を抜かれた。今では倫理コード上有り得ない、胸部を炸裂させて倒れる冷徹そのものの、その描写がショッキングきわまりなかった。

 映画は、移転を翌日に控えた第9分署の整理担当として訪れた警官ビショップとその同僚、そしてたまたまそこに立ち寄った囚人たちとが協力し、警察署に逃げ込んで来た、冒頭に殺された娘の父親をめぐる一夜の籠城劇。そのフォーマットはまさに砦に立て籠もる保安官と囚人、そして町の人々という西部劇そのまま、いたってシンプルきわまりない。でも、そのシンプルさに徹すると、とてつもないほど面白いものができあがる見本のような作品だ。

 はからずもビショップのバディになる死刑囚ナポレオンをはじめB級映画然とした俳優たちが皆いい。中でもクールでタフなリー役の女性を演じたローリー・ジマーには、そのクールなセクシーさもあいまってグっとそそられる。

 いよいよ襲撃してきたギャングたちに応戦するため、ビショップが必死にライフルが入った箱のカギを開け、ナポレオンがそのビショップから投げ渡されたライフルを受け取りざまぶっ放すシーンは何度見てもシビレまくる。

 プエルトリカンのギャングたちの描写も絶妙。誰もかれも一言も言葉を発さず、撃たれても撃たれても無尽蔵にウジャウジャ地の底から湧き出て来るかのように襲ってくる。その上、重火器を始めとする最新の武器を強奪によって入手しているという設定なので、全員が銃器にサウンドサプレッサーを装着している。だから、ド派手に撃ってくるものの、まったくの無音なのだ。カーペンター自身の手による無機質なテーマ曲(脚本、監督のみならず音楽まで自作できるオールマイティな才能にどれだけ憧れたことか)もあいまってゾンビのようなギャングたちの存在感が抜群きわまりない。

 パシッ、パシッ、と舞い上がる書類のみで銃撃が表現される効果は絶大で、それが中盤以降の脱出劇にもつながる構成も実に巧み。B級映画的にまるで非の打ちどころのない出来栄えには感服するしかないのだ。

 でも、この作品。本当にサンテレビで見た一回きりで、ビデオ時代にも特にソフトも見かけず、最近になってようやくDVDで再会できた。DVDの特典にはコンテなどの資料もついていて、少女が撃たれるシーンのコンテもある。そのシーンを改めて実際に入念に見るとヒッチコック的なサスペンスのシーン構成も見事。

 とにかく本作。単純でシンプルな道具立てにこそB級映画の真髄があると信ずる、昔も今も決して変わらぬ負け犬的B級映画フェチの熱情を激しく搔き立ててくれる作品に間違いない。