キレイなものではなく、いびつなものにこそ愛情を抱く・・なんてことありませんか?
(評価 60点)
「試写会の会場は、トラックが吊り橋を渡るシーンで、針の落ちる音すら聞こえるほど静まり返っていた」
当時のロードショー誌のこの映画の紹介には、あの吊り橋の有名なシーンのスナップに添えて、この一文が載っていた。これを見せられたら誰でも見たくなる。しかし、同時に、評論家たちのワンポイント映画評は、どれもこれも酷評ばかりだった。
この映画はレンタルビデオもなかなかリリースされず。ようやく見れたのは、それから10年近くが経っていたかもしれない。
フリードキンだから、という思いは裏切られた。出来損ないの映画という印象しか抱かなかった。当時はクルーゾー版のオリジナルもまだ見ていなかったから、比較云々というより一本の映画としてそう感じたのだ。
それから長い長い年月が経った。いつしかこの映画が再びクローズアップされ始める。この映画を絶賛し心酔する人が多数いるのにも驚いた。それでも昔の印象から、さして食指は動かされなかった。だが、フリードキン自身がこの映画で人生半ば棒を振り破滅を味わったものの、限りない愛直を抱いているという、必ず語られるバックストーリーには心惹かれた。
マーケットもこの動向に乗じ、ついにDVDをリリース。数十年ぶりに再見したのだが・・・。すっかりオリジナル版に親しんでしまっていたこともあり、そのチグハグ感は倍増してしまったのだ。
まずドライバーに仕掛けられるトラップの数が少ない。その描写も雑な上にBGMにモタモタしたタンジェリン・ドリームがズンドコズンドコ流れる・・のは何を考えていたのか。
最大の難点は脚本のマズさから誰にも感情移入できないこと。
しかし、良く考えたら、これってどれもこれもフリードキン本来の持ち味なんだよなぁ~なんてこと考えていたら、いつしかこの映画を繰返し見てしまっている自分に気が付いたという話。
結局、自分が出来損ないだからなのか、類は友を呼ぶが如くいびつな映画に惹かれてしまうんでしょうかね~